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    karanoito

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    karanoito

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    狐と鬼

    逢魔ヶ時に雪降りて

     雪だ、と彼が指差す窓の向こうはふわふわと舞う白い綿帽子で白ずんでいた。意外だ、亜空間とも呼べる校舎の外にも気象という化学変化があるのか。そう言えば雨の日もあった気がするから雪になってもおかしくないか。
     白い。窓の前で肩を並べても何も沸き立たない、ただ白いだけだ。窓枠に張り付いて離れない少年は狐面の下で口元を緩ませている。雪なんか珍しいものでもないのにうれしそうにしちゃって。
    「そんなに楽しい? 冷たいだけじゃん」
    「寒さは二の次だ。よく見てみろ一面の銀世界だぞ、何とも思わないのか? 雪合戦に雪だるま、スキーにアイススケート。やり放題だ」
    「ここじゃ出来ないけどな」
     分かってる、と声を詰まらせる狐を笑いながら、今更気づいてしまった。狐面に甚平の少年と雪の背景というミスマッチさに。なまじ涼しい格好をしているせいで周りの温度も心なしか冷えた気がして、両腕を抱いた。鬼は寒さが苦手なようだな、と得意げに意趣返しが飛んでくる。鬼は関係ないだろ鬼は。
     俺たち怪異に好き嫌いも何もない、すぐ忘れちまうんだから。
     逢魔ヶ時に雪が降ったことも、狐の怪異が人間みたいにはしゃいでいたこともみんな。
     誰だって知ってる、触れられない銀世界なんか蜃気楼と変わらないってこと。
    「後に忘れようが、今楽しいことは事実だ」
     さいでか。すぐに飽きて頭の後ろで手を組む。君が楽しいならそれでいいか。
     渡り廊下まで降りてみよう、と一人ごち、浮き足立ったまま彼は教室を飛び出して行ってしまった。
     体育館に続く廊下は外にもっとも近い場所だ、塀越しに受け止めるくらいはワンチャンあるかも。そこまで考えて、なんか人間みたいだな俺ってひとり笑った。
     さて、忘れられない内に廊下に消えた背中を追いかけるとするか。

    2016.7
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