間違っているトラファルガー・ローはもっと早くに死ぬ運命だったのだ。護送船の冷たい床で目覚めたバッファローは唐突に思い出した。
たとえばドレスローザでの戦死や、珀鉛病による衰弱死だとか、有り得た未来の夢想とは違う。確実な死がローに与えられる筈だった。
ちょうど十六年前。血の掟を破ったローを、バッファローはアイスクリームひとつで見逃した。
相手が不治の病を患ってるだけで憐れむ理由にならないし、ローが刺した暴力的な船員も好きじゃなかった。肩を掴んできたローに、三百ベリーの取引を持ちかけただけ。ローの白斑の肌も、背中をひと突きにされた船員の流した血も、バッファローにとって大した意味はなかった。深手を負った船員がアジトへ戻っていく姿を目にして、取引が無駄になると分かっても心は痛まない。
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