Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    neruco_s

    @neruco_s

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💙 💚 🍑 🍓
    POIPOI 62

    neruco_s

    ☆quiet follow

    こめぐとこめぐにひとめぼれした五条さんのはなし。

    #伏五
    volt5

    天使なんかじゃ、 校門に天使がいるよ。おっきい天使。
     もうすぐ昼休みが始まる4時間目、腹を空かせて集中力も欠けた時間に天使がいると窓際の同級生が言い出した。
     天使なんて居ないよ。
     天使は黒い服着てないよ。
     静かにしなさいと先生は言うが窓際へちらほらと生徒が集まってしまう。
     あれって天使じゃないよ、伏黒のさぁ、
    「天使なんかじゃねぇよ」
     注目が集まる前にぼそりとつぶやき教室を出る。扉を閉める前に、先生に今朝伝えた早退を早めると言ってから。

    「あんた目立つから校門で待つなよ」
     久しぶり!とへらへら言う前に注意するも「給食食べてこなかったの? 美味しいんでしょ給食って。 ファミレスみたいなもんかな」と返事になってない言葉が続けられる。
     今日も五条悟は黒くてしろい。ひとの話は俺だけじゃなくて誰の話も聞かない。目玉が夏によく食べるアイスの色をしている、変な男で強い男だ。
    「食べてたらあんたの言ってた時間に間に合わない」
    「そーなんだ? じゃ新幹線で何か食べようね」
    「新幹線乗るのかよ」
     目的を言わないで約束もする。それは急にスケジュールが変わることもあるからだと何度目かの約束で気づいたが、どこに連れていかれるかわからないのは移動や旅行に縁のなかった恵にはストレスだった。
    「新幹線嫌い?」
    「好き嫌いの話じゃない」
    「乗り物好きなんじゃないの、恵くらいの年って」
    「人によるだろ」
     軽口を叩いて待っていた車に乗り込む。大きく黒い車だ。それは五条みたいな車だと恵は思ってる。
     シートベルトを着けると、ここ最近この動作に不満がある五条は拗ねた。
    「僕が抱っこするのに」
    「いらねぇ」
     車の中でも危ないからねとはじめの頃乗る度に五条の膝の間に座っていた。
     恵なんて軽いから事故ったら窓から飛び出しちゃうんだよ、こわいね。と言う五条はとても楽しそうだった。
     五条も乗り込みシートベルトを締める。いつもは着けないのだろう。何が飛び出すねこわいねだ。五条が乗った途端車がじんわりと五条の呪力で覆われた。その時点でこの車は世界一安全な場所になった。

     滑り出すように静かに発車し、窓の外はどんどん知らない場所へと景色を変える。五条は持ち込んでいたお菓子を食べていた。饅頭みたいだけど多分違う。色とりどりで外側もあんこみたいな。それをぽいぽいと口に放って食っていた。
    「恵、玉犬安定した?」
     半年前に五条の力を借りて影から出て来た犬の名前だ。
    「前よりかは。 でも、気づいたら勝手に出てきて布団の横で丸まってたりする」
    「はは、かわいーじゃん」
     ゆら、と自分の影の中身が喚ばれたと思ったのか動いた。
     咎めようとする前に五条が「邪魔するな」と恵の影を指差した。グルル、と地を這うような鳴き声がして、それっきり影は恵の形だけになった。
    「僕にヤキモチ妬かせないようにちゃんと躾といてね」
    「なんであんたが…いやいいです。 はい、わかりました」
     五条は恵にひとめぼれしたのだと言う。僕ひとめぼれしたの初めてなんだよねとアイスの目玉をキラキラさせて、ひとめぼれってすごいねと言っていた。
    「可愛がる時はあんただって可愛がるくせに」
     五条が玉犬をくしゃくしゃとなで回していた時を思い出す。恵より大きな犬が紙くずを丸めるみたいに撫でられる姿に、五条が自分を撫でたり抱きしめたり、唇を合わせたりする姿は端から見るとこれ以上の異質なものなのだろうと、その時思った。
    「僕、可愛がりたい時にしか可愛がりたくないんだよねぇ」
    「最低」
    「式神はペットじゃねぇし。 前も言ったでしょ、間違えないようにね」
    「…はい」
     それきり会話は途切れ車も目的地へと到着したのか停車した。
     恵は思う。五条が自分を撫でたり抱きしめたり、唇を合わせたりするのは「間違えて」はいないのだろうか。
     倫理や道徳は恵にとってどうでも良かった。五条の中で「間違い」ではないか、それが知りたかった。

    「恵? 降りるよ、早く行こうよ」
     先に降りた五条が長い体を曲げて覗いてくる。
    「行くったって、どこに行くんですか。 教えてくださいよ」
    「じゃあお弁当僕の好きなのふたつ、半分こしてくれたら教えてあげる」
     降りる時掴まった手のひらをそのまま握って五条と恵は歩き出した。
    「嫌です。 あんた、弁当買っても他に甘いもん買ってそっちばっか食うくせに」
    「僕のひとめぼれは今日もうるさいねぇ」
     間違えていても正しくても、恵も五条のいる世界も、五条が全てなのだ。
     ひとめぼれと自分の事を呼ぶ五条はきっと、黒を白にする。例え恵が望んでいなくても。そういう男なのだと、恵は思った。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💕🍌
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works

    kikhimeqmoq

    DONE2020/01/21 慶長禪五(伏五)。ご先祖の御前試合の話なので、ほんのり匂わせ伏五です。禪院が年上で28歳、五条が年下で15歳。しぬ方の話です。こんな風に笑うことがあるのだと初めて知った。

    五条の知る禪院は薄い唇をムッツリと閉じ、切れ長の目を剣呑に光らせていた。笑顔といえば薄笑いか嘲笑いがせいぜいで、口を開けて笑うところなど、15歳のこの日まで一度も見たことは無かった。

    今はどうだ。五条が新しい術式をもって打ちつけるたび、新しい玩具を手にした子供のように目も口も丸くして喜んでいる。

    会えば喧嘩ばかりしていた。お互い御三家嫡男として幼い頃から関わりがある。しかも自分は禪院よりも十も年下で、物心がついて気がつけば既にそこにいる者として存在していた。いつ会っても目障りな存在として。

    幼少であろうが年が離れていようが年上なはずの禪院は若い五条を煽り、手合わせだといって打ちのめした。五条が成長し、いつか禪院を超えるのだと鍛錬しても、こいつはこいつで式神や術を増やした。

    お互い長じて嫡男となり、家と家との都合で顔を合わせれば、容赦のない突っ込みばかり。口数こそ多くはないが、五条の隙を見つけてはロクでもない意見を披露した。五条が怒りで顔を赤くすれば、禪院は涼しい顔で薄く笑う。かなり腹が立った。が、その流し目は美しいと思っていること 4260

    kikhimeqmoq

    DONE2020/01/21 慶長禪五(伏五)。ご先祖の御前試合の話。あまり伏五関係ないです。タグつけてすみません。禪院が年上で26歳、五条が年下で13歳。生きる方の話です。全速力で宙を駆け、後ろから大股で近づいてくる魔虚羅を引き付ける。
    巨体の向こうでは大勢の者が慌てふためき、恐れ、怒り、逃げ惑っていた。
    喚き叫ぶ声の中から、ひときわ大きな力強い声で「主上をお守りせよ」と命じる声が聞こえた。あの側近は仕事ができる。帝は無事だろう。

    「もうやるか?」

    やかましい風の音に混ざり、背後から緊張した五条の声が聞こえた。

    「まだだ。もっと山までおびき寄せてから」

    急く若者を制しながら鵺を呼び出した。速やかに現れ、主を待つためゆるく飛ぶ式神の背に向け、先に五条を投げた。ばふんと勢いのある音がしたが、回転して受け身をとった五条は背中の中央に膝立ちになっている。それを確認した禪院は、すぐに自分も飛び乗った。

    「このまま山の頂上まで飛ぶ。五条、そこでおまえが一気に片付けろ」

    いいか、魔虚羅に同じ攻撃はできん。一度きりだ。頼んだぞ。

    背を叩くとバシンと中身の詰まった音がした。叩いた指が痛い。このところ手合わせするたびに大きくなっていると感じていたが、ここまでとは。
    禪院が頼むまでもなく、六眼と五条家相伝の術式を得たこいつは、神を落とそうとしたとて仕損じることは 3800