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    ksrg08871604

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    ksrg08871604

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    ムルと弟子 青果店にて

    Farmer's Market 青果店で緑のグリーンフラワーを手にしたその時だった。商店街の何処かに消えていったはずの師匠に手首を掴まれた。
    「まさか君、ディナーにコールスローを出すのか? 」
    「どうしてそうだと? これを使うならグラタンかもしれないのに」
    「そのグリーンフラワーに合わせる食材は、寒がりコーンくらいしか家になかったからね」
     ちっ、バレたか。なんて厄介な記憶力なんだ。今日は暑いから師匠の好みを度外視してでも、火を使わない献立にしたかったのに。
    「冷たい料理で野菜をとるならアスピックはいかがかな。甘めの味付けだとさらに喜ばしい」
    「アスピックだぁ? んな手間のかかる料理、徹夜と酷暑でバテバテの愛弟子に作らすモンじゃないでしょ」
     大体私が二徹したのも炎天下で作業したの新しい発明品の試運転のせいだ。なんで真夏にあんなもん思いついたんだ。いや、思いつくのはまあいい。私がリマインドするから設計を冬まで伸ばして欲しかった。
    「そうだな、君の発言にも一理ある。では、今夜は西の国指折りの一等地にある人気店で奢ろうか。君への労いだ」
     勿体つけないでシャイロックさんのお店に行こうって言えばいいのに。今日も無駄にカッコつけだなこのひと。それにあのバーに向かうのならそれ相応の準備がしたい。私の普段着は師匠のように礼服なんかじゃないし近所に足を伸ばすだけのつもりだったから化粧だって粗末なものだ。
    「何を躊躇っているのかわからないな。店主は清潔な身なりで礼儀を弁えれば、たとえ寝巻きの客だって歓迎してくれるさ。きっとね」
    「いやぁ、流石に寝巻きは……。でもシャイロックさんもなぁ、案外面白がるかも」
    「だろう? 」
     したり顔で微笑む師匠にうっかり納得させられそうになった。あぶない。こんな格好であそこに行くのは私が嫌だ。残念ながら凡人は他人の評価や噂が気になるもの。あそこにだらしない格好で行ったら店主はともかく他の客に向こう50年はネタにされる。なにより単純に恥ずかしい。
    「いや、騙されませんからね。急いで支度するんで待っててください」
     そう言って、手にしていたグリーンフラワーを置いて方向転換したわたしの背中に師匠の声がかけられる。
    「じゃあ、賭けをしよう。店に到着するまでに追いつけたならなんだって奢ってあげる」
    「はあ? さっきアンタ、奢ってくれるって約束──」
    「さっきの台詞をよく思い出して、マリー。俺は"提案"しただけだ。"約束"にはなっていないよ」
    「そんなの言葉遊びじゃない! 」
     悲痛な私の抗議をよそにいつの間にか箒に腰掛けた師匠がふわりと宙に浮いた。グングン高度を上げていく。"賭け"は本気のようだ。腹立たしいが街中で彼を撃ち落とすわけにもいかない。大慌てで自分も研究所に戻ることにする。
     覚えてろよアイツ、絶対追い抜いてめちゃくちゃ高いボトル奢らせるからな!
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    ksrg08871604

    DOODLEイカれた夫婦(出典:サブスポエピ)の式で乾杯の音頭を取るシャイロック
    飽きてなかったら後で茶々入れるムルまで書く
    新たな門出、祝福の日。とある魔法使い夫婦の結婚式でその人は主役たちよりも人目を引いた。
    「では、僭越ながら私から乾杯のご挨拶を」
     シックでシンプルな礼服を纏っていたがむしろそれは彼の美しさを引き立たせていた。シャンパングラスの足をそっと摘んだ指さえも優雅だ。男女問わず多くの人々が見惚れている。そんな中、主役夫婦はというと、二人ともがうっとりと彼を見つめている。バージンロードで見つめあった時や、誓いのキスを交わした時より熱っぽい視線だ。彼らの馴れ初めを知らずその上壇上の男に酔いしれていない幾人かは戸惑いを隠せないのは当然だろう。
     しかし二人の事情をよく知る者──つまり、俺を含むベネットの常連は動じていなかった。
     いや、より正しい表現をするのであればシャイロックで頭がいっぱいになっている様子ではないごく少数の常連は、だ。
     抜け目のないシャイロックは考えた文章は全て頭に叩き込んだ様子。にこりと今が盛りの薔薇にも優る艶やかな笑みを浮かべた。
     一番後ろの席からは会場全体が見渡せる。今の一瞬で5人は頬を染めて俯いた少女がいた。太ももを抓る配偶者持ちの中年も二人。会場の3割以上の魔法使いが 793

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    REHABILIムル夢
    鯖よろしくムルハートに着地を任される弟子
    例のごとく口論相手の傷口に塩を塗って激高させた師匠は、背は低いが恰幅のいい男に突き飛ばされて、たたらを踏んだ。いつに増して最悪なのはここが見上げるほど高い塔のらせん階段ということ。ぐらりと傾いで師匠の体は真っ逆さまに中央に空いた穴へ落ちていく。
    「師匠! 」
     息を飲んで追いかけるように飛び降りた私を見て、愉快そうに彼は微笑んだ。そんな悠長な反応と持ち上げられるような感覚で胃が苦しい。だというのにあの野郎、能天気にも言い放った一言がこれだ。
    「着地は任せたよ」
     耳は風を切るびゅうびゅうという音で使い物にならなかったけれど気まぐれに教えられた読唇術がしっかりと役に立った。
     何が”任せた”だ試すように命を預けやがって! 
     広がるマントは一見翼の様だけれど、彼の落下速度低下の一助になっているかは怪しい。自由落下じゃ追いつけない。どうしよう、考えている間に底が見えてきた。地下室の床だ。石造りのあそこに叩きつけられれば並みの強度しかない師匠の体は取り落としたプディングより悲惨なことになる。いや、魔法使いだから粉々の石くずになるだけか。
     そう思い至って私は肝心なことをようやく思い出した。
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    REHABILIムルとご飯を食べてる弟子のSS「こんなに食事を師匠と共にしているのだから、そろそろいい加減私も、もっと頭が良くなってもいいと思うんだよね」
     本気とも冗談とも言い難いフラットな声音でマリーがそう言った。ムルは口の中にある玉ねぎと鯛の切り身をゆっくり咀嚼した。ビネガーを効かせた酸っぱめのカルパッチョはムルのリクエストで彼女が作ったものだった。
    「君の想定している"頭の良さ"と俺と同じ献立を口にすることにどんな因果関係があるんだ? 」
     さして興味もなさそうに返された言葉にマリーは口を尖らせた。
    「だって、細胞って食べたモノから成るんでしょ。一年以上あなたに師事してるし肉体の構成要素としてはあなたとかなり近しくなってるんじゃないかなって」
    「君は俺と同じになりたいの? 」
    「どうかな、師匠の賢くって博識なところは羨ましいけど。人から嫌われたり好かれたりが自分でも把握できないくらい激しいところは疲れそうだし短い寿命でもないのに延々と得体の知れないものに片想いしてるのもなんだかなって感じ」
    「つまり同一化願望ではないわけだ。ならば結構。同じモノがいくつもあるなんてつまらないからね」
     そう言ってムルはシャンパンを口に含んだ 745

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    TIREDムルの弟子がベネットの酒場の軒先でシャと喋ってるだけそういえば数か月師匠を見かけて居ない。

     厄災を眺めながら晩酌をしているとき、ふとその事に気づいた。
     しかし特にどうということもない。常に世界中を飛び回り、気の向くまま行動している彼は数年消息を絶つこともざらだからだ。さすがに安否を確認したほうが良いんじゃないかと思い始めると西の天才がやらかしたという噂を耳にし、拍子抜けするというのが常だった。今もどこかで研究に没頭しているのだろう。慣れというのは恐ろしい。師匠の元を離れて初めの百年は今度こそ石になってしまったんじゃないかと泣きながら方々探し回り気の休まる時間の方が少なかったが、今じゃ何の憂いもない。全く気がかりではないと言えば嘘になるけれど、数ヶ月連絡が途絶えたくらいじゃ四六時中心配するなんてことはなくなった。
     きっと今も世界のどこかであの厄災に性懲りもなく愛を囁いているのだろう。熱っぽく夜空を見上げる師匠を思い浮かべながらオリーブを口に入れた。数百年前出会ってから今日まであの人が変わらず情熱を傾けることと言ったらその厄介な恋慕くらいのものだから。
     しばらく舌で転がした丸い実をかみつぶしたら思ったよりも酸っぱすぎて眉間に皺が寄 2535

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