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    たまごやき@推し活

    アンぐだ♀と童話作家アンデルセンのこと考える推し活アカウント

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    カルデアアンぐだ♀、童話作家分身事変

    2020.9

    ##FGO
    ##アンぐだ
    ##カルデア時空

    天使と悪魔も瓜二つ「立香、俺は明日出撃はしないぞ。この部屋のベッドを借りて昼までのんびりする。構わないだろう?」
    「馬鹿なことを言うな! お前にはあてがわれた部屋がある。マスター、お前もこいつに乗せられるなよ」
    「男と同衾する趣味はない! あの部屋にはベッドは一つだけだろう。ただでさえ狭いベッドですし詰めになれというのか?」
    「そんなに嫌ならお前はソファでも使え! 大体この部屋にもベッドは一つだけだ、マスターを抱き枕にでもするつもりか」

     右から、左から、喧しく同じ声が響いている。
     正確に言うと声の調子は右からの方が少し甘えた感じで、左からの方が少し事務的な感じだ。わたしを真ん中において言い合いをしているのは、もとは一人のサーヴァント……。
    「とにかくアンデルセン、二人とも喧嘩しないでね」
     この現象を名付けるのなら、「分身した」とかいうのが適切かもしれない。
     サマーキャンプ事案よろしくまったく同じ性格かと思いきや、二人には少し違いがある。

    「また食堂から菓子を強奪してきたのか? 懲りないやつだ、後でカロリーがどうだの後悔するくせに学習能力がない」
     相変わらずの塩対応。鼻で笑いながらそう言って、後から勝手にわたしのおやつを横取りするのだ。お前は無駄に食べると太るぞ、まぁ俺はサーヴァントだからそんな心配はないが……とか言って。
     こちらはいつも通りのアンデルセンだ。

    「甘い匂いがするな。食堂から何か持ってきたんだろう? 俺にも分けてくれ。また一人で食べきれないほど持ってきたなら、俺とティータイムを楽しむくらいの余裕はあるだろう」
     分けてくれとねだった上に一緒にお茶の時間を過ごそうと提案してくる。この人は、本当にアンデルセンの分身なんだろうか。いくらなんでも性格差がありすぎる気がする。
     しかもわたしの手を掴んで腕に絡んでくるような体勢と、その角度からの上目遣いは、自分のことを可愛いと分かっているようだった。いや、実際に可愛い。案の定、普段とのギャップもあってつい絆されてしまう。
     あと、ついでに頭を撫でても怒らない。
     二人とも姿は瓜二つだ。

    「そのだらしない顔をやめろ、マスター。相手はほとんど俺みたいなものだぞ」
    「うーん……だから尚更というか……」
    「薄気味の悪い奴だな。思うだけなら自由だが、手を出したらポリスに突き出すぞ。見た目の問題だけ考えれば犯罪と言っても過言じゃない」
     アンデルセンはわたしをショタコンか何かだと思ってるのかもしれないが、それは全然違う。
     実際にはわたしは可愛い男の子全般が好きなのではなくて、アンデルセンが好きなのだから。

    「立香、そんなつまらない男と話してないで早くブレイクタイムの準備をしてくれ。俺は腹が減った」
     裾を引っ張るこの動作は、どこで覚えてくるのだろう。あざとい。抗えない可愛さ。
    「うん、ちょっと待ってて……コーヒー淹れてくるから。わたし、食堂に行くけど二人とも喧嘩しないでよね」
     心配だ。取っ組み合いみたいな喧嘩にはならないだろうけれど、口喧嘩がヒートアップするとどちらも過激な語彙で罵り合うのだ。

     コーヒーを三人分淹れて帰ってくると、やっぱり二人は睨み合っていて室内の雰囲気は最悪だった。
    「マスター、遅いじゃないか。もう少しで勝手に食べ始めるところだぞ」
    「コーヒーはあんまり急ぐと美味しく淹れられないんだからね! まぁ三人分淹れてきたからちょっと時間かかったかもしれないけど……」 文句を言うアンデルセンを宥めて、ソファに座る。二人がけのソファに無理やり詰めて座ると、隣との距離感が近い。
     わたしをマスターと呼ぶアンデルセンが、ソファの端に座ってこれでもかと私と距離をとってくる。
     私を立香と呼ぶアンデルセンが、私の横にぴったり張り付くように、むしろ寄りかかるように座っている。
     足して二で割ったくらいがちょうどいい距離感の違い。
     二人はどちらも性質が異なるように見えるけれど、どちらも猫っぽい。ツン期の猫とデレ期の猫をいっぺんに飼っているような気分でお得だ。

     そんな二人に違和感を感じたのは、わたしに寄り添っているアンデルセンの頭に手を置いた時のことだった。
     さっきまで散々頭を撫でたし、彼も撫でられ慣れてると言った感じでリラックスした様子だった。それがいきなり、触られ慣れてませんとばかりにびくりと身動いだ。
    (あれ……)
     それから、わたしとは距離をとっているアンデルセンの方にも違和感がある。彼はさっきからこちらのことなど無視してコーヒーを飲んでいるのだ。コーヒーを淹れる前の様子では……気にしていないように振る舞いながら、スキンシップをとるわたし達の様子をちらちらと見ていたのに。
    (おかしいな……)

    「アンデルセン、膝枕してあげようか」
    「っ……!?」
      わたしに寄りかかる彼がコーヒーを吹き出しかけた上に、一瞬縋るようにもう片方の自分を見たのを見逃さなかった。
    「……お前は悪趣味だな、やめておけ。先程手を出したら即ポリスだと警告したばかりだというのに」
     一瞬遅れて、わたしから離れたところに座る彼が言った。
     その様子を見て確信する。コーヒーを淹れる前と、その後で……二人は入れ替わっているに違いない。
     つまり、わたしに対して塩対応していたアンデルセンが、今はわたしに寄り添っているのだ。多分わたしに甘えている片割れのフリまでして。
    (うわ……何それ可愛い)
     
     きっと分身した時、元々のアンデルセンの中にあった性格の要素がばらけて組み込まれたのだろう、とはダ・ヴィンチちゃんの話だ。
     だから片方の彼に甘えられたり寄り添われるたびに、普段ははっきり見えない彼の心の要素を鮮明に見られたようで嬉しかった。
     でも結局二人とも、わたしに寄り添ったり甘えたりしているだなんて……もしかしてわたしが思ったよりもずっと彼に頼りにされているんだろうか。好かれて、いるんだろうか。

     はっきりとした態度では見えなくとも、彼がわたしを大事にしてくれているのを知っている。マスターとして、少しは信頼を置いてもらっていることも、もちろん。……もっとオープンに甘えてくれてもいいのに。

    「膝枕くらいで犯罪になんてならないよ! ほら、せっかくだから遠慮せずどうぞ!」
     そう声はかけたものの、彼はきっと断るだろう。わたしに甘えている方の自分になりきっているとはいえ、提案に乗ってくるとは思えない。
     だから、軽く入れ替わりについてネタばらしが聞けるかと思ったのだ。
    「…………」
     それなのに、一瞬のためらいの後で彼はわたしの太ももを目がけて寝転がってくるものだから、わたしは目を疑った。

     あれ、もしかして入れ替わってると思ったのは気のせいだった? いや、でも……。
    「何だ、お前が遠慮するなと言ったんだろう」
    「!」
     熱でもあるんじゃないかと思うほどの顔色で、ふてくされるように彼は言った。
     やっぱり気のせいじゃなかったみたいだ。

    「……衆目には見せられないような顔をしているぞ、マスター」
    「あれ、もう立香って呼んでくれないの?」
    「タネも仕掛けも暴かれているというのに続ける手品ほど滑稽なものはない。それとも何だ、俺にはせいぜいそんなピエロがお似合いだとでも言うのか?」
     バツが悪そうにそう言うと、身体を起こそうとする。その肩を押さえて、自分の太ももの上に彼の身体を留まらせる。
    「おい、何を」
    「ね、たまにはわたしに甘えてみない? アンデルセン」
    「はぁ?」
    「……何ならずっと、『立香』って呼んでくれた方が嬉しいな。あと、結局どっちもアンデルセンなんだから別にそんなに取り繕ったりしなくてもいいと思うんだけど」
     この状態は一時的なもので、最終的には二人は融合して元の姿に戻る、らしい。
     元に戻れば結局、どちらのやったことも自分に返ってくるわけで。

    「つまり、どちらの俺でも構わないと言うことか。見境なしで浮気性だな」
    「わ、」
    「この部屋にアンデルセンは二人もいるというのに、片方だけで満足なのか? 立香」
     先程まで遠くに座って事態を傍観していた彼が、いつの間にか私のすぐ横に陣取って身を寄せている。
    「おい、お前はさっきから散々好き放題やっていただろう。いい加減マスターから離れろ」
    「どちらも結局は俺だと、立香は言っただろう?」
    「それは……そんな都合良く解釈していい話じゃない」
    「どうなんだ、立香。俺達が両方身を寄せると何か不都合があるのか?」
    「いや、不都合とかはないけど……」
     彼は今まで可愛らしく甘えてきたのが嘘のように、ズルい大人の顔つきをしている。
     不都合があるのか、何で聞いている割には副音声で『不都合などあるわけがないだろう?』とでも聞こえそうだ。

     さっきまで全くの別人に見えた二人が、いつの間にか似通っていく。それはそうだ。二人は元々一人なのだから。
     わたしの隣で、あるいはわたしの太ももの上で寄り添いながら、二人はこちらを見定めるような目つきをするのだ。

    「この機会に言っておこう。お前は何かとあっては俺を優遇するが……低年齢層に異様な思い入れがあるのなら俺をその枠には組み入れるな」
    「それ……つまりショタコンだから優遇してるならやめろってこと?」
    「そうだ。お前の性的嗜好を満たせそうなサーヴァントの数だけは豊富なカルデアだろう。わざわざ俺に目をかける必要もない」
     
     やっぱり勘違いしている。好意的に見られていると分かっても、彼はそれが真っ直ぐ自分に向けられた好意だと受け取らないのだ。
    「小さいから、とかじゃなくて……今まで一緒に戦ってきて、まだ全然マスターの知識がないころから助けてもらってるし。その、何というか、頼りにしてるんだけど」
     さすがに好きと伝えるには、勇気が足りない。そもそもそういった恋愛感情を切り離したとしても、マスターとしてアンデルセンを頼りにしているのは確かだった。

    「そうか……マスターがただの特殊性癖保有者なら俺も休暇が得られたんだがな。仕事というのはままならないものだ」
    「まぁ俺も結局二人に身を分けてなお周回に付き合わされている時点で、そんなことだろうとは思っていた」
     やれやれ、肩を竦めている彼ら……もとい彼はなんだかんだ言って面倒見がいいのだ。

    「だが、こんな状況下でその発言は少々気が緩みすぎだ」
    「アンデルセン?」
    「このナリとは言え俺はサーヴァントだ。さらに二人がかりでお前の膂力を上回るぐらいの力はある」
     何だか、雲行きが怪しいような。
    「甘えてみないかと言ったのはお前だろう、立香」
    「不都合は特に、ないのだろう? 立香」
    「いや、ちょっと、」

     お兄さん達、少し物騒すぎじゃありませんか? それに普段から立香と呼んでくれた方が嬉しいとは言ったものの、二人からこうも連続して名前を呼ばれると何だか無性に恥ずかしくなってきてきまう。
     こうしてわたしは彼らの本気の『甘える』の攻撃に晒されることになる。実行されたわたしはその後にこう思った。

     ……わたしはもう、アンデルセンに甘えてみないかなんて金輪際言わない、と。
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