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    last_of_QED

    @last_of_QED

    ディスガイアを好むしがない愛マニア。執事閣下、閣下執事、ヴァルアルやCP無しの地獄話まで節操なく執筆します。デ初代〜7までプレイ済。
    最近ハマったコーヒートーク(ガラハイ)のお話しもちょびっと載せてます。

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    last_of_QED

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    ガラハイですがハイドがバリスタへ、ガラさんとは別の特別な感情を抱いていることを示唆する表現があります。微妙な後味かもしれません。

    #コーヒートーク
    coffeeTalk
    #ガラハイ

    【瓶底の澱】 玄関先、インターホンが鳴っている。何のことはない呼び鈴がいやに鼓膜を揺らした。宅配便は頼んでいない。もちろん、ピザも。となると来訪者の心当たりはただ一人しかいなかった。
     急かすかのよう続け様にベルが鳴る。仕方なく重い体をベッドから起こす。重力に抗えば頭蓋の内が痛んだ。体を引きずり何とか立ち上がって控えめにドアを開ければそこには予想通りの人物が立っていた。
     俺はそっとドアを閉じる。しかし無礼な訪問者は扉が閉まり切るより先に僅かな隙間に靴の先を差し込み、阻んだ。

    「おい! 閉めるな」
    「なんで来た……」
    「お前がそんな状態だからだ」

     それなのにどういうつもりだと言いたげな赤い瞳が鋭くこちらを睨んだ。それは少なくとも病人に向けられるべき視線ではなかった。

    「大人しく私に看病されろ」
    「自分のことは自分が一番分かる……俺だって医療従事者の端くれさ、大丈夫だ」

     ハイドを自宅に招き入れる気はなかった。今自分が患っているのはここ最近の流行病だ。医療事務として病院に勤務している以上、罹患のリスクは高いことも分かっていた。厄介なことにこのウイルスは感染力が高く、簡単に人にうつってパンデミックを起こす。一般の風邪よりも深刻な症状が出ることもあるらしい。しかし不必要に他者と接触せず、きちんと養生すればどうということはないこともこの間の職場での患者対応、そして日々の報道から分かってきていた。

    「おい、何を強がっている……こんなことで体力を使っている場合じゃないだろう。それとも私の看病ではご不満か?」
    「……確かに、お前に世話を焼かれるのはちょっと不本意だな」
    「なんだと」

     押し問答の末、痺れを切らしたハイドは遂に諦めたようで

    「強情な奴め……」

     捨て台詞と共に玄関先から立ち去った。彼の気配が完全に消えたのを確認してからそろりと戸を開けば、そこにはボトル飲料とレトルト食品、瓶詰めのハニージンジャーの詰め込まれた紙袋が置かれていた。
     頭を掻く。ハイドはここしばらく撮影続きで忙しいと言っていた。下手に部屋に上げてこの厄介なウイルスを移しでもしたら……

    「お前さんを待ってる人たちに怒られちまうだろ」

     ずっしりと重い紙袋を抱え上げ、自宅に引き入れる。その重量にハイドの想いを見たような気がして、狼男はひとりはにかんだ。喉の奥が苦く、痛い。体はだるくて堪らない。それでも火照った頬に外気がひんやりと心地良かった。





     通りに不機嫌な足音が響いている。一人の吸血鬼が風を切り、とあるアパートから遠ざかって行く。

    「あとで泣いて連絡を寄越したって知らないからな」

     右手に握ったままのスマートフォンが震えることは無い。今日の仕事の予定は無理を通してグローリーにキャンセルさせてしまった。スーパーモデルの一日を無駄にして、高くつくぞ、と胸の内で悪態をつく。
     今回の流行病は体に堪えるともっぱらの噂だ。トモダチルの投稿を見て遂にガラも罹患したのだと知った。独り者の、ましてや遠慮がちな性格のあの男は誰にも頼ることなく床に伏せていることだろうと踏んで押し掛けたのだ。それなのに、結局追い返されてこのザマである。
     慣れないお節介だったと分かっている。相手が……ガラが求めていないことを無理に押し付ける気だって本当はなかった。それでも自分をあんな風にさせたのは、何故だろうか。今こうしてムキになっているのは。

     視界に、転び、大声を上げて泣く幼児が目に入る。泣きながら母をしきりに呼び、痛いと訴えている。駆け寄った母親と思しき人物は子を抱き抱え、甲斐甲斐しくあやした。

     ガラは高潔な男だ。その高潔さゆえに肝心な時に私には何もさせてくれない。彼は子どものように声を上げることも、誰かに抱き締められるのを待つことも、ない。

     遥か先の未来、いつか来る最期の時でさえあの男はこんな調子なのではないか。

     仄暗い未来予想が一瞬、しかし確かに私の胸を支配した。そうだ、きっと私は

    「ねえ、あれ、ハイドじゃない?」
    「かっこいい〜! サインもらえないかな!?」

     自身の名を呼ぶ声で我に返る。帽子を目深に被り、サングラスをしていてもなお気付かれるものかと感嘆する。色めき立つファンの方を見やり、微笑んで見せると黄色い声がわっと上がる。
     パーキングメーターに停めていた愛車に乗り込み、柔くアクセルを踏んだ。車を発進させてから考える。

     何処へ向かおうか。

     ふと、この車を買った日のことを思い出す。この車上で何が行われたかを。そういった"昔馴染みの友人たち"に連絡を入れてみることは、この行き場の無い気持ちを手っ取り早くいなす方法に思えた。けれど。
     あの時、何を勘違いしたのかお姫様抱っこで救い出してくれた人狼は。鬼の形相で私を諭したガラという男は。やはり今、熱にうなされているのだ。

     私は首を振るとコーヒートークの方角へと車を走らせた。





    「……と、言うわけさ。これを飲み終えたら友人のところへ向かってしまおうと思っている」

     カウンターの上のコーヒーカップ。その中身が1/3ほどになるのを見てとって、バリスタは常連客へひとつの提案を口にする。

    「ご迷惑でなければ僕から一杯、ご馳走させていただいても?」
    「まさか私を引き止めようというのか? 先を急ぎたいところだが……親愛なるバリスタの厚意とあっては無碍には出来まい」

     くっくと揶揄うように笑うハイド。ガラのアパートを後にした彼は同じくシアトルの街の一画に開く喫茶店、コーヒートークへと訪れていた。狭い店内にはハイドと店主の二人しかいない。
     ハイドの了承を受けたバリスタはじっくりとコーヒーを抽出するとカップの上へ慎重にラテアートを施していく。そして「良い出来だ」と面前の客へ一杯のコーヒーを差し出した。
     一方で、提供されたカップを見るなり吸血鬼は露骨に表情を歪め、怪訝をあらわにした。

    「バリスタ……私の話を聞いていたか?」
    「聞いていたとも。だからこその一杯さ」

     提供されたのはガラハッド。同じくこの店の常連であるガラが特に好んで飲んでいる。人狼の怒りを抑えるジンジャーの風味が特徴的な一杯だ。

    「ハイドさん。お友達のところへ向かわずにここに立ち寄ってくれたのはどうしてだい」
    「……私はただ、喉を潤したくて来ただけだ」
    「あんな話をすれば僕が引き止めることなんか安易に想像出来ただろう。それでもあなたはここに来て、話をしてくれた」

     バリスタはにっこりとカウンターの客にはにかんだ。ハイドはといえば浮かない顔で手元のカップを見つめている。

    「少なくとも今のあなたを……そんな顔のままでは帰せなかったよ。通行人に目撃されてあのハイド氏を心底がっかりさせた喫茶店、なんて評されたらいよいよこの店は立ち行かなくなるからね」

     そう笑って店主はウインクした。吸血鬼は言葉を返さない。

    「分かっているんでしょう。ガラさんがあなたを無碍にしたわけではないことも、あなたがガラさんのことを自分で思う以上に心配していることも。そしてだからこそ、寂しかったことも」
    「バリスタ、君はいつも正しい」

     吸血鬼が沈黙を破る。

    「だが、正しさが全てではないのさ」

     細くしなやかな指はティースプーンを手に取るとカップに施された模様を割き、ぐちゃぐちゃに掻き混ぜた。

    「気が変わった。友人のところへ遊びに行くのはよそう。代わりに」

     吸血鬼の美しい赤い瞳が一瞬、ワインボトルの底の澱(おり)のような昏さを纏って濁った。

    「もう少し、私に付き合ってくれ。……首を突っ込んだ君が悪いんだぞ、バリスタ」

     使い古されたコーヒーマシンの音がシアトルの街に響いていく。
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    last_of_QED

    DOODLEディスガイア4に今更ハマりました。フェンリッヒとヴァルバトーゼ閣下(フェンヴァル?執事閣下?界隈ではどう呼称しているのでしょうか)に気持ちが爆発したため、書き散らしました。【悪魔に愛はあるのか】


    口の中、歯の一本一本を舌でなぞる。舌と舌とを絡ませ、音を立てて吸ってやる。主人を、犯している?まさか。丁寧に、陶器に触れるようぬるり舌を這わせてゆく。舌先が鋭い犬歯にあたり、吸血鬼たる証に触れたようにも思えたが、この牙が人間の血を吸うことはもうないのだろう。その悲しいまでに頑なな意思が自分には変えようのないものだと思うと、歯痒く、虚しかった。

    律儀に瞼を閉じ口付けを受け入れているのは、我が主人、ヴァルバトーゼ様。暴君の名を魔界中に轟かせたそのお方だ。400年前の出来事をきっかけに魔力を失い姿形は少々退行してしまわれたが、誇り高い魂はあの頃のまま、その胸の杭のうちに秘められている。
    そんな主人と、執事として忠誠を誓った俺はいつからか、就寝前に「戯れ」るようになっていた。
    最初は眠る前の挨拶と称して手の甲に口付けを落とす程度のものであったはずだが、なし崩し的に唇と唇が触れ合うところまで漕ぎ着けた。そこまでは、我ながら惚れ惚れするほどのスピード感だったのだが。
    ……その「戯れ」がかれこれ幾月進展しないことには苦笑する他ない。月光の牙とまで呼ばれたこの俺が一体何を 3613

    last_of_QED

    Deep Desire【悪魔に愛はあるのか】の後日談として書きました。当社比アダルティーかもしれません。煩悩まみれの内容で上げるかどうか悩むレベルの書き散らしですが、今なら除夜の鐘の音に搔き消えるかなと駆け込みで年末に上げました。お許しください…【後日談】


    「やめ……フェンリッヒ……!」

    閣下との「戯れ」はようやくキスからもう一歩踏み込んだ。

    「腰が揺れていますよ、閣下」
    「そんなことな……いっ」
    胸の頂きを優しく爪で弾いてやると、我慢するような悩ましげな吐息でシーツが握りしめられる。与えられる快感から逃れようと身を捩る姿はいじらしく、つい加虐心が湧き上がってしまう。

    主人と従者。ただそれだけであったはずの俺たちが、少しずつほつれ、結ばれる先を探して今、ベッドの上にいる。地獄に蜘蛛の糸が垂れる、そんな奇跡は起こり得るのだ。
    俺がどれだけこの時を待ち望んでいたことか。恐れながら、閣下、目の前に垂れたこの細糸、掴ませていただきます。

    「閣下は服の上から、がお好きですよね。着ている方がいけない感じがしますか?それとも擦れ方が良いのでしょうか」
    衣服の上から触れると肌と衣服の摩擦が響くらしい。これまで幾度か軽く触れ合ってきたが素肌に直接、よりも着衣のまま身体に触れる方が反応が良い。胸の杭だけはじかに指でなぞって触れて、恍惚に浸る。

    いつも気丈に振る舞うこの人が夜の帳に腰を揺らして快感を逃がそうとしている。その姿はあまりに 2129

    last_of_QED

    CAN’T MAKE十字架、聖水、日の光……挙げればきりのない吸血鬼の弱点の話。おまけ程度のヴァルアル要素があります。【吸血鬼様の弱点】



    「吸血鬼って弱点多過ぎない?」
    「ぶち殺すぞ小娘」

    爽やかな朝。こともなげに物騒な会話が繰り広げられる、此処は地獄。魔界の地の底、一画だ。灼熱の溶岩に埋めつくされたこの場所にも朝は降るもので、時空ゲートからはささやかに朝の日が射し込んでいる。

    「十字架、聖水、日の光辺りは定番よね。っていうか聖水って何なのかしら」
    「デスコも、ラスボスとして弱点対策は怠れないのデス!」
    「聞こえなかったか。もう一度言う、ぶち殺すぞアホ共」

    吸血鬼の主人を敬愛する狼男、フェンリッヒがすごみ、指の関節を鳴らしてようやくフーカ、デスコの両名は静かになった。デスコは怯え、涙目で姉の後ろに隠れている。あやしい触手はしなしなと元気がない。ラスボスを名乗るにはまだ修行が足りていないようだ。

    「プリニーもどきの分際で何様だお前は。ヴァル様への不敬罪で追放するぞ」

    地獄にすら居られないとなると、一体何処を彷徨うことになるんだろうなあ?ニタリ笑う狼男の顔には苛立ちの色が滲んでいる。しかし最早馴れたものと、少女は臆せず言い返した。

    「違うってば!むしろ逆よ、逆!私ですら知ってる吸血鬼の弱 3923

    last_of_QED

    DOODLE主人に危機感を持って貰うべく様々なお願いを仕掛けていくフェンリッヒ。けれど徐々にその「お願い」はエスカレートしていって……?!という誰もが妄想した執事閣下のアホエロギャグ話を書き散らしました。【信心、イワシの頭へ】



    「ヴァルバトーゼ閣下〜 魔界上層区で暴動ッス! 俺たちの力じゃ止められないッス!」
    「そうか、俺が出よう」

    「ヴァルっち! こないだの赤いプリニーの皮の件だけど……」
    「フム、仕方あるまいな」

    何でもない昼下がり、地獄の執務室には次々と使い魔たちが訪れては部屋の主へ相談をしていく。主人はそれに耳を傾け指示を出し、あるいは言い分を認め、帰らせていく。
    地獄の教育係、ヴァルバトーゼ。自由気ままな悪魔たちを良く統率し、魔界最果ての秩序を保っている。それは一重に彼の人柄、彼の在り方あってのものだろう。通常悪魔には持ち得ない人徳のようなものがこの悪魔(ひと)にはあった。

    これが人間界ならば立派なもので、一目置かれる対象となっただろう。しかし此処は魔界、主人は悪魔なのだ。少々横暴であるぐらいでも良いと言うのにこの人は逆を征っている。プリニーや地獄の物好きな住人たちからの信頼はすこぶる厚いが、閣下のことを深く知らない悪魔たちは奇異の目で見ているようだった。

    そう、歯に衣着せぬ言い方をしてしまえば、我が主人ヴァルバトーゼ様は聞き分けが良過ぎた。あくまでも悪魔なので 7025