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    karanoito

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    karanoito

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    仁×新 30日CPチャレンジ

    Wearing each others clothes ─衣装交換

     ズルリと床に引きずる裾を踏んでしまわないよう慎重に立ち上がる。そんな小柄な少年を見守って、被った狐面の下では顔が常に緩みっぱなしだ。
     笑うな、と肩が震える茶髪の少年を見咎めて少年が黒い目隠しの下から睨みを効かせる。
     文化祭で着る予定の衣装が出来たからと配られたそれを見て、妙な発案を彼は口にした。
    「なあ、お互いの交換して着てみないか?」
     仁お得意の閃きに、袖を通してはみたものの背が高めの彼の着物は新には大き過ぎるし、小柄な少年の甚平は仁に小さ過ぎた。
     どうやっても肩から襟が落ちて安定しない、足を完全に隠して床に着く裾が恨めしい。彼の丈に合わせた着物に完全に着られている。せめて身長が十センチ違えば。新を見て仁は指を指して愉快そうな笑い声を立てた。
    「やっぱり俺のサイズじゃ大き過ぎるか」
    「どうして甚平じゃなく着物なんだ、動きにくい」
    「こっちのが俺に合ってるし格好良くない?」
    「給仕に格好良さは求めてない、機能性の方が大事だろう」
    「持ち回りは受付じゃなかった? まあいいや、給仕の時はさすがに着替えるって」
     彼の場合この着流しの方が周りには受けが良さそうだと思った事は黙っておく。ずり落ちてくる襟を支えながら、そろそろ着替えないかと新は仁に向かって顔を上げた。このままだと当日までに汚す所か破きかねない、そう思った矢先に裾を踏んづけて体が大きく揺らいだ。あ、と伸ばした手が宙を掻く。
     このまま転んで、顔を床にぶつけた自分を見てまたおかしそうに笑うのだろう。悪友が腹を抱える姿が思い浮かんだ。しかし体は床に着く前に力強い腕に支えられ、抱き留められた。ドジっ子じゃないんだから……と頭上で仁が溜め息を吐く。
    「足元、気を付けろよ」
    「……すまない、助かった」
     労るような声に調子が狂う。顔が熱くなって何だか恥ずかしくなってきた。
     背中に回された腕が無性に気になって、寄りかかった甚平の胸元を握り締める。赤くなった顔を見られたらと思うと迂闊に上げられない。
     早鐘を打つこの鼓動が彼に聞こえたりしないか心配で、暑くもないのに手に汗が滲んだ。
     頭は焦って、何を考えてるか分からなくなって。言葉にならない喉は唾を飲み込んだ。
    「あれー? お前らまだ残ってたんだ……って何その格好、新ダボダボでズルズルじゃん」
    「仁のサイズだからじゃないか」
    「あーなるほど交換っこね、お前ら気、早過ぎ。文化祭が楽しみなのは分かるけどさー」
     教室に入ってきた橋本と貴文に心底ほっとしたと同時に仁の腕は背中から離れていた。お前ら部活終わり? と狐面を外して話しかける仁の背中を後ろから眺め、肩から力が抜けていくのを感じた。
     じゃあ一緒に帰ろーぜっ、と橋本が新を振り返る。
     ぼんやりしている内に話がついたらしい、ああ。と頷いて帰り支度を始めた。

    2015.3
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