6戦目★たまたま手元にあったから!ムーミン谷を出て一番近い街の歓楽通りにて、イカした帽子の男が出店の前でなにやら物色をしていた。
年頃の少女が好みそうな華やかで煌びやかなアクセサリーの出店を前にそのアクセサリーとは正反対とも言える男が品の並ぶ屋台の中心で一際目を引くピンクの花飾りをじっと見ていた。
「さっきからずっと見てるね。にーちゃん、なんか買ってくかい?」
「ああ……」
家主の女店主にそう言われ、男――安原は今一度そのピンクの花飾りを見つめる。
ガーベラを模ったピンクの花飾りを見た瞬間、安原の中で憎たらしくも目が離せないあの男を思い浮かんだ。
冬の季節になり、あの男がトレードマークのピンクの花冠を被っているのをめっきり見なくなった。
安原はトレードマークのピンクの花冠の代わりに枯れ草で編んだ草冠を被り挑発じみた目で笑うあの男の顔を思い出す。
1957