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    last_of_QED

    @last_of_QED

    ディスガイアを好むしがない愛マニア。執事閣下、閣下執事、ヴァルアルやCP無しの地獄話まで節操なく執筆します。デ初代〜7までプレイ済。
    最近ハマったコーヒートーク(ガラハイ)のお話しもちょびっと載せてます。

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    last_of_QED

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    あんまりCP要素はないですが暴君様と執事の話です【暗殺者より愛を込めて】リヒがお酒でべろべろになります🥃全年齢🆗

    #ディスガイア4
    disgaea4

    【暗殺者より愛を込めて】 鱗粉が舞う。モスマンが荷を置くや否や逃げるように飛び去っていく。
     ヴァルバトーゼ宛に時折届けられる小包み。中身のほとんどは貢ぎ物と銘打った嫌がらせの品──具体的にはニンニクや鏡、ロザリオの類いであるが、中にはごく稀に真なる「貢ぎ物」も紛れている。
    「拝啓 ヴァルバトーゼ様」
     今回届けられた荷物のひとつには手紙の添えられたワインボトルがあった。フェンリッヒには酒の良さが分からない。アルコール特有の匂いはとかく鼻につくし、何より「気持ち良く酔う」という感覚が理解出来なかった。火照って頭が働かなくなり、じきに気分が悪くなるのが関の山である。
     だが、酒の中には極めて価値のあるものがある。この世には酒を好む者がごまんといて、味の良さ、ボトルの装飾、希少性その他次第では目が飛び出るような高値で取引されることもあるのだ。
     それを知っているフェンリッヒの目を引いたのが古い年代の赤のワインボトルだった。手に取り、ぼけたラベルの文字をなんとか読み取って驚く。酒を知らぬ者ですら名前くらいは聞いたことのある、それくらいの上物のワインであった。これはひとえに主が畏れられ、敬われるからに他ならない。少しは分かっている者もいるではないか、とシモベは得意気に鼻を鳴らした。
     瓶口は魔力をきつく込めたコルクで塞がれており、製造から数百年の時を経てもコルクおよび中身が劣化することはないという。開栓するにはコルクに込められているだけと同等以上の魔力を込めなければならないが、我が主にかかれば造作もないことだろうとフェンリッヒはひとり頷いた。

    「このまま処分しても良いが……上等な品ではある。一度ヴァルバトーゼ様のお耳に入れておくか」

     フェンリッヒは貢ぎ物の報告をすべく主を探しに部屋を後にした。誰も居なくなった部屋は僅かに静寂を取り戻す。が、それも長くは続かなかった。入れ違いでヴァルバトーゼがやって来て、きょろきょろと室内を見渡した。求める人物の姿が無いと分かりドアノブに手をかけた時、マントから飛び出した眷族、その一匹がテーブルの上に止まり鳴いた。
     何事かと歩み寄れば自分宛の手紙、そして傍には古いワインボトルが置かれている。この後ヴァルバトーゼがとった行動は言うまでもない。棚にしまわれていたソムリエナイフを取り出すと瓶口に宛てがい、易々と栓を抜き、中の液体をグラスに注ぎ、口をつけた。そしてグラスが傾きかけたところで木製の扉が音を立てて乱暴に開く。血相を変えて飛び込んできたシモベが暴君から強引にグラスを引き剥がした。

    「む、お前も飲むか?」
    「……良い報告と悪い報告をいたします。良い報告はこちらがヴァルバトーゼ様に宛てられた申し分無い貢ぎ物であるということです。悪い報告はこのワインには毒が仕込まれているため、お飲みにはならないでいただきたいということです」
    「なに!? 危うく飲んでしまうところだったぞ。さすがはフェンリッヒだ。やはり人狼は鼻がきくのだな」
    「差出人不明の食品を口にするなど不用心にも程があります。ヴァル様クラスの悪魔ともなれば名誉欲しさに首を狙うものは幾百とおりましょう。少しはお立場をご自覚ください」

     いえ、幾百では済まないかもしれませんね、とこれまでに届いては無断で処分してきた小包の数を思い返してフェンリッヒはため息を吐いた。

    「こちらはわたくしが処分しておきま……おっと」

     手元が狂い、ワイングラスが中身を伴って落下する。ガラスが割れた音、それと同時に地鳴りのような音が辺り一面に響き渡った。先程までワインだったはずの何かが急速に蒸発すると共に床が隆起し捲れ上がったのを二人の悪魔はその足元に目の当たりにした。

    「……」
    「ほう」

     残りの酒、そして差出人もろとも処分するための手はずを頭の中でゆっくりと思い巡らせながらフェンリッヒは指を鳴らした。

    「すぐに掃除道具を持って参ります。……決して触ったりなさいませんよう」

     苛々とした面持ちで部屋を出て行ったフェンリッヒ。一方、部屋に取り残されたヴァルバトーゼはシモベの言いつけをよそに早くも食指を動かし始めていた。テーブルの上、小包みの中から今度はウイスキーの瓶を見つけると、蓋を外し、とろけるような琥珀色の液体をそのままにあおった。フェンリッヒが席を外した、僅か一瞬の出来事であった。

    「ヴァル、様、そちら……お飲みに…なられ……??」
    「うむ、美味いな! あまり飲んだ試しのない味だ。樽の中で長い歳月をかけ熟成させたのだろう。どこの魔界の酒だろうか」
    「……」

     顔色(元々血の通わぬ肌である)、呼吸音(この方に心拍はあるのだろうか?)、その他見てとれる限り何の異常もきたしていないヴァルバトーゼ。フェンリッヒはそれを見て、毒が仕込まれていたのか、いなかったのか、どちらか考え、しかし考えるだけ無駄だと気付き、やめた。どちらにせよこの方に毒は効かない。それをフェンリッヒは身をもって知っていたはずだった。それでも心臓はやかましく、彼の動揺を示していた。

    「これでは命がいくつあっても足りません……」
    「何を心配している。俺がそう簡単にくたばると思うのか?」
    「あなた様の命の話をしているのではなく、わたくしの命の話をしているのです」
    「?」
    「……今のは忘れてください」

     首を横に振るフェンリッヒ。その顔には疲れの色が浮かんでいた。

    「分かった、お前が言うなら忘れよう。……ところでフェンリッヒ。お前、酒は飲めるか?」
    「酒ですか? いえ、わたくしは……」

     フェンリッヒの返答よりも先に白手袋の手がウイスキーを注いでいた。テーブルの上にはグラスが二つ。暴君が次に何を言い出すかは火を見るよりも明らかだった。

    「嫌とは言わせんぞ? 毒は入っていないのだ、少し付き合え」

     向けられる真っ直ぐな期待の眼差し。主人の好意を無碍にも出来まいと従者は差し出されるままグラスを受け取った。ただ純粋なアルコールの香が鼻を通る。ヴァルバトーゼの言う通り、確かに毒の混入はなさそうだ。

    「一杯だけですよ」

     二人はグラスを交わし、酒をあおいだ。
     夜がグラスの底に溶けていく。





     暴君ヴァルバトーゼは初めて目にする友の姿に戸惑いを隠せないでいた。あんなにまで恭しかった男が今、酒に酔ってべろべろになり、更には不機嫌を露わにしているのだから当然だ。泥酔するほどの量は勧めていないし飲んでいる様子も見受けられなかったが……とヴァルバトーゼが控え目に隣の席の様子をうかがうと、視線に気付いたフェンリッヒから呂律の怪しい悪態が飛んで来る。

    「大体、毒が効かないってなんなんれすか!? 崖から突き落としても爆発に巻き込んでも死なないってもう……めちゃくちゃですよ……」
    「あ、ああ……それは……気の毒だったな」

     フェンリッヒの背中をさすり、宥める羽目になった暴君は心の中でそっと思う。俺はいつの間にか崖から突き落とされていたし、爆発に巻き込まれていたし、毒を盛られていたらしい。と。

    「わたくしが……どれだけあなた様を想って近付いたのか……ひっく……あなた様のためにいくつの暗殺プランを練り上げたのか……ご存知ないのでしょうけれど」

     水を飲むよう勧めても、フェンリッヒは首を横に振って一向に聞き入れようとしない。酔っ払いは何故か頑なに酒のグラスを握り続け、周りが促しても決して水を飲まないものだ。

    「ヴァル様は何故あの時、素性も知れぬ青二才を受け入れてくださったのです……?」

     狼男は完全に酔っていた。もう、彼を誰にも止められはしなかった。肩を寄せ迫ってくるシモベの勢いにさすがのヴァルバトーゼもたじろいだ。視線を逸らし、どうしたものかと言葉を詰まらせているとフェンリッヒがぽつり呟く。

    「もしわたくしと同じように配下にしてくれと頼む者が出てくれば、あなた様は同じように簡単に受け入れてしまわれますか」

     それはどういう意味だと振り向けば、そこには額を卓に付け、寝息を立て眠る若い人狼の姿があった。

     存外酒に弱いのだな、こいつは。まだ齢1600歳そこそこだと言ったか。それではさしたる酒の経験もあるまい。無理もない。

     恐々と銀の髪を撫でる。無意識なのだろうが尻尾が僅かに揺れ、動いた。

    「安心するが良い。俺に付き従おうなどというもの好き、他にはおるまい」

     友の寝顔を肴に、暴君の夜は更けていく。
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    口の中、歯の一本一本を舌でなぞる。舌と舌とを絡ませ、音を立てて吸ってやる。主人を、犯している?まさか。丁寧に、陶器に触れるようぬるり舌を這わせてゆく。舌先が鋭い犬歯にあたり、吸血鬼たる証に触れたようにも思えたが、この牙が人間の血を吸うことはもうないのだろう。その悲しいまでに頑なな意思が自分には変えようのないものだと思うと、歯痒く、虚しかった。

    律儀に瞼を閉じ口付けを受け入れているのは、我が主人、ヴァルバトーゼ様。暴君の名を魔界中に轟かせたそのお方だ。400年前の出来事をきっかけに魔力を失い姿形は少々退行してしまわれたが、誇り高い魂はあの頃のまま、その胸の杭のうちに秘められている。
    そんな主人と、執事として忠誠を誓った俺はいつからか、就寝前に「戯れ」るようになっていた。
    最初は眠る前の挨拶と称して手の甲に口付けを落とす程度のものであったはずだが、なし崩し的に唇と唇が触れ合うところまで漕ぎ着けた。そこまでは、我ながら惚れ惚れするほどのスピード感だったのだが。
    ……その「戯れ」がかれこれ幾月進展しないことには苦笑する他ない。月光の牙とまで呼ばれたこの俺が一体何を 3613

    last_of_QED

    MOURNING世の中に執事閣下 フェンヴァル ディスガイアの二次創作が増えて欲しい。できればえっちなやつが増えて欲しい。よろしくお願いします。【それは躾か嗜みか】



    この飢えはなんだ、渇きはなんだ。
    どんな魔神を倒しても、どんな報酬を手にしても、何かが足りない。長らくそんな風に感じてきた。
    傭兵として魔界全土を彷徨ったのは、この途方も無い飢餓感を埋めてくれる何かを無意識に捜し求めていたためかもしれないと、今となっては思う。

    そんな記憶の残滓を振り払って、柔い肉に歯を立てる。食い千切って胃に収めることはなくとも、不思議と腹が膨れて行く。飲み込んだ訳でもないのに、聞こえる水音がこの喉を潤して行く。

    あの頃とは違う、確かに満たされて行く感覚にこれは現実だろうかと重い瞼を上げる。そこには俺に組み敷かれるあられもない姿の主人がいて、何処か安堵する。ああ、これは夢泡沫ではなかったと、その存在を確かめるように重ねた手を強く結んだ。

    「も……駄目だフェンリッヒ、おかしく、なる……」
    「ええ、おかしくなってください、閣下」

    甘く囁く低音に、ビクンと跳ねて主人は精を吐き出した。肩で息をするその人の唇は乾いている。乾きを舌で舐めてやり、そのまま噛み付くように唇を重ねた。
    吐精したばかりの下半身に再び指を這わせると、ただそれだけで熱っぽ 4007

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    last_of_QED

    DONEしがない愛マニアである私が原作の奥に想い描いた、ディスガイア4、風祭フーカと父親の話です。銀の弾は怪物を殺せるか?【銀の弾など必要ない】



    白衣が揺れる。頭をかいてデスクに向かうそのくたびれた男に私は恐る恐る声を掛ける。

    「パパ、お家なのにお仕事?」

    男はこちらを振り返りもしない。研究で忙しいのだろうか。それとも、私の声が届いていないのだろうか。
    父親の丸まった背中をじっと見つめる。十数秒後、その背がこわごわと伸び、首だけがわずかにこちらを向く。

    「すまん、何か言ったか?」

    この人はいつもそうだ。母が亡くなってから研究、研究、研究……。母が生きていた頃の記憶はあまりないから、最初からこんな感じだったのかもしれないけれど。それでも幼い娘の呼び掛けにきちんと応じないなんて、やはり父親としてどうかしている。

    「別に……」

    明らかに不満げな私の声に、ようやく彼は腰を上げた。

    「いつもすまんな。仕事が大詰めなんだ」

    パパのお仕事はいつも大詰めじゃない、そう言いたいのをぐっと堪え、代わりに別の問いを投げかける。

    「いつになったらフーカと遊んでくれる?」

    ハハハ、と眉を下げて笑う父は少し疲れているように見えた。すまんなあ、と小さく呟き床に胡座をかく。すまん、それがこの人の口癖だった。よう 3321

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    DOODLE【10/4】ヴァルバトーゼ閣下🦇お誕生日おめでとうございます!仲間たちが見たのはルージュの魔法か、それとも。
    104【104】



     人間の一生は短い。百回も歳を重ねれば、その生涯は終焉を迎える。そして魂は転生し、再び廻る。
     一方、悪魔の一生もそう長くはない。いや、人間と比較すれば寿命そのものは圧倒的に長いはずであるのだが、無秩序混沌を極める魔界においてはうっかり殺されたり、死んでしまうことは珍しくない。暗黒まんじゅうを喉に詰まらせ死んでしまうなんていうのが良い例だ。
     悪魔と言えど一年でも二年でも長く生存するというのはやはりめでたいことではある。それだけの強さを持っているか……魔界で生き残る上で最重要とも言える悪運を持っていることの証明に他ならないのだから。

     それ故に、小さい子どもよりむしろ、大人になってからこそ盛大に誕生日パーティーを開く悪魔が魔界には一定数いる。付き合いのある各界魔王たちを豪奢な誕生会にてもてなし、「祝いの品」を贈らせる。贈答品や態度が気に食わなければ首を刎ねるか刎ねられるかの決闘が繰り広げられ……言わば己が力の誇示のため、魔界の大人たちのお誕生会は絢爛豪華に催されるのだ。
    3272

    last_of_QED

    DONER18 執事閣下🐺🦇「うっかり相手の名前を間違えてお仕置きプレイされる主従ください🐺🦇」という有難いご命令に恐れ多くもお応えしました。謹んでお詫び申し上げます。後日談はこちら→ https://poipiku.com/1651141/5571351.html
    呼んで、俺の名を【呼んで、俺の名を】



     抱き抱えた主人を起こさぬよう、寝床の棺へとそっと降ろしてやる。その身はやはり成人男性としては異常に軽く、精神的にこたえるものがある。
     深夜の地獄はしんと暗く、冷たい。人間共の思い描く地獄そのものを思わせるほど熱気に溢れ、皮膚が爛れてしまうような日中の灼熱とは打って変わって、夜は凍えるような寒さが襲う。悪魔であれ、地獄の夜は心細い。此処は一人寝には寒過ぎる。

     棺桶の中で寝息を立てるのは、我が主ヴァルバトーゼ様。俺が仕えるのは唯一、このお方だけ。それを心に決めた美しい満月の夜からつゆも変わらず、いつ何時も付き従った。
     あれから、早四百年が経とうとしている。その間、語り切れぬほどの出来事が俺たちには降り注いだが、こうして何とか魔界の片隅で生きながらえている。生きてさえいれば、幾らでも挽回の余地はある。俺と主は、その時を既に見据えていた。堕落し切った政腐を乗っ取ってやろうというのだ。
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