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    dandyhamaki

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    dandyhamaki

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    これの
    https://poipiku.com/103066/3326049.html

    つづきのENN組馴れ初めもどきの途中もの。
    −−−−−−−−−−−で次ページ前提でなんかやっとる。

    ##SS

    「やぁ、起きられたんだね。」

    まだ誰も居ない試合前の待合室。
    軽い食事を取りつつ他の参加者を待っていれば、昨晩廊下で疲労から行き倒れていた男がやってきた。

    「起きられますよ。そりゃぁ。」

    「そっか。」

    あの晩、いつも人当たりの良い笑顔を保っていた彼の顔は苦悶に満ちていた。
    寝言とは思えない量の独り言を続ける様を見て起こすべきかと悩んでいた時、眠っているはずの君は不意に自らの鼻をさすり小さくこう言っていた。
    「ああ、ひしゃげかと思った。」「破片を抜かなきゃ。」と。
    それまでの寝言とは違い少しハッキリとしたその寝言。些かの違和感。
    そんな違和感を感じる時は大抵悪い方への違和感で。何よりその苦悶の表情と脂汗は、かいている人間を廊下で放置するのは自分の信条的に憚られたのだ。

    「ノートン、夢見はいつも悪い方?」

    少し周りがまだ居ない事を確認してからそう言葉を続けると、ヒクリと笑顔が引き釣ると同時にそれを隠すかの様に彼は己の手で顔を覆った。

    「……毎日な訳では無い、ですね。酷く疲れると見る位ですよ。有るでしょ?そういう事。」

    「珍しい、君にしては分かりやすく嘘をつく。」

    つい呆気に取られたようにそんな事を言ってしまえば、その発言に対しては慣れたように、素知らぬ顔で彼は「まるでいつも嘘を付いてるかの様に言わないで欲しいな。」
    とだけ言った。



    −−−−−−−−−−−


    「すまない。本心で無いだけなのにね。」


    またこの男はそうやってこちらを見透かした様に言葉を吐き散らした。


    最初は天眼なるものすらを信用していなかった。
    しかし何度か試合を重ねる毎にそれは実感し、功績に繋げる為に信頼せざるおえなかった。まぁ、奇っ怪なハンターなる存在が居るのだから、ここではそういう類も居るのだろうと。

    しかしそうなるとある噂話が自分の胸に引っ掛かりを産んだ。

    『イライ・クラークは過去をも見透せるらしい。』

    それが本当なら…他人の掘り出されたく無い事を見透せたとしたら。恐らくこの荘園のコミュニティの、この人間達の鍵を握っているのは彼だろうと思ったのだ。
    だってそうだろう。
    こんな試合にワザワザ参加してまで叶えたい事がある人間なんてワケアリ以外の何があるかと逆に問いたい。

    だから本当かどうかカマをかけた。
    そうしたらこの男はこう言ったのだ。


    「もし見えたとしたらそれは必要になる事なんだと思うよ。」


    この小コミュニティに置いて彼の周りからの印象を維持した上で、これほどの脅し文句は無いだろう。

    そうなると次に見定めるのは僕の方だ。
    彼が、この男が求めるものを知らなければならない。もし僕の過去を見られ、もしこの男が僕に過去の出来事に対し、何か代償を要求したとして。
    この逃げ場の無い空間で、僕にとって最小限のリスクで事を済まさねばならないのだから。

    それからこの男との試合は進んで参加するようにした。
    この頃には試合中の怪我や死はこびりついた悪夢になった様に、それを乗り越えた後には無かった事になると分かった上でいくつか試した。
    土壇場の判断、窮地に置いて他者に求める事。何を犠牲にし、何を得ようとするか。
    もちろん功績に傷が付いては本末転倒なので、その範囲を越えない様に、彼の腹の中を知る様な仕掛けと言う程もない。
    ただ少し、そう仕向けるような事を試してみた。



    とりあえず一言で言えば反吐が出た。
    皆この男を善人だと言うが、この男はとんでもない傲慢さを持つ。
    ただそれが上辺だけを見れば善行に見えるだけと言う事。
    基準が分からない。
    ただの自己陶酔、ただの自己顕示欲。
    ただの無垢たる傲慢かと思えば、彼への報いはただの徒労で終わる事が多い。

    わけが分からなかった。
    功績に繋がる訳でもない正義心。
    (しかしこの正義心には違和感がある。)
    他者に示される訳では無い善意。
    (しかしこの善意には違和感がある。)

    知ろうとすればする程どこか一歩、いや、それどころでは無いのかもしれない。
    この男は普遍的な、普遍的と言いながら誰しもが持たないその善意や正義心を程々の理想を描かせるような歪な平坦さを持っている。
    その緩やかに激しい違和感への虫酸は止まらなかった。

    人の形をした違うものに見えた。

    そもそも近づくべきものでは無かったのだ。

    そんな頃、このワケアリしか居ない様なこの場所で、一人縄張りをチェックする野犬の様な男がその異質な人の形をした男と訝しげに話をしているのを見かけた。
    丁度良い潮時なのだろう。

    しばらくその異質な男と距離を置く事にした。出来る事なら金輪際最低限の接触で済ませたいが。



    そう思った側からだった。
    何度か行ったその異質な男が居ない試合は散々だった。
    信心深いものならばバチが当たったと言うであろう苛烈な試合が続き、不本意ながらあの虫唾が走る行為達に自分も助けられていた一端だと思い知らされる様な事態が続き、何度目かの一人逃げの時。
    部屋にすら辿り着けず、僕は意識と共に身体を地に寝そべらしたのだ。


    −−−−−−−−−−−

    「しかしよく私だと分かったね。」

    「……何がですか?」

    その時の彼の眼は、過去に予言を信じず、猜疑心や責任転嫁から向けられる眼差しと言うよりかは……なんだろう。
    そうだな、巣穴を梟に覗き込まれた栗鼠の様だった。

    何をした覚えも無かったが、彼は私に怯えている様だった。
    怯えている様だったが、虚勢なのか何なのか。その眼は逸らされず真っ直ぐに此方を見ているのは素直に好感が有った。

    私の目に怯えた者は大抵目を逸し怒号で己を立たせる。
    しかし君は怯えながらも真っ直ぐと此方を見て。落ち着いて言葉を選び、尚探る事を止めない人間なんだね。

    「ああ、ほら。私が君を部屋に運んで…その…」

    導きと言ったら君はまた怪訝な顔をするのだろうと思えば自ずと言葉を続けてくれた。

    「あんな傲慢で怪し気な言い回し。貴方くらいでしょう。」

    「……君から見て私は傲慢?」

    「自覚が無いようで。」

    恐らく彼の癖だろう。
    本音の時は笑みが維持出来ないのか口元を手で覆うのだとその言葉を聞きながらマジマジと見れば「近い」と少し怒られた。

    そうか、私は傲慢か。

    妙にしっくりと来た。今まで詐欺師やインチキ、偽善者。それに反してここでは善人と散々言われて来たが。
    そうか。そうだな。私はきっと傲慢だ。

    「そうか。私は傲慢だったのか。」

    「…………なんか喜んでません?」

    「いや、まぁ、うん。」

    そう返せばやはり変人なのだと眉をしかめる彼に「ソレだけで私と分かるのは流石の観察力だ。」と素直に褒めれば「皮肉も上手だ。」と落ち着いて言葉を跳ね除けられた。

    「…そうだな……。ノートン。君には私が奇異に見えているのだろう。」

    その言葉を聞いて動揺を見せない為か、ノートンはそのまま口元を隠し、ただただ言葉の続きを待ちながら此方を見つめ、そのまま軽く続きをどうぞと言わんばかりに少しゆっくりと瞬きを返して来た。
    私を傲慢と称し、そして奇異に見え怯えながらも君は今尚私の対等に立ち据えられるのか。

    「それでももし、私に出来る事で君が救われる事が有るなら。私はこの傲慢さを持って言えば、素直に頼って貰いたいと思っているよ。」

    そんな言葉は予想とは違ったのか、ノートンはより一層眉間のシワを深くし怪訝な表情をより濃くした。

    「それが昨晩手を貸した答え?」

    「ああ、昨晩はまぁ、巣から落ちた雛を見たから巣に戻しただけさ。」

    「雛ね。」

    その例えを聞いてその真っ直ぐと此方を見ていた視線は期待外れとばかりに逸れて行った。

    「いやっ、でも、昨晩はそうだったけれど、その。今は君の観察眼に感心して、その、本当に手助け出来る事が有るならと……」

    少し慌てて訂正すれば「なんだそれ」と言わんばかりに身体を傾け再び此方に向く視線に謎の安堵が訪れる。

    「私を傲慢と称した君の眼は素晴らしい。」

    思わず笑顔で言えば先程の怪訝な顔と違い、少し思案している様な…いや、きっとこれら値踏みの顔だろう。
    君は、私を怯える程に奇異に見ながらも、それを差し置いてでも価値を見抜く為に真っ直ぐと此方を見るのか。

    「………もう少し……もう少しマイルドに…その、目覚めさせたり出来ますか?」

    「あれをマイルドにか……」

    しかしその待った答えにどう手助けしたら良いものかと思考しようとした頃合いを見たかのように遠くから此方に向かって来る足音が聞こえてきた。

    ドアの向こうからやって来た試合の参加者を確認し、ノートンの方を向けば、彼はもう先程の事はなかったかの様にただ机の上に置いてあった磁石の手入れを行っていた。


    「友達になりたいな。」

    そう呟いた小声に対しようやっとやって来た参加者の一人のナワーブが即座に同じく小声で「やめておけ。」とだけ返してきたのだった。


    −−−−−−−−−−−


    あの二人が試合前の待合室で何か話していたのは知っている。

    具体的な内容は分からないが大方昨晩の事で有ろうと察しはついた。
    俺からの言葉以外に、直接言葉を交わした方が分かる事も有るだろう。

    イライは存外物怖じしない。
    と言うよりも時に上から見据えている様な、自分の事なのに客観的に見ている時がある。

    まぁ、そこは『そう言う類』故にという事なのだろうが。

    ノートンの方もあれからしばらく様子を見続けているが、少なくとも目に見える形で手を出すという事は人目が無い場合して来ないだろう。
    アレはああ言う男だ。

    群れとの衝突を避けながらも此方の事はよく見ている狼の様な男。
    人と言う群れで一人生き抜く術を学ではなく人で身に着けている。
    だからこそ人目が無い所では大人しく、だからこそ人目と言う他者の意見を見定められる所でこそ大きく出るだろう。
    そうしてコツコツと喉元を食う事を画策する男。
    あとはどれ程『賢い』かによるが、愚か者なら対処はそれなりに出来る。


    そんな判断から少し距離を取り人払いを促して頃合いを見て戻って来ればよもやこの男は「友人になりたい」等と言っているから頭を抱える。

    少しあの男を試す様な事をした自分も悪いのだが、正直こうなるとは思っていなかった。


    「やめておけ。」

    そう即座に口を出せば、無言で微笑み返すだけだった。
    これは駄目だ。
    先程時に上から見据え己を客観的に見ると称したが時にこの男はとても頑固になる。
    すると言ったらするのだ。いくら止めても。
    そんな試合が今まで一体何回有っただろうかと思い出し思わずため息が出たのは言うまでもない。


    そんなため息の後の試合の割に思った以上に事は快勝に終わった。
    珍しい事も有るものだとそのまま今日はもう汗を流して、いつもの見回りをして寝てしまいたい。
    見回りと言っても別に悪事を働く輩を成敗等と埃を被り捨てた正義心等ではなく。
    この場所に置いて些細な異変も大事に繋がりかねない。それ故の見回りとは名ばかりのルーティンも兼ねたものなのだが。



    --

    まだまだ続く。
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