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    LastQed

    @LastQed

    文字を書き散らす、しがない愛マニア。
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    ディスガイア▶︎フェンヴァル/ヴァルフェン
    コーヒートーク▶︎ガラハイ

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    ガラハイ🐺🦇【この狭いバスルームの内側で】Xに上げたもの。記録用。

    #ガラハイ
    #Coffeetalk
    #コーヒートーク
    coffeeTalk

    【この狭いバスルームの内側で】 窓の外、規則正しい雨音が響いている。シアトルの変わらぬ空模様。いつも通りならもうじきハイドが来る頃合いだろうとキッチンに立ちケトルで湯を沸かす。行きつけの喫茶店、コーヒートークで提供される一杯には到底敵うはずもなかったが、ハイドはこの家で飲むどうということのない紅茶も好んだ。常備しているのは至って庶民的な茶葉であるため、本当にあのハイド氏の舌に合うのかは甚だ疑問であった。が、カップを差し出す度にきちんと中身を飲み干して「素朴で落ち着く一杯だ」と満足気に評するのだから悪い気はしなかった。
     今日はセイロンか、アールグレイか。それとも買い足したばかりのハイビスカスか。茶葉の缶が収納された棚の前、指先を泳がせていると玄関の扉の開く音がした。

    「お出ましか」

     玄関に出迎えに行くと、生気のない顔で立ち尽くす、ずぶ濡れの来訪者がそこにいた。汚い言葉で天気を罵るでもなく、タオルをくれと要求するでもない、虚ろな姿にぎょっとする。衣服が雨を含み切って滴り、雑巾のように絞れそうなほどであった。
     雨を拭う素振りも見せず呆然としたままの友を見兼ね、腕を掴むと強引に部屋の奥へと招き入れる。身ぐるみを剥がしてしまうと男をバスルームへと、湿り気を含み重たくなった衣類を洗濯機へとそれぞれ放り込んだ。

    「何があった」

     バスルームのドア、曇りガラス越しに訊ねる。なんで傘を持っていないんだ、とか、どうしてタクシーに乗らなかったのか、とかそういうことを聞くつもりは毛頭なかった。どんな出来事が彼をそんな状態に至らしめたのか。それをガラは知ろうと努めた。
     扉の向こうは沈黙を保つばかりでいつまで経っても返事はない。それでも狼男は待ち続けた。待ちぼうけの中で思い返す。昔、ハイドがただの雇用主の立場でありながら──軍を退役し自暴自棄に陥っていた自分に粘り強く言葉を掛けてくれたことを。あの時のハイドは靴の裏にひっつくガム以上に鬱陶しかった。しつこ過ぎて苛立ちすら感じた。だが、最終的にそれに救われたことは紛れもない事実だった。だから、と、ガラは曇りガラスの先をまっすぐに見つめる。

     家主が扉の前から動く気がないと分かって観念したのか、消え入りそうな掠れた声がバスルームの中から返ってくる。狼男は聞き逃さぬよう耳を澄ませた。

     曰く、知人が亡くなったと言う。

     ハイドは旧知の仲であるガラの前で皮肉屋で冷徹な吸血鬼を気取る節があった。彼は長い年月を生きる中でそういった側面を事実、幾らか持ち合わせている。しかしそれ以上に、彼の意識の底にはナイーブな感傷が横たわっていて、時折ハイドという男のことを支配していることにガラは気付いていた。種族の定めであるヴァンパイアの不死性からただ一人、この世界に取り残されることを酷く恐れているのだ。ハイドは「知人」と口にしたが、彼の放心を見るにそれなりに交流のあった人物なのかもしれない。彼はまた、取り残されたのだ。

    「そうか」

     ハイドが吸血鬼である以上、彼はあらゆる知人を見送っては取り残され続ける。知人だけではない。友人、恋人や婚約者であっても均しく同じだ。その痛みは比較的長命とされる人狼族のガラにすら分かり得ない。簡単に分かったような顔をして良いものではない。それでも尚、目の前のドアに手を伸ばさずにはいられないのは過ぎた憐憫、あるいは傲慢だろうかと静かに目を伏せる。
     絆創膏にまみれた腕が二人を隔てるドアをノックする。

    「入っても良いか?」

     返事はなかった。が、無許可で結構、この家の主はおれだと無言の扉を開く。
     バスタブのへりに腰掛けるハイドが目に入る。その姿はまるで美術館に飾られた彫刻のようだった。無表情の美術品は俯いたまま、視線だけをこちらへと寄越した。

    「……私は入って良いと許可したか?」
    「すまん」

     閉塞感に息が詰まりそうになる。空間の湿度に溺れてしまいそうになる。しかしそれらを振り切ってシャワーヘッドを掴み取るとハイドの足元に温かな温度を掛け流す。青白い爪の先が少しずつ血の色を取り戻していく。冷え切った肩にそっと触れれば体温がほんの僅か、相手側へと渡ったような気がした。

    「……濡れるぞ、服」
    「良いんだ」

     ハイドはいつか、この狭いバスルームの内側に取り残される。けれどそれが今、寄り添わない理由になるだろうか。
     頭の中に浮かんだ問いをきっぱりと否定すると濡れた頬に一度だけキスを落とした。

     世界に、シャワーの水音だけが響いている。
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    LastQed

    DOODLEガラハイ🐺🦇【stand up!】
    お題「靴擦れ」で書きました。ハイドがストーカーに刺された過去を捏造しています(!?)のでご注意ください。

    ガラさんとハイドには、互いの痛みを和らげてくれる、一歩を踏み出すきっかけになってくれる…そんな関係にあってほしいです。
    【stand up】「ガラ、休憩だ」

     背後から名を呼ばれ、狼男は足を止めた。気配が背中まで迫って来るや否や、声の主はウンザリだとばかり、息を吐く。

    「休憩って……おれたち、さっきまでコーヒートークに居たんだよな?」

     両名は確かに五分前まで馴染みの喫茶店で寛いでいた。ガラハッドとゾボを頼み、バリスタ、それから偶然居合わせたジョルジと街の噂や騒動について会話を交わし別れたばかりだ。にも関わらず再び休憩を所望するこの友人をガラは訝しんだ。傾き始めた陽のせいかハイドの表情は翳り、どこか居心地が悪そうに見えた。

    「具合でも悪いのか?」
    「……ああ、もう一歩も歩けそうにない。助けてくれ」

     かつて、オークに集団で殴られようが、ストーカーに刺されようが、皮肉を吐いて飄々としていた男が今、明確に助けを求めている。数十年に及ぶ付き合いの中でも初めてのことで、ガラは咄嗟にスマートフォンに手を掛けた。「911」をコールしようとした時、その手を制止したのはあろうことかハイド自身だった。
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    LastQed

    DONEガラハイ🐺🦇【As you wish, Mr.Hyde.】
    バレンタインのお話🍫Xにてupしたもの。記録用にこちらにも載せておきます✍️
    【As you wish, Mr.Hyde.】 今にも底の抜けそうな紙袋が二つ、どさりとフローリングに下ろされる。溢れんばかりの荷物、そして良く見知った来訪者を交互に見比べて人狼が尋ねた。

    「なんだこれ」
    「かわい子ちゃんたちからの贈り物だ。毎年この時期事務所に届く。……無碍にも出来ないからな、いくつかはこうして持ち帰るんだ」
    「マジかよ……これ全部か……?」

     愕然とする人狼を横目に、ハイドは手が痺れたと笑うだけだった。今日は二月十四日、いわゆるバレンタインデー。氏に言わせれば、これでも送られてきた段ボールの大半を事務所に置いてきたのだという。

    「さすがは天下のハイド様だ……」
    「まあ、悪い気はしない」

     ソファに腰を下ろし、スリッパを蹴飛ばしてしまうと吸血鬼はくじ引きのように紙袋へと腕を突っ込んだ。無作為に取り出したファンレター。封を開き便箋を取り出すと、丁寧にしたためられた文字の列をなぞった。一通り目を通した後で再び腕が伸ばされる。次にハイドが掴み取ったのは厚みのある化粧箱だった。リボンを解けば、中には宝石にも見紛うチョコレートが敷き詰められていた。どれにしようかと迷う指先。気まぐれに選んだ一つを口の中に放り込んだ時、ガラがおもむろに通勤カバンを漁り始めた。
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    DOODLEディスガイア4に今更ハマりました。フェンリッヒとヴァルバトーゼ閣下(フェンヴァル?執事閣下?界隈ではどう呼称しているのでしょうか)に気持ちが爆発したため、書き散らしました。【悪魔に愛はあるのか】


    口の中、歯の一本一本を舌でなぞる。舌と舌とを絡ませ、音を立てて吸ってやる。主人を、犯している?まさか。丁寧に、陶器に触れるようぬるり舌を這わせてゆく。舌先が鋭い犬歯にあたり、吸血鬼たる証に触れたようにも思えたが、この牙が人間の血を吸うことはもうないのだろう。その悲しいまでに頑なな意思が自分には変えようのないものだと思うと、歯痒く、虚しかった。

    律儀に瞼を閉じ口付けを受け入れているのは、我が主人、ヴァルバトーゼ様。暴君の名を魔界中に轟かせたそのお方だ。400年前の出来事をきっかけに魔力を失い姿形は少々退行してしまわれたが、誇り高い魂はあの頃のまま、その胸の杭のうちに秘められている。
    そんな主人と、執事として忠誠を誓った俺はいつからか、就寝前に「戯れ」るようになっていた。
    最初は眠る前の挨拶と称して手の甲に口付けを落とす程度のものであったはずだが、なし崩し的に唇と唇が触れ合うところまで漕ぎ着けた。そこまでは、我ながら惚れ惚れするほどのスピード感だったのだが。
    ……その「戯れ」がかれこれ幾月進展しないことには苦笑する他ない。月光の牙とまで呼ばれたこの俺が一体何を 3613

    LastQed

    Deep Desire【悪魔に愛はあるのか】の後日談として書きました。当社比アダルティーかもしれません。煩悩まみれの内容で上げるかどうか悩むレベルの書き散らしですが、今なら除夜の鐘の音に搔き消えるかなと駆け込みで年末に上げました。お許しください…【後日談】


    「やめ……フェンリッヒ……!」

    閣下との「戯れ」はようやくキスからもう一歩踏み込んだ。

    「腰が揺れていますよ、閣下」
    「そんなことな……いっ」
    胸の頂きを優しく爪で弾いてやると、我慢するような悩ましげな吐息でシーツが握りしめられる。与えられる快感から逃れようと身を捩る姿はいじらしく、つい加虐心が湧き上がってしまう。

    主人と従者。ただそれだけであったはずの俺たちが、少しずつほつれ、結ばれる先を探して今、ベッドの上にいる。地獄に蜘蛛の糸が垂れる、そんな奇跡は起こり得るのだ。
    俺がどれだけこの時を待ち望んでいたことか。恐れながら、閣下、目の前に垂れたこの細糸、掴ませていただきます。

    「閣下は服の上から、がお好きですよね。着ている方がいけない感じがしますか?それとも擦れ方が良いのでしょうか」
    衣服の上から触れると肌と衣服の摩擦が響くらしい。これまで幾度か軽く触れ合ってきたが素肌に直接、よりも着衣のまま身体に触れる方が反応が良い。胸の杭だけはじかに指でなぞって触れて、恍惚に浸る。

    いつも気丈に振る舞うこの人が夜の帳に腰を揺らして快感を逃がそうとしている。その姿はあまりに 2129

    LastQed

    DONEディスガイア4で悪魔一行が祈りに対して抵抗感を露わにしたのが好きでした。そんな彼らがもし次に祈るとしたら?を煮詰めた書き散らしです。【地獄の祈り子たち】



    人間界には祈る習慣があるという。どうしようもない時、どうすれば良いか分からぬ時。人は祈り、神に助けを乞うそうだ。実に愚かしいことだと思う。頭を垂れれば、手を伸ばせば、きっと苦しみから助け出してくれる、そんな甘い考えが人間共にはお似合いだ。
    此処は、魔界。魔神や邪神はいても救いの手を差し伸べる神はいない。そもそも祈る等という行為が悪魔には馴染まない。この暗く澱んだ場所で信じられるのは自分自身だけだと、長らくそう思ってきた。

    「お前には祈りと願いの違いが分かるか?」

    魔界全土でも最も過酷な環境を指す場所、地獄──罪を犯した人間たちがプリニーとして生まれ変わり、その罪を濯ぐために堕とされる地の底。魔の者すら好んで近付くことはないこのどん底で、吸血鬼は気まぐれに問うた。

    「お言葉ですが、閣下、突然いかがされましたか」

    また始まってしまった。そう思った。かすかに胃痛の予感がし、憂う。
    我が主人、ヴァルバトーゼ閣下は悪魔らしからぬ発言で事あるごとに俺を驚かせてきた。思えば、信頼、絆、仲間……悪魔の常識を逸した言葉の数々をこの人は進んで発してきたものだ。 5897

    LastQed

    CAN’T MAKE十字架、聖水、日の光……挙げればきりのない吸血鬼の弱点の話。おまけ程度のヴァルアル要素があります。【吸血鬼様の弱点】



    「吸血鬼って弱点多過ぎない?」
    「ぶち殺すぞ小娘」

    爽やかな朝。こともなげに物騒な会話が繰り広げられる、此処は地獄。魔界の地の底、一画だ。灼熱の溶岩に埋めつくされたこの場所にも朝は降るもので、時空ゲートからはささやかに朝の日が射し込んでいる。

    「十字架、聖水、日の光辺りは定番よね。っていうか聖水って何なのかしら」
    「デスコも、ラスボスとして弱点対策は怠れないのデス!」
    「聞こえなかったか。もう一度言う、ぶち殺すぞアホ共」

    吸血鬼の主人を敬愛する狼男、フェンリッヒがすごみ、指の関節を鳴らしてようやくフーカ、デスコの両名は静かになった。デスコは怯え、涙目で姉の後ろに隠れている。あやしい触手はしなしなと元気がない。ラスボスを名乗るにはまだ修行が足りていないようだ。

    「プリニーもどきの分際で何様だお前は。ヴァル様への不敬罪で追放するぞ」

    地獄にすら居られないとなると、一体何処を彷徨うことになるんだろうなあ?ニタリ笑う狼男の顔には苛立ちの色が滲んでいる。しかし最早馴れたものと、少女は臆せず言い返した。

    「違うってば!むしろ逆よ、逆!私ですら知ってる吸血鬼の弱 3923

    LastQed

    CAN’T MAKE11/5新月🌑執事閣下🐺🦇【俺の名を、呼んで】今、貴方を否定する。
    「呼んで、俺の名を」の後日談。お時間が許せば前作から是非どうぞ→https://poipiku.com/1651141/5443404.html
    俺の名を、呼んで【俺の名を、呼んで】



     教会には、足音だけが響いている。祭壇の上部、天井近くのステンドグラスから柔い光が射し込んで、聖女の肌の上ではじけた。神の教えを広め、天と民とを繋ごうとする者、聖職者。その足元にも、ささやかな光を受けて影は伸びる。
     しんと凍えそうな静寂の中、彼女はひとり祭壇へと向き合っていた。燭台に火を分け、使い古しの聖書を広げるが、これは決してルーチンなどではない。毎日新しい気持ちで、彼女は祈る。故に天も、祝福を与えるのだろう。穢れない彼女はいつか天使にだってなるかもしれない。真っ直ぐな姿勢にはそんな予感すら覚える眩しさがあった。

     静けさを乱す、木の軋む音。聖女ははたと振り返る。開け放っていた出入口の扉がひとりでに閉まるのを彼女は遠目に見つめた。風のせいだろうかと首を傾げれば、手元で灯したばかりの蝋燭の火が揺らめき、何者かの息によって吹き消える。不可思議な現象に、彼女の動作と思考、双方が同時に止まる。奏者不在のパイプオルガンがゆっくりと讃美歌を奏でればいよいよ不穏な気配が立ち込める。神聖なはずの教会が、邪悪に染まっていく。
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