「……あんま見られてると食いづらいんすけど」
カリュドーンに来たばかりのライトにむすりとした唇でそう言われたことがある。
火力制圧用高知能戦術素体たるビリーは食事を必要としない。ゆえに人間の食事という行為に興味があった。自分にはない「口腔」という器官がどのように使われ、どのように動くのか興味があったのだ。とはいえ、うら若き乙女たちの食事を不躾に観察するのもよろしくないと理解できるだけの情緒はあった。その点あちこち忙しく飛び回っているビッグダディがどこからか連れ帰ってきたライトはちょうどよい観察対象となったのである。
ハンバーガーを食べるために大きく開く口、そこから見える歯は動物ほど鋭くもないというのにきちんと食べ物を噛みちぎることができるのが不思議だ。口内にたっぷりと含んだものを咀嚼するためにもぐもぐ動く頬の膨らみは可愛らしいし、ハンバーガーに残された歯型などいっそ愛しくすらある。嚥下するときのわかりやすい喉の動きも、そのあと体内をどう巡っていくのかを想像するのも楽しい。唇についたソースをぺろりと舐め取る動作はビリーのお気に入りだった。
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