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    hayokakeyaa

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    hayokakeyaa

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    ※28日リンボー舞踊会の無配SS※
    新刊の『史上最強の人妻〜ぼくががんばってかんがえた人妻あしや♀〜』のおまけ小話となります。
    【11/30 追記】全体公開にともないパスワードを解除しました!お楽しみいただけますと幸いです🥰
    道満女体化かつモブと絡む全年齢コメディですのでご注意を。
    若干本編に触れた内容となりますが、読んでいない方でもなんとなくお楽しみいただける仕様です。

    無配小ネタ〜イベントあしや♀〜「いやあ映画なんて久しぶりだねえ」
    「しかも三年ぶりの新作、昂らずにはおれませぬ……!」

     今日は待ちに待った日曜日。
     夫婦は先日公開されたばかりの新作映画『人喰いめんまんVS新撰組4』を見るために劇場へ向かっていた。特に道満はシリーズの大ファンで、前売り券を発売初日に買うほど気合を入れていたのである。
     折角ですからポップコーンも食べとうございまする♪
     いいねえ、道満は何の味が食べたい?
     ンンン、塩もキャラメルも両方捨てがたいですねぇ……
     じゃあ間を取ってハーフ&ハーフとかどうだい?
     それは妙案!
     瞳を輝かせる妻に自身もまた嬉しいと言わんばかりの笑みを見せる夫。
     晴明としても久しぶりのデートということで浮き足立っていた、まさにその時。

    「「ちょぉぉっと待ったァアアア!」」

     夫婦の行手を立ち塞がるように現れたのはどこか通行人のようなビジュアルの男性達……またの名をモブ軍団。どうやら心当たりがあるのかその内の一人の顔を認識した晴明が片眉を上げる。
     そして一方の道満はというと。

    「貴方達は……! どなたでしたっけ?」
    「「えっ」」

     —説明しよう! 彼らはかつて様々な理由で人妻に手を出しそして返り討ちにあった(一部例外あり)モブ男達、言うなれば「自称・人妻被害者の会」のメンバーである!—

    「晴明殿、どこに向かって言っておられるのです?」
    「ちょっとね」

     突然振り返るなり斜め上を向いて解説をはじめた夫を怪訝そうに見つめつつも、道満はなんとか状況を理解したようであった。

    「なぜこのタイミングで現れたのかは理解しかねますが……この方達を退けねば、映画館に辿り着けないのですね」
    「えっ、いや俺達は近況報告に来ただけで」

     対峙した集団の中でも特に若い、学生らしき男が声をあげるももはや聞く耳持たずの状態。なぜなら道満の頭の中はこの先で待っている映画とポップコーンの事で頭がいっぱいなのである。
     今日は待ちに待った日曜日。そして仕事が忙しく、最近なかなか時間を取れなかった晴明が、自ら誘ってくれたデートの日。たとえどのような者であろうとも邪魔されることは我慢ならなかった。

    「ンンン……一人当たり……秒として……三分もあればカタがつきますね」
    「ど、道満? おーい道満や」

     ごく自然な動作で隣の夫に鞄と上着を預けると、道満は伸びをして身体をほぐしはじめた。
     指をぽきぽきと鳴らしながら不穏なことを呟きはじめる妻に、晴明は若干の焦りを見せる。確かに妻の前に顔を見せたことは不愉快ではあったが、デートを優先し制裁は後ほどじっくり加えれば良いと考えていた。加えて「わざわざ道満自ら手を下さなくとも」という晴明なりの配慮があったのだが、どうも本人はそうではないらしい。
    「目的地まであと少しだというのにこのような所でお預けを喰らうなどもってのほか」という怒りも相まって、すっかりやる気モードになってしまった妻。こうなったらもう止められない。
     であれば好きなようにさせてやりつつ、周囲の被害を最小限に喰い止めるのが最善だろう。

    「晴明殿は先に行ってポップコーンを購入しておいてくだされ。拙僧もすぐに追いつきますゆえ」

     —人妻リベンジマッチ 七番勝負—
    「巻きで参りますぞ〜‼︎」
     
     —勝負、一番目 元生意気DK軍団(の選抜組)—

     まずは俺達が、と勇み足で進み出たのはブレザーを纏った学生達だった。三人横に並んで道満へ向け九十度のお辞儀を見せた後、口々に思いの丈を話し出す。

    「お姉さァァァん‼︎ あの時はマジすんませんでしたァァ‼︎」
    「今更言えた義理じゃないっすけど、モニュメント見た近所の人やダチにもめちゃくちゃ怒られてドン引きされて……本当馬鹿なことしたって反省しましたァァァ‼︎」
    「あの後ぉ家で母ちゃんに絞め技喰らってもっかい死にかけましたァ‼︎ あとおじさんにもマジすんませんでした‼︎」
    「ふむ……少しは反省しているようですな。よろしい、顕光殿にも伝えておいて差し上げましょう」

     反省の意味を込めて毎週公園のゴミ拾いをしてます、とトングを見せてくる学生達を見て感心したように頷く道満。
     だがしかし。

    「それはそれとして横並びは通行の邪魔ァ! 端に寄りなされ!」
    「「「ひでぶっ」」」

     横綱もかくやという勢いのある張り手で三人まとめて右端に圧縮されるのであった。

     <決まり手、お説教張り手>
     
     —勝負、二番目 覚醒の痴漢おじさん—

     高校生達の後ろから現れたのはよれたスーツ姿の男であった。想像以上に早く順番が来てしまったことに若干動揺していたものの、道満の瞳を見上げて覚悟を決めたらしい。

    「私は……許されない罪を犯した。あの日貴女に投げられ下半身を晒されて、恥ずかしながら初めてその痛みを知りました」
    「ほう、頭を剃り上げているのはその意思を示すためとでも?」

     たとえどれほど殊勝な態度を取ろうとも、傷ついた人の心が元に戻るわけでもない。そもそも一度否定して逃げようとした男の何を信じろというのか。冷ややかな眼差しを向ける道満に対し「まさか」とかぶりを振る男。

    「そのような事で贖えるとは到底思っておりません。この頭は……また貴女に投げてもらうための願掛けです‼︎」
    「は?」
    「いやあ〜勿論反省はしておりますが何よりあの強烈な痛みが忘れられなくて……! 実は今日をとても楽しみにハアハア」
    「反省しとらんではないかァァァ‼︎」

     殊勝な態度から一転してのM発言に思わず人妻らしからぬ全力ツッコミを決めてしまう。愛する夫がこの場にいないことに全力で感謝しつつ、道満は頭頂を光らせ鼻息荒く向かってくる男……の袖口をガシリと掴む。
     そのまま近寄らせないように距離を保ちつつぐるりと一回り。遠心力を利用して思いっきり投げ飛ばしたのであった。

    「そんな御無体なああああ」

     <決まり手、ハンマー投げ>
     
     —勝負、三番目 ガースー黒光り露出狂—

    「わざとらしく隠すなんてナンセンスだと目が覚めました。あれ以来、自信を持って露出できるようボディービルに」
    「問答無用ォォ‼︎」
    「あぎゃん」

     実は集団の中で唯一本気で見覚えのない男だったのだが、口を開いた瞬間に察した。
     —それほど時間を割く相手ではないと。
     謎に肌をてかてかと輝かせポーズを取るビキニパンツマンをアッパーで打ち上げ、次に備える道満であった。

     <決まり手、アッパーカット>
     
     —勝負、四番目? 猫と新車と兄ちゃんと—

    「いや〜あの時はすみませんでした。治療費はおろか、新しいバイク代までいただいてしまって」
    「まあまあご丁寧にどうも」

     なぜあの集団の中に混ざっているのであろうと疑問に思っていたが、単に挨拶をしたかっただけのようだ。結果的に彼に加害を加えてしまった自覚が(少々ではあるが)あるため、道満は「紛らわしいわ!」と叫びそうになるのを懸命に堪える。

    「本当に奥さんに怪我がなくて良かったです……実は僕、あれがきっかけで猫を飼うことになりまして。毎日引っ掻かれながらも楽しく過ごしてます」
    「なんとォ⁉︎」

     <勝負、引き分け>

     —勝負、五番目 オーストラリアカラキマシタ—

    「オーゥ! ロングタイムノーシー! ですが今は急いでおりますので」
    「嘘だろやっとくっついたのにいいいい」

     いつかまた行きたい場所のトップに君臨しているオーストラリア。しかも彼はその思い出深い地で初めて会った現地人とくれば経緯はどうあれ感慨深いものがある。
     が、それはそれとして急いでいるので以下省略。せっかく治った箇所だろうとお構いなしに圧殺され、またもや複雑骨折で運び込まれるはめになるのであった。

     <決まり手、圧縮ハグ(ver2)>
     
     —勝負、六番目 リングフィットはじめました—

     「安倍さんお久しぶりで〜っす!実はぁ俺もあれからリングフィット始めたんすよお」

     彼は目が覚めたら病室におりそのままあれよあれよという間に引っ越しが決まったため、実は当時の記憶が曖昧になりつつあった。なおやたら顔が良くて眼光鋭いご主人に挨拶された記憶だけははっきりと残っていた。
     遠回しに「妻がお世話になったようで」と伝えられた時は震え上がったものだが、反省も早ければ立ち直るのも早いのがチャラ男のモットー。早速新居でリングフィットを始めた彼は、どこからか今日の情報を聞きつけ「また安倍さんに会えるなら行く行く〜」とほぼノリで参加を決めたという。
     ……道満が人妻であることは病室できっちりしっかりわからせられたはずなのだが、懲りていないのだろうか。

    「ンンン、その節は大変申し訳——」
    「俺ゲームってぇ子供の時に◯ケモンやってたくらいなんで今のゲームマジ舐めてました! あんなにハードな運動したの部活以来っすよぉ〜。そりゃ安倍さんも毎日汗だくになるし床も割れ」
    「悪気がない分タチが悪い‼︎」
    「ひでぶっ」

     実はあの一件以来、安倍家ではリングフィットの話題が出ることは殆どなかった……ゲームに罪はないとわかってはいても、道満にとっては若干黒歴史と化していたのである。
     しかし悲しきかな。興奮のままにマシンガントークを繰り広げたチャラ男は、喋りに夢中になるあまり耳から顔を赤くしていく道満に気がつかなかった。
     こうして自分が地雷を盛大に踏み抜いたことに気がつかないまま、掬い投げによって盛大に転がされたままフェードアウトしていくのであった。

     <決まり手、掬い投げ>
     
     —勝負、最終 真打ち登場—

    「ふぅ………なんとか間に合いそうですねェ」

     この間二分五十秒。目標タイムに余裕を残し悠々と劇場へ足を運ぶ道満の前に、ある男が立ち塞がった。

    「いやァ流石我が妻。見事な大立ち回りだったよ」
     
    それはつい先ほど別れたばかりの夫であった。無論手にはまだ何も持っておらず、思わず道満は怪訝な顔をする。

    「晴明殿…? もしやポップコーンが売り切れておったのですか?」
    「あれから一人先を行く途上で、私は悩んでいた……彼らが歴代の対戦相手だと言うのなら、私はもはや殿堂入り選手と言っても過言ではないのではないか? おまえもそう思うだろう? せっかくの特別編だというのに、ディフェンディングチャンピオンの私だけなぜ出番がないのかと…そんなことあってはならな」
    「だからポップコーンを買うためでしょうがァァァ‼︎」
    「あべしっ」

    無事に間に合ったかどうかは、人妻のみぞ知る。

    ちゃんちゃん。
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