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    karanoito

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    karanoito

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    主+A+A

    具体的にどうやって?

     一つ気になっていたんだが、とベッドの端に腰を下ろしながら口を開く。途端に集まる二人分の視線にもすっかり慣れてしまった休日の昼下がり、外はいい天気だ。
    「Aの……お前じゃない、ビンの方のAのことだ。具体的にどうやって被害者と繋がっていたのかと思ってな」
    「やだ兄さん、昼間からそんなこと……」
    「何故顔を赤らめる」
    「俺もAだからY先輩の怪談は頭に入ってますし」
     こっちのAも困ってますよ、とAの入ったビンを指差す。黒い中身に変化はないように見えるが困ってるのか。ビンの中から声は聞こえない。
     家に持ち帰ったはいいが、除霊や処分はどうしても嫌だと懇願する二人に押し負けて、そのまま棚の上に置いてある。大人しいのだけが救いだ。大人しくない方のAも何だかんだで家に居着いている。
     Aは気軽に棚からビンを下ろす。机に下ろされたビンはいつも通り黒く淀み、中は見えない。どうしても知りたいですか? と目の高さにAの中身を抱えて改めて聞き直される。そこまで念を押すとは余程厄介な方法なのだろう。
    「だったら聞かないでおくか」
    「本当に聞かなくていいんですか」
    「言いたいのか」
    「そうですね……兄さんがどんな反応するかちょっと興味が湧いてきたので。言葉通りの繋がる行為、て言ったらどうします?」
     ベッドの端に片膝を突いたAは、肩に置いた両手で後ろに倒そうとする。なるほど、繋がるには変わりない。兄弟という立場を差し置いても碌でもない方法だ。しかし嘘だろうな。
    「身体が無い弟が兄に施す術としてはおかしい気がするが」
    「多少おかしく感じても、結局これが一番手っ取り早いですから」
     実践したら分かりますよ、とAの静かな微笑みが近づき、鼻に黒い前髪が掠める寸前、滑った水音が床に落ちた。見えない足が床を踏む。ビンの方のAだ。
    「待って下さい違います、全部出たらめです。そんなことしませんから!」
     ベッドに乗り上げたAの後ろで空中に浮いた目玉は怒って見えた。落ち着きなく揺れ動き、左右に浮いた爪はおそらく腕組みでもしているのだろう。
    「全くの出たらめでもないだろう、ある程度の接触は必要だし」
    「本当か?」
    「それは……そうだけど……」
    「方法は何でもいいんですけどね、吸血でも抱擁でもキスでも。兄さんに受け入れてもらうことが前提ですけど」
     そこだけ聞くと吸血鬼を始めとする数多の化け物と大差ないな。Aが傷つくから口にはしないが。
    「でも兄さんはそれを望まないでしょう? Aのように俺のことも受け入れてくれるなら喜んでこの身を捧げるんですけど」
    「何をしようがお前の勝手だが、問答無用で追い出される心構えでするんだな」
     それじゃ意味がありません、と寂しそうに微笑ったAは耳元に呟きを残した後、やっと肩から手を離す。余計なことは言ってないだろうな、と不満そうに動くAの歯列にはどうやら聞こえなかったらしい。
     ――俺は貴方に何も出来ない、でも兄さんは俺を好きにしていいんですよ? そのための"A"ですから――
    「弟の君には関係ないことだから安心していい。だよね、兄さん?」
     微かに触れたリップ音も。
     Aに気づかれない内にこそばゆい耳たぶを拭っておいた。

    2016.11
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