Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    翠蘭(創作の方)

    @05141997_shion
    一次創作/企画/TRPG自陣&探索者のぽいぴく
    一次創作の設定等はべったーに

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 40

    翠蘭(創作の方)

    ☆quiet follow

    華軍企画内企画、「彼岸(悲願)の向日葵」の自宅の話

    #華軍
    warrior
    #自宅
    onesHome

    幸せな夢を断つ話 六ひつじ? 大丈夫なの?」
     目の前で膝を着き、動かなくなった少女に、月待つきまち依宵いよ狼狽うろたえながら手を差し出す。それは、生前の彼女そっくりだった。知り合いであろうと無かろうと、彼女は手を差し伸べる。そういう人だった。
    「未、具合が悪いなら、今日はもう帰ろう?」
    「……」
     返事はない。聞こえていないのだろうか。
    「ねぇ、ひつ」
    「先輩」
     鋭い声が耳に届く。
    「月待先輩。──月待依宵、先輩」
    「……なぁに?」
     突然フルネームで自分を呼ぶ彼女に困惑しながら、依宵は返事をする。
    「貴女は、もう、いないんですね」
    「……」
     依宵は、不意を突かれたのか、声を出せなかったらしい。
    「ならば約束通り、貴女を弔わなければ」
     自身に差し伸べられた手を払い、少女はゆっくりとその場に立つ。依宵に向けられた彼女の瞳は揺るぐこと無くこちらを見つめている。彼女の声には、強い意思が宿っている。
    「どうして、今どこに、貴女に聞きたいことは、たくさんあるけれど」
    「ひ、未?」
     動揺を隠せない依宵を無視して、彼女は続ける。
    「僕は、貴女とは居られない。この幻覚ゆめに留まれない。僕を、待っている人が、いるから」
    「……なにを言っているの?」
    「わからなくて構わないよ。お前は、先輩じゃないからね」
     短い髪は肩まで伸び、羽織っていたはずのカーディガンは消えている。髪はハーフアップで結い上げられて、紫のリボンが飾られていた。今の夜咲よるさき未の姿だ。
    「……僕にとって、先輩は大切な、師匠のような人。大好きな人。でも、僕が先輩おまえに囚われることは、ない」
     仮に囚われたとしても、それはこんな幸せな夢の中ではないだろうと、少女は笑う。依宵に囚われるのならば、その時自分は地獄のような世界にいるはずだ。
     未がロケットペンダントに手を伸ばすと、光を発しながら日本刀へと変化する。それは守礼と呼ばれる、舞手がしんを殺すための武器。形も武器種も人によって異なるそれを、未は握りしめる。
    「未、なにを」
    「僕は貴女に頼まれた。……殺してくれと言われた。だから、僕は、貴女おまえを殺す。弔う。これは予行練習なんだ、と思って。本当の貴女が、神になっていたとき、ちゃんと、殺せるように」
     青く透き通る刀身が、依宵の腹部を薙いだ。刃先が赤く染まり、窓や廊下には赤色が飛び散った。
    「あ、え?」
     訳がわからない、という依宵を押し倒す。痛みに顔が歪む彼女は、必死に手を伸ばす。
    「ど、して、ひつじ、やめ」
     青色が一直線に振り下ろされ、胸を貫く。 同時に視界の端で向日葵畑がちらつき、この夢が終わるのだと悟る。目の前には夕焼けに染まった少女が横たわっている。呼吸は浅く、時折ごぼり、と音が聞こえる。口の端が赤く泡立っていた。目の焦点も定まっていない。
    「先輩、月待先輩」
     返事はない。そっと彼女の瞼を閉じる。これは本当の彼女ではないけれど、最大限の敬意を。
    「どうか、……どうか、安らかに」
     本物の彼女も、楽になっているように、願い、祈り、望みながら。
     夜咲未は、彼女のくびを斬り落とした。

     ──長い、永い夢だった。
     目を覚ました未は、顕現させた刀を用いて、自身に絡みついた草を切り落とし、手の甲を見る。逃げ出そうと手足を生やした、一つ目の種がいた。
    (……ちょっと気持ち悪いような。ずっと見ていると、愛嬌がある気が、しないでも)
     険しい顔で、つい、と刃先を押し込めば、種は簡単に割れ、消失した。
    (思ったよりも手こずったな。……夏宵かよは)
     隣を見る。夏宵はまだ、幻覚ゆめの中だ。
     夏宵も恐らく、依宵の夢を見ているのだろう。両親とは幼い頃に死に別れたから、あまり記憶に無いと言っていた。となれば、夏宵にとって大切な故人は、姉である依宵である可能性が高い。もしくは、両親も共にいるのかもしれない。
     どちらにせよ、彼女の夢に介入し、原因である故人を殺めなければならない。
    「行こう、助けに」
     嫌われ、責められることになったとしても、現実を突きつけてでも助け出す。こんなところで夏宵を死なせるわけにはいかない。
     未は、夏宵に張り付いた種に触れた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works