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    karanoito

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    karanoito

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    仁×新 診断メーカーのお題より『結婚しちゃおっか』

    家族みたいに

     夕暮れの中、立ち寄った公園で残っていた最後の親子連れを見送る。手を繋いで夕飯にはしゃぐ子供に少し困り顔の母親、二人の遠くなる影に彼の横顔が陰った。伸びていく親子連れとは反対に新の影は俯き、短く揺れる。まるで羨むように。
     今どんな顔で、公園の入口を曲がる二つの人影を見つめているかきっと彼は気付いてない。家族に恵まれてない自分と似た空気を何となく感じながら、クマの遊具からいつ立ち上がろうか迷った。
    「あのさあ」
    「何だ」
    「……何でもない。それより何か食ってこーぜ。お好み焼きとか」
     普段ならからかい材料にする所を出来なかったのは仁にも痛い所があったから。新も俺も、家族の話題を不自然なほど避けていた。お互い、普通の家庭とは違う後ろ暗い訳でもあるんだろう。
     ああ、とこっちに向き直った顔はもう無表情に戻っていて、薄っぺらい笑顔の裏で俺は安堵した。
    「ちょうどクーポン券があるから使うか」
    「ドーナツにハンバーガー……えー、お好み焼きないじゃん」
    「ないな」
    「俺、イカ食いたい気分なんだよ。だからお好み焼きな」
    「……割引」
    「そんな目しても駄目。ほら行くぞー」
     クマから立ち上がる俺に合わせて、揃えて座っていた足も地面に降り立つ。不服そうに口を喋む新と公園の入口にノロノロと足を向けた。
     何だかんだ言ってもこの後一緒に鉄板を囲って、お好み焼きをつつくんだろうな。野菜が食えないとか言い出さなければ。
     お好み焼き屋でイカ玉を平らげ、ちょうど腹が膨らんだ頃、無言で新が紙ナプキンを差し出してきた。
    「口の周り付いてる」
    「ん」
     細い手首を掴んで前のめりに口を押し当てる。目を見張った新の前で無造作に紙ナプキンで拭ってから離すと、無表情な顔つきが呆れ顔に変わり、ため息を溢した。子供か、と折り畳む指先が呆れ返っていた。
    「自分で拭け」
    「あはは、新のビックリした顔ウケる。お前といると退屈しなくていいなー」
     ムッとつり上がる目に知らん顔で笑いかける。不機嫌ゲージが少しずつ上昇している新に更に畳みかけて、苛々する新にすっかりご満悦の俺といういつもの構図が出来上がり。
    「このままずっと一緒にいれたらなー……家族みたいに」
     お茶を飲む新から返事はなかったが視線はしっかりとこっちを向いていた。
    「君は家でもそのテンションなのか」
    「まさか、お前はどうなんだよ」
    「俺は……大して変わらない、と思う」
    「そっか」
     何だ、俺と違ってちゃんと家族と繋がってるんだ。
     別に寂しい訳じゃないんだな。出鼻をくじかれて、その先の言葉はとてもじゃないが言えなかった。
     ──俺とお前で家族になれたらいいのにな。二人一緒にいたら寂しくないじゃん? だから──
    「充分食ったしそろそろ出るか」
     家の中で一人だと寂しがる新はいない。それならいいんだ、お前が寂しくないなら一緒にいる必要ないもんな。
     公園での横顔を思い返しながら、ひっそりと考えていた戯れ言を一生口にすることはないだろう。

    2015.12
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