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    yuruunisan

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    yuruunisan

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    ソロモンとデカラビアが仲良し。デカの蝙蝠が一杯でてきて動く。質問箱の氷弾から降魔がとオリアスとデカラビアな匂わせ。ハゲちゃん少しだけ出演。アジトに普通の動物はいない話とカウントダウン内容も使用。大体捏造。

    ポイピクには過去文を晒すって無かったんですね

    デカちゃんの秘密 蝙蝠分離編早朝、ソロモン王と呼ばれる少年は、ソロモン王の使役する悪魔の一柱と言うことになっている男、デカラビアの部屋の前に向かって居た。
    「デカラビア、ごめん、今日の予定について話したい事があるんだけれど」
    部屋の前に着き、ソロモン王、通称ソロモンが声を中に掛けると、閉まったままの扉の向こうから、欠伸混じりのデカラビアの声で入室許可が聞こえてくる。
    「いや、でも……」
    声の様子から察するに身支度もまだだろう。本当に入っていいものかソロモンは逡巡した。
    だが、そのソロモンの目の前でデカラビアの部屋の扉は内側から開いた。
    「……なんだ、起きてたのか デカラビア」
    恐らく彼の好まないであろう案件を、朝早くから持って来ており後ろめたさのあったソロモンは、いささかほっとしながら開かれた扉から中に進んだ。
    ソロモンが入った部屋の中では、ベッドがまだ膨らんでいた。布団がもぞもぞと動いていること、なによりその端から夜色の短い髪が見えることから、デカラビアは布団の中にいるのだろう。
    「やっぱり寝てたんじゃないか、起き上がれない程眠いなら、すぐに部屋の中に入れてくれなくても後で」
    言い掛けてソロモンは気づく。部屋の扉は誰が開けたんだ 少しばかりゾッとしながら、首を左右に振って周囲を確認する。
    「キィ」
    「わぁっ!」
    ソロモンは気づかぬ間に側で飛行していた、小さな生き物に驚き数歩後ずさる。
    「キィ、キキィ」
    「こ、蝙蝠」
    「キキィ!」
    一匹の蝙蝠が、ソロモンの周りをぐるぐると飛び回る。
    それを眺めて数秒程経っただろうか、ソロモンは思い出した。デカラビアが時々連れていた蝙蝠達の内の一匹だろう。
    「もしかして……」
    この蝙蝠が扉を開けたのか デカラビアの蝙蝠達は良く仕付けられたペットで、降魔祭の時には小さく軽いプレゼント箱を運んで飼い主を手伝っていた程だ。
    だが蝙蝠が扉を開閉出来るはずはない。
    いくら従順なペットでも、しっかりと閉まった扉を開くにはそもそもの体躯が小さすぎた。でもそれなら、誰が扉を開けたのかと言う最初の疑問に戻るわけで……。
    「キキィ」
    「あっ」
    ソロモンの周囲を舞うように飛んでいた蝙蝠は、ふいに離れて部屋の奥の方に飛んでいく。懐いてくれた動物が気まぐれに去っていくのが、少し惜しい気がして、ソロモンは蝙蝠を追うように手を伸ばしていた。
    しかしながら蝙蝠は、完全に部屋の奥に向かったと言う訳でも無いようだった。部屋の中央よりやや奥に無造作に設置されている小さな机と椅子。その椅子の背もたれの丁度真上辺りで、今度はせっせと翼を動かし浮いている。
    そんなはずはないと思いながら、ソロモンは蝙蝠に問いかけた。
    「……座れって」
    「キィ」
    タイミングよく返事をするように、蝙蝠はソロモンの声に続けて鳴いた。ソロモンは……実はまだまだ幼いのところのある少年は、その蝙蝠の様子に笑みを隠しきれず、近寄っていった。地域によってではあるが蝙蝠は不吉の象徴とされ、不気味がられもする。遠くから見るだけだと、デカラビアの蝙蝠達は、赤黒く切れ長の瞳で表皮の色も黒く、怖がりの者なら恐れても仕方ない姿をしていると思う。
    だが、間近で見ると愛らしいものだとソロモンは思う。懐いている様を見せられた贔屓目かもしれないが……。
    そんな事を少年が考えていたのはそう長くはない時間だったはずだ。だが、ソロモンに向かって鳴いた蝙蝠のお気には召さなかったらしい。
    蝙蝠は椅子の背に取り付き、座りやすくなるよう椅子を引いて動かした。
    「キィィ、キィ、キィ」
    「ははっ、ごめんごめ……え」
    目の前の椅子は決して大きな物ではない、例えばどこかの王様の座るような立派な椅子よりはずっと小さくて軽い。健康体のヴィータの大人なら片手でも動かせそうなものだ。だが、ヴィータにとっては軽い目の前の椅子は、蝙蝠にとっては軽いはずがない。ソロモンの思考は今の出来事の異常を訴えている。
    同時に、今までさして気にしても居なかった、重い衣擦れの音、ギシリとベッドが鳴る、コウモリの羽ばたき、それらが鮮明に感じとれ、ソロモンは音のする方向に勢いよく顔を向けた。
    「デカラビア!」
    「なんだ、朝から騒々しい、支配者としての落ち着きが足らんぞ」
    半ば叫ぶように名を呼ばれたデカラビアは、顔の下半分を覆うように手を当て、欠伸を噛み殺しながらのんびりと目をやった。

    デカラビアの視線の先には、口をパクパクさせているソロモンと、その横でホバリングしている蝙蝠が居た。

    ソロモンの視線の先には、蝙蝠に背を押され、身を起こしてもらっているデカラビアが居た。別の蝙蝠は櫛を足で掴みデカラビアの髪の毛を梳かし、更に別の蝙蝠は、タオルを捧げ持っているものや、デカラビアの外套を運び主が手を通しやすいように待っているものがいる。

    「それと、人に向かって指を指すな。俺は罪人だから良いだろうが、普段その癖が出たらどうする。吟遊詩人辺りから習わなかったのか」
    「だって、いや、なんだよそれ!」
    「俺の便利な使い魔だが、知らないのか」
    クククと喉を慣らし、余裕ありげな態度でデカラビアはベッドから立ち上がる。それにワッと蝙蝠達が近づき、デカラビアの服を整えていった。最後に帽子を被せればいつものデカラビアの完成だ。
    「そんなの知らない、ペットじゃないのか! 説明してくれ!」
    首を勢いよくもげそうな程に横に振る少年を観察する眼をしていた、蝙蝠達の主は、少年が心底戸惑っていると理解したらしい。含み笑いを収め、口許に片手の拳をやり、どこから説明したものかと目を空中に逸らす。
    「つまりだな、こいつら……この蝙蝠達は、俺だ」
    「はぁ!」
    デカラビアも直截的な冗談や嘘も吐くことがあるのかと思った。だが、話すデカラビアの様子からして嘘を吐いて居ないともソロモンは判ってしまった。ならば本当に蝙蝠はデカラビアだ。

    蝙蝠が淹れたばかりの湯気が上がる紅茶に満たされたカップに、蝙蝠に差し出された砂糖壺から角砂糖をカップに入れ、蝙蝠が持ってきたティースプーンで紅茶をかき混ぜ、一気に飲んでしばらく椅子の上で項垂れた後、ソロモンは気分を切り替えようと顔を上げた。

    「つまり、デカラビアの魂の一部を切り離して作ったのがこの蝙蝠達で、今もデカラビアに従ってくれてるって事……」
    少し火傷をしてしまった舌のせいでやや舌ったらずになりながらも、ソロモンは話を自分なりに纏めて口に出した。
    蝙蝠達が水差しを持ってはたはたと翼を揺らし、近づいて来て、今度は木製のコップに冷たい水を注いで差し出してくる。蝙蝠達はソロモンの口内の火傷に気づいたとでも言うのだろうか。蝙蝠達を自分だと豪語したデカラビアは特に何も蝙蝠に指示を出した様子はないのに。
    「物分かりがいいじゃないか、説明する甲斐があると言うものだ。勿論、細かく指摘しようとすれば正確でない部分もあるが、ヴィータとしての理解では上々だろう。先程までの醜態を考慮すれば尚更な」
    「大体合ってるならいいよ……説明ありがとう、デカラビア。後さっき、指差してゴメン」
    「少々驚かすつもりはあれど、おまえが全く知らんとは意外だった、仕方なかろう」
    驚かすつもりはあったのかとソロモンは内心思ったが、ややこしくなりそうなので黙っておいた。代わりと言う訳ではないが、水を持ってきてくれた蝙蝠達に指輪を嵌めて無い方の手で触れる。
    「オマエ達もありがとうな」
    蝙蝠に礼を言って、ソロモンは水で喉を潤す。
    それを見届けた後、ソロモンが座っている他に、もう一脚だけある椅子を出して……出したのは蝙蝠達だが……腰を掛け足を組んで居る、すっかり外出用の姿になった……蝙蝠達に身支度を手伝わせたお陰で素早く行えたのだが……デカラビアが言う。
    「さて、此方からも質問を行うぞ、ソロモン王」
    「なんだ、デカラビア」
    「これだけの数の軍団員がいるのに、今まで一人もいなかったのか」
    言葉がいくつか抜けていたものの、何を聞かれているかはわかった。
    「知らないよ。ハイドン……は幻獣だって聞いてるから違うだろうし、シャックスのピヨピヨ達も違うだろうし、ミノソンは兎を連れてたけど、デカラビアの蝙蝠みたいじゃなかったし。ピーターもペッ、相棒だろうし……だよな」
    「ふん。誰がどこまで真実を述べているものか分からんがな」
    「どうして」
    「隠し玉は持っておくべきだろう わざわざ言い触らす意味もない。だが……」
    「だが」
    「おまえに隠さず伝えそうな者の中にも一人もいないと言うのがな。案外、人望がないのか、ソロモン王」
    「いや、……」
    「どうした、気にしたか、ククク……」
    「そうじゃなくて、デカラビア、俺、思ったんだけどさ。……魂を切り離して、別の生き物を作って、操りはしないで、でも従って貰うって、とても難しいことなんじゃないかな」
    「……なんだと」
    心底わからないと言う顔のデカラビアに、ソロモンは重ねて言った。
    「そんな懸命に働いてくれる子達が居たら、使いまくるやつも多いと思う。人前でも関係無しにさ。フラロウスやメフィストなんか、遠慮無しで芸をさせてお金を稼いだり、宴会でお酒注がせたり後片付けさせたりしそうだ。ブネは分身に頼りきりになって、ブニに叱られたりしそうな気がする。バルバトスやモラクスは頼りきりにはならないだろうけど、俺になら紹介してくれるだろうし。……それに魂が簡単に切り離したり合体出来るものだって、俺は皆から聞いたことないよ」
    ソロモンの言葉の最中、珍しくデカラビアは口ごもっていたものの、最後にようやくといった調子で主張する。
    「………………そんなに難しくないが」
    「キィ、キィ」
    自分だけ軽々と出来るやつはそう言うって、故郷の友達が語っていたなあと、蝙蝠に慰められるようにすり寄られ頬に頭を押し付けられているデカラビアを見てソロモンは思う。
    「じゃあ、今度はこっちからまた質問なんだけどさ」
    「なんだ」
    若干憮然とした表情で、蝙蝠にすり寄られたまま……着々と新しい蝙蝠達に集られ、すり寄られる数が増えている……デカラビアが返事をしてくる。
    「蝙蝠達の事、今日も黙ってる事が出来たのに、教えてくれたのは何故なんだ。隠し玉なんだろ」
    「キィ、キィ」
    椅子を引いてくれた蝙蝠だけはデカラビアに近寄らず、ソロモンの肩に留まって、ソロモンの問いかけの抑揚に合わせるように鳴いている。
    「……おまえの配下の他のメギドに同じ能力を持つやつがいないのは予想の範囲外で、もう知っていると思っていたからな。であるなら俺は警戒されてるだろうし、隠しておくより、そろそろ教えておいた方が、役に立つ事もあるかもしれんと考えたまでだ」
    配下じゃなくて仲間なんだけどなと、デカラビアの言葉を聞いてソロモンは思った。だが、指摘しようにもそこがデカラビアなりの一流のこだわりと言うやつだろうとも考えていたので、些か気を散らしながら会話を続けた。それが悪かったのかもしれない。
    「他に居たとしても、デカラビアもそうだとはバレてなかった訳で……あっ。さっきの、逆に言うと俺にその事を隠さず伝えてくれる者の人望はあるって事になるな」
    「キィ」
    「クッ、皆まで言わせるな! おまえもそっちの味方をするんじゃない!」
    「おまえも…… 味方って、この蝙蝠か! 会話もわかるんだ、すごいな!」
    「キィ!」
    「ええい、そろそろお喋りは終わりだ、俺と朝のティータイムをしに来たわけではないんだろう、さっさと用件を言え!」
    バン!!
    音を立てて、デカラビアはテーブルを叩き立ち上がる。
    テーブル上のカップは揺れ、デカラビアに集っていた蝙蝠達は、その拍子に空中にバラバラに飛び上がった。
    デカラビアはソロモンに背を向け窓の方に歩いた。飛び上がった蝙蝠達はデカラビアの周囲を慌てたように小刻みに翼を動かして飛んでいる。
    「少し怒らせちゃった……」
    「キィー……」
    窓を乱暴に開き、そっぽを向いたままデカラビアが言う。
    「わざわざ直接俺の元に来ると言う事は、それなりの案件なんだろう、早く済ませるがいい」
    「そうなんだけどさ。うん……」
    言い過ぎて怒らせた手前、今のデカラビアには更に言いにくかったが、ここで帰ってもデカラビアは納得しないだろう。
    ソロモンも椅子から立ち上がる。肩に留まっていた蝙蝠は飛び立ち、窓の庇に逆さまにぶら下がった。
    「実は、見かける幻獣が増えてるって村から依頼が来て。何かあっても行けないから、皆を集めたらすぐに行くつもりなんだけど、丁度いいメンバーが足りなくてさ」
    出てくる幻獣が、植物型が多く、一体一体の脅威度はそれ程でもないが群れるらしいんだとソロモンは付け加えた。
    「それで俺に白羽の矢が立ったか」
    なんだそんなことかと言いたげに、デカラビアは吐息を漏らす。周囲の蝙蝠達も主の様子に安心したのか、一匹ずつ順に庇にぶら下がって行った。
    「その状況であれば俺が適任だ。このように改まらずとも好きに呼びつければいい、理由の無い事でもないのだから」
    「でも今日ってフルカネリ会長との面会の日だろ。だから、オレから直接頼まなきゃなって」
    「さっさと済ませて向かえばいい。終わったら最優先してくれるのだろう」
    「それはもちろん! でも間に合わないかったらさ……泊まりがけになるかもしれないし」
    「間に合わなければ、伝言でも手紙でも、他に方法があるだろうが。どうしても直接面会する必要あるわけでもない、あちらも俺が来ないならば訳は察する。問題ない」
    「デカラビア、いつもあんなに楽しみにしてるから、悪いと思って」
    「誰が遠足前の子供のように喜んでいるだと」
    「ちょっとぉ!? そこまで言ってないじゃないか!」
    「語るに落ちたな。言ってないとは発言しても、考えてもいないと否定しないとは。おまえが俺の事をどのように思っているか、一度じっくり話し合わねばならんようだなぁ、ソロモン」
    「う……」
    デカラビアは、手を掲げて指先を数度曲げた。すると、庇の蝙蝠達が数羽飛んできて、デカラビアの腕にぶら下がる。
    「クックック……、冗談だ。この程度の意趣返しは許せよ、ソロモン王。こいつらも、村や周囲の監視をさせる程度の役に立つかもしれん」
    「蝙蝠達も力を貸してくれるのか」
    「状況次第だがな、バレたのだから、有効ならば使わねば損と言うものだろう。それで、植物の幻獣退治とやらの駒は、俺の他には誰が並んでいる」
    マントを翻し、腕の蝙蝠達を解放し杖を持ってこさせながら、デカラビアが部屋の扉に向かう。
    「また駒なんて言って……ビフロンスに、一緒にいたアザゼル、それと声をかけたら来てくれる事になったオリアスに、声を掛けに行ってくれたハーゲンティ」
    「噛み合わんな」
    「だから人手が足りないって言ったじゃないか......戦い方が合わないのは仕方ないじゃないだろ、それでもビフロンスと組むのは慣れてるはずだ。 後オリアスはデカラビアの技を効きやすくすることが出来るから悪くないと思うけど......」
    「ふん。まあ最悪の場合、俺一人でも何とかしてやろう」
    「頼りにしてるよ。デカラビアも蝙蝠達も」
    「キィ」
    窓の庇に残っていた蝙蝠が一匹、ソロモンの方へ飛んできて、頬にすり寄ってくる。
    「ははっ、くすぐったいって」
    部屋を出る直前だったデカラビアは振り向いて、半眼で唸るように言った。
    「調子に乗るなよ」
    そのままソロモン達の反応を待たず外に出て、バタン、と扉が閉まる。
    「ちょっと待てよ、俺達がまだ居るのに閉めなくたっていいじゃないか」
    「キッキッキッ、キキィ~」
    ソロモンはデカラビアを追って扉を開けて、声をかけた。
    「食事は用意して貰ってるから、オリアスが来るまでは自由時間だからな、ポータル前に集合!」
    デカラビアから返事はなかったが、二羽程の蝙蝠を周囲に舞わせている背が手をひらひら振ったのは了承の合図だろう。
    「ふう……。調子に乗ったつもりは無いんだけどな」
    「キィ」
    「ちょっと触っていい」
    「キィ!」
    片翼を万歳のように一瞬上げてくれた。
    「名前とかあるのかな、聞き忘れちゃったな」
    側にいてくれた蝙蝠の首回りの毛に触ると、ふわふわで柔らかい。疑っているわけではないけれど、他に声のかけ方も思い浮かばず、ソロモンは蝙蝠に声をかけた。
    「なあ、本当にデカラビアの一部から生まれたのか」
    「キィ!」
    蝙蝠はコクコクと顎を上下に動かした。頷いている。
    「本当なんだな。オレが知らなかっただけでオマエ達とデカラビアみたいなのが他にも居るのかな。アジトに同じ様なメギドが居て、隠してるかもしれないってデカラビアは言ってたけど……」
    ソロモンは暫し考えた。例えば今日一緒に行動してくれるメギド達はどうだろう。
    「ビフロンスは……無さそうだ、アザゼルも、無いだろうな」
    悪意を持って隠すとは考えないが、特別な理由があったり、あるいはデカラビアみたいに生物の創造をなんでもない事だと思って言わなかったりするメギドが、ソロモンの軍団に他に一人ぐらいはいるかもしれない。
    「今日の他の二人は、ハーゲンティにオリアス……」
    どちらも陰謀など企みそうにない、友好的なメギドである。ただ、ハーゲンティは、うっかりと悪意なく人を振り回す所もあるし、オリアスはミステリアスだから、秘密を持っていても不思議ではない雰囲気がある。
    「オリアス、ハーゲンティ……何か思い出せそうな気がする」
    「キィー、キキィ、キィ、キィ~」
    むむ、とソロモンは蝙蝠から手を離し、腕を組み思考に没頭した。触れる手が無くなった蝙蝠は、ソロモンの頭の上にヒラリと着地し身体を丸める。
    「あ」
    「キィ」
    ソロモンは腕組みを止め、分かったぞと言う代わりに手をポンと叩いた。
    「丸くて器用で普通に見かけることはなくて……黒いときもあって、いやこれは関係ないか。……もしかしたら、オマエ達と同じ生まれ方をした仲間が見つかったかもしれない」
    「キィ」
    「ハーゲンティのハニワ」
    「キィ」
    好奇心に突き動かされたソロモンは、たまらずホールの方向に駆け出した。

    ソロモンからの質問に、ハニワを頭にのせたハーゲンティはキョトンとして答えた。
    「ハニワは粘土から造るに決まってるじゃないですか」
    ハニワはどこから生まれたのか、と言う質問は、いつも美味しい食料に困窮気味の彼女が、ホールでお使いのご褒美に豪華なおかずパンを食べていた手が止まる程には、困惑に値するものだったらしい。
    ハーゲンティに若干かわいそうなものをみる目を向けられてしまったソロモンは、力無く頷くしかなかった。
    「……そっか……」
    「良質ならなおのこと良しっ あたいは貧乏だからいい材料なんか買えないですけどね、自分で探し回ってもなかなか見つかんないしっ てへへ」
    「……うん……そうだよな」
    「そういえば、稀にフォトンを吸収したハニワが動き出したりしますよっ」
    ハーゲンティの言葉と同時に彼女のハニワがピョンと跳ねた。
    「フォトン……ああ。ありがとう……とてもよくわかったよ……」
    「大丈夫……ですかぁ、ボスぅ。はっ、まさかお腹痛かったり あたいのお金稼ぎのための幻獣退治、行けなくなっちゃう」
    「大丈夫だよ お腹は痛くない、ちゃんと行くから」
    「よかった~。今回の収入当てにしてたんですからね、ボスぅ」
    「うん、頑張らなきゃな」
    そこまで困ってるなら貸すんだけど、や、お金のための幻獣退治ではないのだけれど、と言ったことハーゲンティの話を聞いたがソロモンには浮かぶが、ソロモンから声をかけたため指摘しづらいし、ハーゲンティがやる気を出しているならいいだろう。ソロモンはほっと一息をつき、ハーゲンティの側の空き席に座った。
    ハーゲンティはパンにかじりつくのを再開する寸前に、何かを気にしたようにソロモンの頭上を見た。
    「ところでボス。どうして蝙蝠を頭に乗せてるんですかい」
    「あっ」

    「へっくしゅっ」
    「どうしたの、オリアス、風邪~」
    「ち、違います。そうじゃないけれど、いきなりムズムズして……くしゅつ」
    「ネマキのままモタモタしてるからだよねー」
    「ねー」
    「そうじゃないって言ってるでしょ、それに分かってるわよ」
    予言の魔女の庵にて、ソロモンに召集を受けた魔女オリアスと、彼女が生み出した分身である使い魔の黒猫二匹は朝の身支度を行っていた。オリアスがきびきびと動かないため、使い魔二匹が彼女の尻を叩いていたというのがより正確だけど。
    オリアスの頭に乗って、櫛で髪を梳かしている方の使い魔が言った。
    「オリアス~グズグズしてないで、早く顔を洗ってゴハン食べちゃわないと、用意は出来てるんだからさー」
    「分かってるけど」
    「このままだとパジャマ着たまま指輪で召喚されちゃったりして~」
    「ね~」
    「ボクくしゃみが起こる理由、もう一つ思い出しちゃった。誰かがオリアスのウワサしてるんだよ」
    「ええっ」
    「そうだそうだ、サッキのくしゃみも、オリアスが来ないなってウワサされてたのかもよ」
    「寝ぼけ眼のパジャマで召喚されたら、ユーノーでミステリアスな占い師のイメージがこっぱミジンコだね」
    「ボクらはそっちのホウがラクでいいかも~」
    「もうしっかりオリアスのお世話しなくてよくなるもんね~」
    「そんな、それは困るわ」
    「じゃあ早く布団から離れるんだよ~」
    「だよ~」
    「ううっ、分かったわよ」

    それからしばらくののち、ポータル前に集まったメギドを引き連れてソロモン王は村を悩ます幻獣を退治に出発した。
    もちろん、動くハニワや紅茶を淹れてくれた蝙蝠やダンゴのような黒猫も一緒に。

    終。
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    yuruunisan

    DONE主な登場キャラ 
    デカラビア、アスモデウス、ブネ、バラム、ヒュトギン、バルバトス、カイム、ソロモン、フルーレティ。
    デイベ後の軽い馬鹿騒ぎソロデカ。
    アジトの知能が減っている。
    ソがデの事を大好き。
    軍団メンバーがモンに恋愛的アピールをしている設定有。
    直接描写はありませんが、エッチな事をしたと取れる展開。ちょっと下品。少し伏せ字有。
    最初バルバルがかわいそう。
    毒から出た真ソロモン王をハルマに取られるのは業腹である。
    アジトの会議室でテーブルを囲むメギド達の意見は概ね一致していた。少なくとも、ハルマが擁する王都のシバの女王より、別の相手との第一子をソロモン王に作って欲しいと望むメギド達はそう信じていた。

    ソロモン王の恋愛事情は、定例会の折に出た雑談の一つだった。
    それがあれよあれよと大きくなり、ついには特大級の火種に育った。
    定例会とは言え、自由参加型の上、他の用事でアジトに人が多くなる日時の近辺に参加者希望者が多く居たら開くと言う、本当に定例会と呼ぶべきなのか分からない会で、ハルマに好意的かつ穏便なメンバーが偶然参加してなかったのも話が大きくなる後押しをした。

    そして、調停者に混沌に吟遊詩人と交渉官と、書記に徹する道化と酒瓶を片手にした大柄な傭兵が、ソロモンにとっては大きなお世話でもある、誰がソロモン王の伴侶に相応しいか論争の口火を、張本人抜きで切っておとしたのである──
    14875

    yuruunisan

    DONEデカイベ後 ソロデカでドラデカだが、精神的ドラソロのような一幕も ソロモンへの感情が重いデカラビア レラジェがドラデカをバカ二人だと思っていて発言もするし実際バカ 悪友腐れ縁的ドラレラデカでドラデカが仲がいい
    モン登場シーンは少なめ
    死亡志望診断書デカラビアとアンドラスがソロモンに怒られている。

    「なんなんだ、あれ」

    フード付きの緑の狩人服に弓を背負い、頭の上にはカメレオンを乗せた女性追放メギド、レラジェが呆れを隠さずに言った。

    昼間の平和なアジトであった。何事も無い、空の青い陽気のいい日だった。無理矢理に特筆すべき事を探しても、このアジトの追放メギドを率いる青年、通称ソロモンが数柱のメギドを連れて緊急性のなさそうな幻獣退治に出掛けていた事ぐらいしか、特筆することの無い日だった。

    レラジェはそんな日に、幻獣退治とは全く関係の無い狩りに出掛けたのだった。出掛ける前に、解剖に並々ならぬ執着心を見せるアンドラスに、狩ってきた動物を解体するかと聞いたが、アンドラスは解体と解剖は違うのだとやや頬を膨らませやんわりと断ってきた。レラジェにとっては大差がなかったのだが、アンドラスにとっては大きな違いがあるのだろう。
    19441

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