未定 濡れた足音が二人分、他に誰もいない廊下に響く。
「着替えは持ってる? ジャージとか」
ようやく隣に並んでくれたグレイの顔をちらりと見ながら問うと、おずおずと視線を上げたグレイは湿った髪をふるふると揺らした。
今日は体育がないからないのか、それとも、捨てられてしまったのか。
後者かな、と思いながら、そっか、と敢えて明るい声を返す。
「じゃあ保健室行こっか。保健室なら着替えくらいありそうだよネ」
「……そこまで、しなくても」
笑いかけても返ってくるのは不安げな顔ばかりで、ぼそぼそと聞き取りづらい声はひたすら暗い。おどおどと周囲を見る目は、きっと、他に生徒が通りがからないか怯えているのだろう。誰かと遭遇したら脱兎のごとく逃げ出してしまいそうで、掴んだ手を離せずにいる。
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