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    hayokakeyaa

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    hayokakeyaa

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    23日のオンリー会場での配布物のWeb版です。壱さん(@dmnsmn_)宅のめんまんちゃんの三次創作の小話になります。晴明の妻な道満(女体化)、カントボーイの零臨、狐晴(この話では成分薄め)が出てきます。

    晴々道々無配コピー本Web版 人妻あしや♀×めんまんちゃんコラボ話
     〜めんまんちゃん、零臨と狐晴に出会うの巻〜
     

     「ここを、こうして……っと」
     「ンン……?」
     ここはとあるマンションの一室。今回の舞台は夫婦のプロレスが繰り広げられることに定評のあるリビングではなく台所。そこでは「自称」主婦とその小さな家族が調理道具と機材を準備していた。主婦こと道満は撮影用の折り畳みスタンドを組み立て、自身のスマートフォンを針金入りのバンドで固定する。己の手元とその先にあるボウルが映るように覗き込みつつ角度を調整する。
    「ン、ンン。あー、本日は晴天なり。ほら、せっかくですからポチも何か声を出しなされ」
    「……! ンンン〜♪」
    「よろしい。準備は万端ですな」
     夫からごう……譲り受けた集音マイクの感度も良好。念のため隣で作業を見ていた小さな家族ことメンダコの声もしっかりと通ることを確認して、スイッチを切る。このメンダコ、主婦と同じく名を「どうまん」と言うのだが、彼女がなぜか「ポチ」と呼んで可愛がるので仕方なく返事をしていたらすっかり定着してしまったのだ。そんなポチも普段は気ままに家中を探検したり昼寝に勤しんでいるのだが、彼女が触っている見慣れぬあれこれに興味を持って近寄ったが最後、アシスタント兼マスコットとして巻き込まれてしまった。当初は己の役割をよく理解していなかったが、できた料理を「試食係」として真っ先にいただける権利を有していると気づいてからは、積極的に参加するようになったという。
     まあここまで来れば、登場人物が意図的に限られていることに聡い読者はお気づきになるだろう。そう、今日は旦那様に内緒のお料理動画の収録日である。
     
    「人妻クッキング、第二回の今回はミルクプリンの黒胡麻コースがけでございまする〜♪」
    「ンン〜♪」
     
    「まずはポチを安全なところへ避難させます」 
    「ンッ」
     あらかじめ用意していたものがこちらにて、と差し出されたのはジャムの空き瓶。清潔なクッションと水で満たされたそこに、道満はぽちゃんとポチを入れるや否や蓋を閉めてしまった。何せこのメンダコ、好奇心旺盛で何でも口にしてしまうがゆえにかつて食紅で全身を真っ赤に染めて夫婦を大いに心配させた経歴の持ち主である。二人が狼狽するあまり、メンダコ入りの籠を抱えて救急窓口に駆け込み一騒動を起こしたことはいまや病院の伝説の一つとして語り継がれている。つまり若干窮屈な思いをさせてしまうが、これもポチを想うがゆえの安全対策なのであった。
    「次に黒胡麻ペーストを作りますぞ。今回材料に使うのは……旦那様の背広に忍ばされていたこちらのチェキでございます」
     よく見えるように人差し指と中指に挟み込まれた写真には、黒いチャイナドレスに兎耳のカチューシャをつけた女が写っている。ただいかんせん道満の手が大きいため、画面に映ったそれは電車の切符ほどのサイズにしか見えていない。
    「……無論、怒ってなどおりませぬよォ? 旦那様が拙僧以外の女子にうつつを抜かすような輩ではないとは思うております。が、しかし! だとしても、斯様なものを入れられるほど気を許すような場所がこの家以外に存在する、というのはいかがなものかと……ねぇ」
     みちみちという音を立てながら挟んだ両の指に力を込めていくと、顔から真っ二つに割けんばかりに写真がひしゃげていく。
     怒ってる。
     絶対に怒ってる。
     瓶の中に隔離されたことをこれほど安堵したことはないと震えつつ、ポチは息を呑んでその指の先を見つめる。
    「さぁこちらを今からミキサーにかけまする♪」
     なお、放送では『※あくまで動画上の演出です。実際の調理にはこのソースは使用いたしません』というテロップが追加されるのでご安心いただきたい。
     しかしそれはそれ、これはこれ。ポチの目の前では今まさしくアルファベットのVの字に折り曲げられた写真が鮮やかな手際で刻まれ、ミキサーにかけられているのだ。目の当たりにして不安にならないわけがない。
    「立派な黒胡麻ソースになるのですよ。そ〜れぐ〜るぐる♪」
     渦巻く白と黒の粒がみるみるうちに混ざり合い、どろりとした液体のようなものに変わっていく。これを食べさせられるのか……果たして美味しく消化できるのか。じっと考えながら見つめているうちに、ポチは何だか己も攪拌されているかのような気分になっていく。
     
     ぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐる……
     
     ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
     
     はっと意識を取り戻す。
     すると目の前に置かれていたミキサーが消えているどころか、自身も瓶の中ではなく冷たく暗い石の上にいることに気がついた。よく見ると周りには白くてからからの固いものが転がっている。しかも先ほどからふわふわした靄のようなものが絡みついて離れない。プリンを食べるつもりで空けておいたお腹はそのままであるし、作っていた道満もどこにもいない。空腹が続いていたこともありだんだん不機嫌になってきたポチはもう何でもいいと投げやりになるあまりきゅぽっ、とその靄を吸い込んでしまった。
     実はこの靄、並の生き物であれば取りこまれてしまうような恐ろしい呪を秘めていたのだがポチにとってはなんのその。なすすべもなく「ンギギギィィィ」と嫌な音を立てながら吸い込まれ、その小さな身体からは想像もつかないブラックホールのような胃袋の中へと消えていってしまったのであった。そんな経緯であっさり喰われた挙句、味の感想は「あまりおいしくない」。
     流石に哀れである。

     ほんの少しだけ空腹は紛れたものの、暗くて冷たい場所に一人ぼっちでいると何だか悲しくなってくる。ここには自分以外に生き物は見当たらず、声を出しても跳ね返ってくるだけ。遥か上の方に光らしきものは見えるものの、ぐるりと取り囲む高い壁に阻まれている。お腹を空かせた小さな身体では到底辿り着けないだろう。
    「ンン……ンン〜!」
    「……おや、何やら妙な声が」
     誰でも良いからここから出してくれ、とばかりに鳴いていると、遥か上のほうからどこか聞き覚えのある声が響いてくるではないか。ここにいることに気づいてもらおうと、ポチは精一杯声を張り上げる。
     しばらくすると、上から籠のようなものがこちらに向かって降りてきた。小さな穴から中を覗いてみると、白くてまあるいものが入っている。ぷるぷるとした見た目のそれはとても美味しそうな匂いを放っていた。
    「そういえばプリンを作ってもらっている最中であった」と思い出したポチはせめて甘い味であるといいなと考えながら籠の中へ飛び込んでいったのであった。
    「……どうやら、かかったようですな。では引き上げまする」
     
     ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

     一方その頃。ポチが籠に飛び込む少し前の地上では、道満と晴明が二人揃って井戸の中を覗き込んでいた。
    『ンン〜……ンン〜……』
    「聞こえますねェ」
    「聞こえますなあ」
     二人は小狐を伴った大柄な尼僧という旅姿を見とめた村の者から「井戸から妙な声が聞こえるようになり、それに誘われるように若者が次々と消えている」という相談を受けて立ち寄っていたのである。原因と思われる井戸へ赴くと……どうやら妖がいたようであった。というのも、そこには悲鳴と血の香りを纏った残滓だけが底に留まっているのである。何処かへと移動した痕跡もなく、ふつりとそこから霧散してしまったかのように。そしてわずかに残っていた思念も、今まさに消えようとしていた。
     
     きゅるきゅるむしゃむしゃ……きゅぽっ
     
    「……ふむ、これは……どうやら井戸の底に別の『何か』がいるようですよ」
     道満の肩越しに耳をそば立てていた晴明には摩訶不思議な咀嚼音が聞こえていた。その音を発している「何か」は、これまで退治したどの妖とも異なる得体の知れない気配を放っている。そして音と気配から解析をした限りでは、少なくとも悪意やよからぬ力を探知できないほどにそれは小さかった。
     視界共有できる式神をゆっくりと井戸の底へ落とすと、二人の目に映ったのは悲しげに泣くつるりとした生き物であった。件の妖の残滓がその身体に付着していることから「この生き物が関わっている可能性が高い」と判断し、引き上げて検分することにしたのである。
    「ンゥ……?」
    「……どう、まん?」
    「ンン〜!」
    「……はい?」
     かくして妖を引き寄せる香を纏わせた餅に釣られて現れたポチを見て、二人は目を丸くする。ポチもポチで、引き上げられた先にいた人間がよく知った「道満」とその夫「晴明」の顔をしていることに驚き、喜ぶことになったのであった。

     きゅぽっ……もちゃもちゃ

    「ンンンン、ンン〜♪」
    「……よく食べますねえ」
    「はははそんな所もおまえにそっくりじゃないかあだだ」
     道満の掌の上で懸命に粟餅を咀嚼しているのは想像していたよりずっと小さなぷにぷにした生き物である。相当腹を空かせていたようで、籠の中に入れておいた捕獲用の餅を平らげるや否や「もっとよこせ」という顔で訴えてくるため持ち歩いていた食糧を与えてみたのだが……
     身の丈よりも大きなそれらをきゅぽっ、と吸い込んで食事する様がどうやら晴明のツボに入ったらしい。咀嚼は遅いのに面白がってどんどん与えようとするため道満から制止が入る始末であった。
    「これ、そろそろやめておかねば腹を壊しますぞ」
    「うーむ一理あるな。可哀想だがこの饅頭で最後にしなさい、どうまん」
    「拙僧の名で呼ぶでない」
    「そんなことを言ってもおまえによく似ているじゃないか。鈴を下げているし白と黒で彩られて愛らしい所もそっくりではないですか」
     なら渾名でも考えてあげたらどうだい、と晴明に振られた道満は与えられた饅頭を食べているポチをじっと見つめる。何か手がかりはないかと観察してみるものの、身の丈とほぼ同じ大きさの一口饅頭を端から少しずつ食べている姿は確かにかわいらしい。そして一方で共喰いしているようにも見える。
    (まるで面妖な饅頭……ふむ)
    「……食べ残しが足に引っかかっておりますぞ。こちらを向きなされ、めんまん」
    「めん……ふふっ」
    「ンンンン」
     随分かわいらしい渾名じゃないかとくすくす笑う晴明を尻目に、口から足にかけて細くのびる煙のようなものを爪で慎重に摘む。人の髪ほどの細さしかないそれを視線に合わせて掲げると、晴明が目を細めて覗き込む。
    「うーむ。おなごの生霊の成れの果て、といったところでしょうね」
     村長に若くして死んだ女がいないか尋ねてみたところ、かつて横恋慕の末に身を投げた娘がいたという。幼くして身寄りをなくした娘にとって、幼馴染の男は唯一心を許した相手であった。しかし彼には許嫁がおり、いずれ婿入りする形で村を離れることを知ってしまう。「また己一人残されてしまう」という孤独と恋が叶わぬ悲しみに耐えきれず、この井戸に身を投げたのだと。
    「……叶わぬ恋に身をやつすのは、いつの世も変わりませぬな」
     だがたとえ空いた心の穴を埋めたくとも、人を引き寄せて喰らってしまうことは許されない。二人は村人を避難させた上で結界を貼ると、今度は一雫も残らぬように残滓を炎に焚べていく。
    「さて、この子を在るべき場所へ帰してやらねば」
    「……帰せるのですか?」
     怪訝な顔で尋ねる道満の不安は最もである。何せ悪霊も人の食べ物も消化できる謎の胃袋を持つ面妖な生き物だ。今もまだ食べ足りないのか、結界の外をうろついている魑魅魍魎をじっと見ている有様で流石の道満も「本当に此奴を解き放って良いのか……?」と警戒しているのだ。
     晴明が言うには、井戸は異界への通り道であるらしい。めんまん(ポチ)も何らかの偶発的要因で、井戸が元の世界と繋がった結果迷い込んでしまったのだろうと。
    「大丈夫ですよ。向こうの世におまえのようなものがいるということは、きっと私のようなものもいるということ。私達がこうして掬い上げたように、あちらでもこの子と共に生きる『私達』がいるはずです。彼らに任せましょう」
     
     ——それに、この子とはなんだかまたきっと会える気がするんです。
     


     一刻後。底を攫って充分に清められた井戸に、小さな籠が吊り下げられた。蓋を開けた道満が指先を差し入れると、掌に乗っていたポチがよちよちと籠の中へと歩いていく。底に敷かれた布の上に座ったことを確認すると、入れ変わりに晴明の指先が差し入れられる。 二本の指で挟み込まれているのは爪の大きさほどの小さな包みで、先端が輪の形に結ばれている
    「ちょっとしたお土産兼お守りです。無事に帰れるように呪いもかけておきました」
    「……それはこやつの世に持ち込んでも問題ないものでしょうな」
    「勿論、おまえは本当に真面目だねえ。さあ、気をつけておかえり」
    「くれぐれも、寄り道せず真っ直ぐ家へ帰るのですよ……もうここへ来てはなりませぬぞ」
    「ンン〜!」
     二人の声を合図に、ゆっくりと籠が降ろされる。円を描くように紐が揺れ、括り付けられた籠もくるりくるりとゆりかごのように回る。温かい水に漂っているかのような心地よさに包まれて、ポチはゆっくりと目を閉じた。
     
     くるりくるり、ゆらりゆらり……
     
     ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
     
    「……チ〜。ポチ〜?」
     聞き覚えのある声に瞼を開くと、何やら温かいものに包まれている。こちらに視線を合わせるように覗き込んでいるのは、ポチが共に暮らしている主婦の「道満」であった。
    「……ンゥ? ン〜!」
    「ああ、よかった。急に眠り込んでしまってどこか具合でも悪いのかと心配したのですよ?」
     胸を撫で下ろす道満をよそに、ポチは早速テーブルの上にソースのかかったプリンが出来上がっているのを見つける。件のドロドロになったチェキ入りのミキサーが別の場所へ置かれていることをしっかりと確認し表情が一気に明るくなる。井戸の向こうであれこれと食べさせてもらったが、お待ちかねのプリンはまた別腹なのだ。
    「ンンンン♪」
    「そうだ、仕上げを忘れておりました。ええとあれはどこへ……おや、いつの間に用意してくれていたのですか?」
     早く早くとじたばたするポチをそっとテーブルに降ろした道満は、プリンの皿を見て飾りが一つ足りないことに気がつく。さてどこにしまったかと辺りを見回すと、なんとポチの足元に布に包まれたミントの葉が置かれているではないか。手に取って香りも状態も問題ないことを確認すると、そっとプリンの上へ載せる。これで見栄えも完璧である。
     
     最後に画面のピントを今にも飛びつきそうな一匹とプリンに合わせて、マイクの電源を入れ直す。
     
    「できましたァ! ミルクプリンの黒胡麻コースがけでございます♪」
    「ンン〜♪」
     
     大冒険の後のプリンは、身体の中が洗われるような心地がしていつにも増して美味しかったという。
     そして件のチェキはというと。どこから見ているのか五分後に突入してきた旦那の証言により「学生時代の先輩が余興で披露した女装姿を写したもの」と判明。浮気疑惑も無事晴れたそうな。
     
    「……ここまで見ている暇があるなら、とっとと弁解せんかあああ‼︎」
    「だって勘違いで嫉妬するおまえが可愛くてついあだだだだだ‼︎」
     
     めでたしめでたし?
     
     
     
     
     【あとがき】
     念願のオンリー開催‼︎
     この日のためにあらゆることを頑張ってきたので、無事に会場へ辿り着くことができてめちゃめちゃ嬉しいです〜! この小話は合体参加の記念として、お隣の壱さん(@dmnsmn_)に許可をいただき、めんまんちゃんと私の人妻あしや♀のコラボ話の番外編として書かせていただきました。なんともニッチなクロスオーバーですが、せっかくのお祭りなのでこんな奴が一人いてもいいだろう精神でございます。
     お手にとってくださった皆様にも少しでも楽しんでいただけましたら幸いです。


               二〇二二年七月二十三日
               『晴々道々』開催記念
                四分の三人前  秋雨 
                Twitter @hayokakeyaa
     
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    kanamisaniwa

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