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特徴的な足音を耳にして、ルックは俯いていた顔を上げた。視線の先に、しゃなりしゃなりと歩く愛しい人の姿が見えた。彼の導線には背後にある石板がある。ルックの元へ歩みを進めているのは明白だった。
「それはどうしたの」
ただ、名を呼ぶ前にルックがそう問うてしまったのは、彼の腕の中にあるものがあまりにも意外なものだったからだ。
フィリアーデ・マクドール。かの戦争で英雄と呼ばれるようになった人。一線から退いているというのに戦争真っ只中の都市同盟の本拠地に滞在しているのは、ここの軍主にその腕を買われたかららしい。
曰く、利害が一致したから参加しているとのこと。
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