九尾の日和と人の子ジュン———声が、聞こえる。
寂しい。ここはどこ?みんなに会いたい。早く帰らなくちゃ。・・・寂しい。
ここは、どこだろう。確かオレは今、おひいさんとおひいさんが昔住んでいた社に泊まりに来ていて。そうだ。ここは、村。たしか、ここは村長さんの家。どうしてここに?社の日和の部屋であの人にぎゅうぎゅう抱きつかれて眠ったはずなのに目を覚ますとそこに日和の姿はなく、景色も眠る前とはがらりと変わっていた。これは、夢?混乱するジュンの視界の隅で影が動く。
「誰か、そこにいるんすか?」
恐る恐る発声するが返事はない。
「あのぉ、います・・・よね?」
もう一度暗闇に問いかけると昼間に聞いた小さな声がはじめて返ってきた。
「えっと、そうです。ぼく、ここにいます。」
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