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    karanoito

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    karanoito

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    仁×新 診断メーカーより「たとえばいま消えてしまっても、きみは泣いてくれるだろうか」

    合わない視線

    「泣かない。理由によっては怒るが絶対に泣くことだけはしない」
    「ヒデーなあ、俺のこと惜しんでもくれないのかよ?」
    「ひどいのはどっちだ。君がいなくなる理由なんか碌でもないものに決まってる」
     当然だ、と新の眉が眉間に寄るのを仁は笑って流した。だらしなく横向きに座った姿勢からして頷けてしまう信用のなさ、いなくなる前から不機嫌にならんでも。
     授業が始まる僅かな谷間に彼と交わした他愛のないもしもの話。怒ると言ったからには怒るのだろう。心配をして探し回って、出来ることを全て終わらせた後に静かに一人で憤る。それはとても新らしく、俺たちの関係を端的に表しているのではないか。
     気の合う友人であっても親友ではない自分たちにとって最適の返答。泣いてくれないのは不満だが、これも一つの別れ方なのだろうと頬杖を突いた。
     新が教科書とノートを揃えて机に出すと待っていたかのようにチャイムが鳴り響く。
    「……本気で怒るから勝手にいなくなるんじゃない」
    「分かってるよ。ただの世間話なんだからマジで捉えんなって」
    「本当に?」
     しかめ面が不安げに揺れる、そんな泣きそうな目で見上げられたらなけなしの良心が痛むじゃん。軽い調子を装って冗談にしないといたたまれない。
     頼むからちゃんと怒って忘れてくれよ? 言った通りに怒ってくれないと気になって困るんだからさ。
    「……?」
    「なに、新どこ見てんの? 上に何かある?」
    「何でもない」
     無意識に見上げた新の視線は誰とも合わずに宙に消える。みんなで飾り付けたお化け喫茶の内装に賑わうクラスメイト。おかしな所は何もない。
     つられて天井を眺める橋本に頭を振って答えた。
     隣には誰もいないのに。
     文化祭当日の朝、友人やクラスメイトの誰より高い位置で笑う声が聞こえた気がした。

    2015.11
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