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    last_of_QED

    @last_of_QED

    ディスガイアを好むしがない愛マニア。執事閣下、閣下執事、ヴァルアルやCP無しの地獄話まで節操なく執筆します。デ初代〜7までプレイ済。
    最近ハマったコーヒートーク(ガラハイ)のお話しもちょびっと載せてます。

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    last_of_QED

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    ガラハイ🐺🦇【stand up!】
    お題「靴擦れ」で書きました。ハイドがストーカーに刺された過去を捏造しています(!?)のでご注意ください。

    ガラさんとハイドには、互いの痛みを和らげてくれる、一歩を踏み出すきっかけになってくれる…そんな関係にあってほしいです。

    【stand up】「ガラ、休憩だ」

     背後から名を呼ばれ、狼男は足を止めた。気配が背中まで迫って来るや否や、声の主はウンザリだとばかり、息を吐く。

    「休憩って……おれたち、さっきまでコーヒートークに居たんだよな?」

     両名は確かに五分前まで馴染みの喫茶店で寛いでいた。ガラハッドとゾボを頼み、バリスタ、それから偶然居合わせたジョルジと街の噂や騒動について会話を交わし別れたばかりだ。にも関わらず再び休憩を所望するこの友人をガラは訝しんだ。傾き始めた陽のせいかハイドの表情は翳り、どこか居心地が悪そうに見えた。

    「具合でも悪いのか?」
    「……ああ、もう一歩も歩けそうにない。助けてくれ」

     かつて、オークに集団で殴られようが、ストーカーに刺されようが、皮肉を吐いて飄々としていた男が今、明確に助けを求めている。数十年に及ぶ付き合いの中でも初めてのことで、ガラは咄嗟にスマートフォンに手を掛けた。「911」をコールしようとした時、その手を制止したのはあろうことかハイド自身だった。

    「……靴擦れだ」
    「は?」
    「靴が合わなかったんだ。足が痛い」

     悪びれる様子もなく言い放つハイドに狼男は大きく息を吐き、そして胸を撫で下ろした。苛立ちと安堵が同時に押し寄せ、言うべきはずの文句を言い淀む。

    「……とりあえずそこ、座れ」

     ガラは道端のガードパイプを指差した。周囲を見渡してもベンチらしいベンチは見当たらない。ぎこちない足取りで指示された場所へなんとか寄り掛かるとハイドは悪態を吐いた。

    「ホームレス対策だかなんだか知らないが、最近はすっかりベンチを見なくなった」
    「爺さんのセリフだぞ、それ」

     揶揄をものともせず、ハイドは鼻を鳴らした。

    「そうだ、若者からすれば……事実、私は爺さんと言って差し支えない年齢になる」

     そこまで言い終えてガラを見上げる赤い瞳が「察せ」と言わんばかり、何かを物語る。通りの少し先から、酒に酔ったサキュバスの愉しげな笑い声が聞こえてくる。

    「……おぶってくれなんて言わないよな?」
    「まさか! お姫様抱っこしてくれるなら私はそれで構わない」

     呆れ果て、言葉を返せずにいるガラの反応を楽しむようにハイドは口角を上げた。

    「履いた瞬間、嫌な予感はしたのだがな……なに、優秀な医療事務員クンが世話を焼いてくれるだろうと思ってな」
    「確信犯にかける情けは無い」
    「待て、ガラ、おい! 置いていくな薄情者!」

     行ってしまうふりをしたガラが、しかし追い縋る友の声を無視し切ることは出来ずに戻って来る。そしてハイドの前に傅くと今日おろしたばかりなのだと言うかたい革のローファーを優しく脱がせた。そのまま派手な赤のソックスを剥ぎ、皮膚の捲れてしまった痛々しい踵を空気に晒す。
     その、手つきに。患部へと向けられた真剣な眼差しに。何故かハイドの胸は高鳴った。見てはいけないものを見るようで、つい視線を逸らす。
     一方、ガラはジャケットの内ポケットから取り出した絆創膏を慎重に、けれど迷いなく傷口に重ねた。予期せぬことにハイドの脚が跳ねる。

    「さ、これで歩けるだろ。……別に急いでる訳じゃないんだ、焦らずゆっくり行けばいいさ」

     絆創膏のゴミをポケットにしまうとガラはからりと笑って見せた。

    「むう、求めていたものとは違ったが……」

     ハイドは確かめるように踵の絆創膏に触れると、目を伏せ笑みをこぼした。

    「不思議と悪くない気分だ」
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    last_of_QED

    DOODLEガラハイ🐺🦇【stand up!】
    お題「靴擦れ」で書きました。ハイドがストーカーに刺された過去を捏造しています(!?)のでご注意ください。

    ガラさんとハイドには、互いの痛みを和らげてくれる、一歩を踏み出すきっかけになってくれる…そんな関係にあってほしいです。
    【stand up】「ガラ、休憩だ」

     背後から名を呼ばれ、狼男は足を止めた。気配が背中まで迫って来るや否や、声の主はウンザリだとばかり、息を吐く。

    「休憩って……おれたち、さっきまでコーヒートークに居たんだよな?」

     両名は確かに五分前まで馴染みの喫茶店で寛いでいた。ガラハッドとゾボを頼み、バリスタ、それから偶然居合わせたジョルジと街の噂や騒動について会話を交わし別れたばかりだ。にも関わらず再び休憩を所望するこの友人をガラは訝しんだ。傾き始めた陽のせいかハイドの表情は翳り、どこか居心地が悪そうに見えた。

    「具合でも悪いのか?」
    「……ああ、もう一歩も歩けそうにない。助けてくれ」

     かつて、オークに集団で殴られようが、ストーカーに刺されようが、皮肉を吐いて飄々としていた男が今、明確に助けを求めている。数十年に及ぶ付き合いの中でも初めてのことで、ガラは咄嗟にスマートフォンに手を掛けた。「911」をコールしようとした時、その手を制止したのはあろうことかハイド自身だった。
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    last_of_QED

    DONEガラハイ🐺🦇【As you wish, Mr.Hyde.】
    バレンタインのお話🍫Xにてupしたもの。記録用にこちらにも載せておきます✍️
    【As you wish, Mr.Hyde.】 今にも底の抜けそうな紙袋が二つ、どさりとフローリングに下ろされる。溢れんばかりの荷物、そして良く見知った来訪者を交互に見比べて人狼が尋ねた。

    「なんだこれ」
    「かわい子ちゃんたちからの贈り物だ。毎年この時期事務所に届く。……無碍にも出来ないからな、いくつかはこうして持ち帰るんだ」
    「マジかよ……これ全部か……?」

     愕然とする人狼を横目に、ハイドは手が痺れたと笑うだけだった。今日は二月十四日、いわゆるバレンタインデー。氏に言わせれば、これでも送られてきた段ボールの大半を事務所に置いてきたのだという。

    「さすがは天下のハイド様だ……」
    「まあ、悪い気はしない」

     ソファに腰を下ろし、スリッパを蹴飛ばしてしまうと吸血鬼はくじ引きのように紙袋へと腕を突っ込んだ。無作為に取り出したファンレター。封を開き便箋を取り出すと、丁寧にしたためられた文字の列をなぞった。一通り目を通した後で再び腕が伸ばされる。次にハイドが掴み取ったのは厚みのある化粧箱だった。リボンを解けば、中には宝石にも見紛うチョコレートが敷き詰められていた。どれにしようかと迷う指先。気まぐれに選んだ一つを口の中に放り込んだ時、ガラがおもむろに通勤カバンを漁り始めた。
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