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    last_of_QED

    @LastQed

    ディスガイアを好むしがない愛マニア。執事閣下、閣下執事、ヴァルアルやCP無しの地獄話まで節操なく執筆します。デ初代〜7までプレイ済。
    最近ハマったコーヒートーク(ガラハイ)のお話しもちょびっと載せてます。

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    last_of_QED

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    ガラハイ🐺🦇【眠らぬ街】
    雇用主時代、モデルを始めたばかりのハイドがLAでナンパに遭う話。気のいい奴ですがモブが出てきます(?)
    Xにてupしたもの。記録用にこちらにも載せておきます✍️

    #ガラハイ

    【眠らぬ街】「こんばんは! 飲み会帰り?」

     ロサンゼルス、ユニオンステーション。終電間際とあって構内は人でごった返している。ただでさえ煩わしく思える喧騒の中、無遠慮に顔を覗き込まれる不快感。視線だけ遣れば何者かが熱心に話し掛けてくる。ハイドの視界、その端に映ったのは一人の若い男だった。

    「飲み足りないって顔してる。良かったらこの後一緒にどう?」

     ナンパか、と吸血鬼は辟易する。と、同時に、この若造は人間で、だとすればせいぜい20代半ばだろうと静かに見定めた。永遠にも等しい寿命を持つヴァンパイア族からすれば、子か、下手をすれば孫の世代だ。男は器用に歩幅を合わせ、斜め後ろをついて来る。いつもであれば無視を決め込むところだが、若い彼の思考があまりに明け透けで、少しからかってやろうと吸血鬼は口角を上げた。

    「そうだな。どこで飲み直そうか考えていた」

     若者はギクリとし、目を泳がせた。彼を動揺させたのは吸血鬼の鋭い牙ではなく──発された、その声色によるものだった。次の一言をいつまでも言い淀む口元は、ハイドを女性だと思い込み声を掛けて来たことを物語る。間の抜けた表情を満足げに眺め、吸血鬼は肩の下まである髪を指先に絡ませた。

     ハイドは最近始めたモデル業の都合で髪を伸ばしている最中だった。午後、バーに立ち寄る前まではまさにモデル契約したブランドとの打ち合わせに出席していた。ブランドイメージを考慮しユニセックスな服装を選んでいたことも相まって、今こうして勘違いを助長させる結果となった。ハイドは足を止め、初めてその人物と視線を合わせた。

    「私はこの通り男だが……分かっていて声を掛けたのか? それともなにか、勘違いさせてしまったかな?」
    「マジかよ、女の子だとばかり……いや、気を悪くさせたらごめん」
    「……君、年は幾つだ?」
    「年? 23だけど」

     素直に詫び、そしてこちらの質問に応じた青年の姿を改めて目に入れる。ワックスで髪先を遊ばせている。童顔で、背はハイドよりも少し高かった。着こなしている、若者らしいファストファッションにはある種の羨ましさを覚えた。そして上から下まで視認して、思う。これはとって喰うにしても若過ぎる。

    「……思うに、私では性別も、歳も、君の狙いからは外れている。もっと相応しい相手を見つけると良い」

     この街には人がわんさかいるのだから、と群衆を親指でさして見せた。週末だ、ここが駄目でもクラブ街まで足を延ばせば今夜の相手くらいは見つかるだろうといなせば、もう、彼はハイドの後を追うことはしなかった。ただ一歩、また一歩と遠ざかるレースアップの背に向けて、青年は雑踏の中、衝動的に呼び掛けていた。

    「キレーなお兄さん!」

     調子はやはり軽薄だった。だが同時に、そこには嘘偽りもまた、無い。

    「気をつけて帰って! 良い夜を!」

     振り返ってしまおうか、ハイドは悩んだ。
     振られて憤るでもなく、吸血鬼を、それも、君の何倍もの時間を生きているこの私を。君は心配しようというのか。
     今ならこの青年と飲み直しても良いと思った。彼は同性愛者ではないだろうがyesと言わせる自信があった。教え込んでその先を楽しむのも面白そうだと思った。
     しかし、吸血鬼は思い留まった。ついぞ振り返ることはない。代わりに、彼の足先はとある場所を目指す。

    「ああ、君もな」

     そろそろ、口うるさいボディーガードが今晩泊まるホテルのロビーで待ち構えている頃合いだろう。以前、遊びが過ぎて激怒した彼に無理矢理取り決めさせられた「門限」には僅かに間に合いそうにない。
     ……が、きちんと帰ってくるだけいいだろう。そう、上機嫌で笑うと、吸血鬼は約束のホテルへとほんの少しだけ、急いだ。
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    DOODLEガラハイ🐺🦇【stand up!】
    お題「靴擦れ」で書きました。ハイドがストーカーに刺された過去を捏造しています(!?)のでご注意ください。

    ガラさんとハイドには、互いの痛みを和らげてくれる、一歩を踏み出すきっかけになってくれる…そんな関係にあってほしいです。
    【stand up】「ガラ、休憩だ」

     背後から名を呼ばれ、狼男は足を止めた。気配が背中まで迫って来るや否や、声の主はウンザリだとばかり、息を吐く。

    「休憩って……おれたち、さっきまでコーヒートークに居たんだよな?」

     両名は確かに五分前まで馴染みの喫茶店で寛いでいた。ガラハッドとゾボを頼み、バリスタ、それから偶然居合わせたジョルジと街の噂や騒動について会話を交わし別れたばかりだ。にも関わらず再び休憩を所望するこの友人をガラは訝しんだ。傾き始めた陽のせいかハイドの表情は翳り、どこか居心地が悪そうに見えた。

    「具合でも悪いのか?」
    「……ああ、もう一歩も歩けそうにない。助けてくれ」

     かつて、オークに集団で殴られようが、ストーカーに刺されようが、皮肉を吐いて飄々としていた男が今、明確に助けを求めている。数十年に及ぶ付き合いの中でも初めてのことで、ガラは咄嗟にスマートフォンに手を掛けた。「911」をコールしようとした時、その手を制止したのはあろうことかハイド自身だった。
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    DONEガラハイ🐺🦇【As you wish, Mr.Hyde.】
    バレンタインのお話🍫Xにてupしたもの。記録用にこちらにも載せておきます✍️
    【As you wish, Mr.Hyde.】 今にも底の抜けそうな紙袋が二つ、どさりとフローリングに下ろされる。溢れんばかりの荷物、そして良く見知った来訪者を交互に見比べて人狼が尋ねた。

    「なんだこれ」
    「かわい子ちゃんたちからの贈り物だ。毎年この時期事務所に届く。……無碍にも出来ないからな、いくつかはこうして持ち帰るんだ」
    「マジかよ……これ全部か……?」

     愕然とする人狼を横目に、ハイドは手が痺れたと笑うだけだった。今日は二月十四日、いわゆるバレンタインデー。氏に言わせれば、これでも送られてきた段ボールの大半を事務所に置いてきたのだという。

    「さすがは天下のハイド様だ……」
    「まあ、悪い気はしない」

     ソファに腰を下ろし、スリッパを蹴飛ばしてしまうと吸血鬼はくじ引きのように紙袋へと腕を突っ込んだ。無作為に取り出したファンレター。封を開き便箋を取り出すと、丁寧にしたためられた文字の列をなぞった。一通り目を通した後で再び腕が伸ばされる。次にハイドが掴み取ったのは厚みのある化粧箱だった。リボンを解けば、中には宝石にも見紛うチョコレートが敷き詰められていた。どれにしようかと迷う指先。気まぐれに選んだ一つを口の中に放り込んだ時、ガラがおもむろに通勤カバンを漁り始めた。
    1853

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    DOODLEディスガイア4に今更ハマりました。フェンリッヒとヴァルバトーゼ閣下(フェンヴァル?執事閣下?界隈ではどう呼称しているのでしょうか)に気持ちが爆発したため、書き散らしました。【悪魔に愛はあるのか】


    口の中、歯の一本一本を舌でなぞる。舌と舌とを絡ませ、音を立てて吸ってやる。主人を、犯している?まさか。丁寧に、陶器に触れるようぬるり舌を這わせてゆく。舌先が鋭い犬歯にあたり、吸血鬼たる証に触れたようにも思えたが、この牙が人間の血を吸うことはもうないのだろう。その悲しいまでに頑なな意思が自分には変えようのないものだと思うと、歯痒く、虚しかった。

    律儀に瞼を閉じ口付けを受け入れているのは、我が主人、ヴァルバトーゼ様。暴君の名を魔界中に轟かせたそのお方だ。400年前の出来事をきっかけに魔力を失い姿形は少々退行してしまわれたが、誇り高い魂はあの頃のまま、その胸の杭のうちに秘められている。
    そんな主人と、執事として忠誠を誓った俺はいつからか、就寝前に「戯れ」るようになっていた。
    最初は眠る前の挨拶と称して手の甲に口付けを落とす程度のものであったはずだが、なし崩し的に唇と唇が触れ合うところまで漕ぎ着けた。そこまでは、我ながら惚れ惚れするほどのスピード感だったのだが。
    ……その「戯れ」がかれこれ幾月進展しないことには苦笑する他ない。月光の牙とまで呼ばれたこの俺が一体何を 3613

    last_of_QED

    DONEディスガイア4で悪魔一行が祈りに対して抵抗感を露わにしたのが好きでした。そんな彼らがもし次に祈るとしたら?を煮詰めた書き散らしです。【地獄の祈り子たち】



    人間界には祈る習慣があるという。どうしようもない時、どうすれば良いか分からぬ時。人は祈り、神に助けを乞うそうだ。実に愚かしいことだと思う。頭を垂れれば、手を伸ばせば、きっと苦しみから助け出してくれる、そんな甘い考えが人間共にはお似合いだ。
    此処は、魔界。魔神や邪神はいても救いの手を差し伸べる神はいない。そもそも祈る等という行為が悪魔には馴染まない。この暗く澱んだ場所で信じられるのは自分自身だけだと、長らくそう思ってきた。

    「お前には祈りと願いの違いが分かるか?」

    魔界全土でも最も過酷な環境を指す場所、地獄──罪を犯した人間たちがプリニーとして生まれ変わり、その罪を濯ぐために堕とされる地の底。魔の者すら好んで近付くことはないこのどん底で、吸血鬼は気まぐれに問うた。

    「お言葉ですが、閣下、突然いかがされましたか」

    また始まってしまった。そう思った。かすかに胃痛の予感がし、憂う。
    我が主人、ヴァルバトーゼ閣下は悪魔らしからぬ発言で事あるごとに俺を驚かせてきた。思えば、信頼、絆、仲間……悪魔の常識を逸した言葉の数々をこの人は進んで発してきたものだ。 5897

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    DONEしがない愛マニアである私が原作の奥に想い描いた、ディスガイア4、風祭フーカと父親の話です。銀の弾は怪物を殺せるか?【銀の弾など必要ない】



    白衣が揺れる。頭をかいてデスクに向かうそのくたびれた男に私は恐る恐る声を掛ける。

    「パパ、お家なのにお仕事?」

    男はこちらを振り返りもしない。研究で忙しいのだろうか。それとも、私の声が届いていないのだろうか。
    父親の丸まった背中をじっと見つめる。十数秒後、その背がこわごわと伸び、首だけがわずかにこちらを向く。

    「すまん、何か言ったか?」

    この人はいつもそうだ。母が亡くなってから研究、研究、研究……。母が生きていた頃の記憶はあまりないから、最初からこんな感じだったのかもしれないけれど。それでも幼い娘の呼び掛けにきちんと応じないなんて、やはり父親としてどうかしている。

    「別に……」

    明らかに不満げな私の声に、ようやく彼は腰を上げた。

    「いつもすまんな。仕事が大詰めなんだ」

    パパのお仕事はいつも大詰めじゃない、そう言いたいのをぐっと堪え、代わりに別の問いを投げかける。

    「いつになったらフーカと遊んでくれる?」

    ハハハ、と眉を下げて笑う父は少し疲れているように見えた。すまんなあ、と小さく呟き床に胡座をかく。すまん、それがこの人の口癖だった。よう 3321

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    CAN’T MAKE11/5新月🌑執事閣下🐺🦇【俺の名を、呼んで】今、貴方を否定する。
    「呼んで、俺の名を」の後日談。お時間が許せば前作から是非どうぞ→https://poipiku.com/1651141/5443404.html
    俺の名を、呼んで【俺の名を、呼んで】



     教会には、足音だけが響いている。祭壇の上部、天井近くのステンドグラスから柔い光が射し込んで、聖女の肌の上ではじけた。神の教えを広め、天と民とを繋ごうとする者、聖職者。その足元にも、ささやかな光を受けて影は伸びる。
     しんと凍えそうな静寂の中、彼女はひとり祭壇へと向き合っていた。燭台に火を分け、使い古しの聖書を広げるが、これは決してルーチンなどではない。毎日新しい気持ちで、彼女は祈る。故に天も、祝福を与えるのだろう。穢れない彼女はいつか天使にだってなるかもしれない。真っ直ぐな姿勢にはそんな予感すら覚える眩しさがあった。

     静けさを乱す、木の軋む音。聖女ははたと振り返る。開け放っていた出入口の扉がひとりでに閉まるのを彼女は遠目に見つめた。風のせいだろうかと首を傾げれば、手元で灯したばかりの蝋燭の火が揺らめき、何者かの息によって吹き消える。不可思議な現象に、彼女の動作と思考、双方が同時に止まる。奏者不在のパイプオルガンがゆっくりと讃美歌を奏でればいよいよ不穏な気配が立ち込める。神聖なはずの教会が、邪悪に染まっていく。
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