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    karanoito

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    karanoito

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    ユリカロ

    イタズラの末路

    「ユーリってワガママだよね」
     下町から拾ってきた物を修繕しながら、視線を手元に落としたままカロルが呟いた。カロルの作業を端で眺めていたユーリの表情(カオ)が引きつる。
     仲間の所から戻ってきた途端それか。
     その一言に、人が群がること群がること。予想以上の大反響に、むしろ言った本人が一番驚いたくらいだ。
    「そうよね、ユーリはもうちょっと協調性を学んだ方がいいわよ」
    「この間もアデコールのこと、川に突き落としてたしな」
    「あれは税金が払えねぇから……」
    「そう言えば、知ってるかい首領さん? 昔、ユーリちゃんたらね……」
     好き勝手にある事ない事、ユーリの昔話、嘘や真実の混じった噂話など。四方八方から飛んでくる話に耐えかねて、ユーリはカロルの首根っこを捕まえて城の食堂を抜け出していた。
     廊下を抜け、階段を上った所で止まるとカロルから手を離す。
    「カ〜ロ〜ル〜?」
    「うわわっ、そんな怒んないでってば……軽いお喋りじゃない? ね、穏便に行こうよ……穏便に」
     後退り、壁に背中をぶつけるカロル。じりじりと退路を断つように一歩一歩にじり寄る。
     ユーリが壁に手を突いた時、完全にカロルは怯えて縮こまっていた。
     追い詰めた後は軽くお仕置きでもしとくか。
     ニタリと獲物をいたぶる肉食獣の笑みがゆっくりと耳元で囁いた。
    「なあ、キスしてくれよ。カロル先生? それで全部帳消し。カンタンでいいだろ?」
    「ええっ……だだ、だって、へ、兵士の人いるのに、そんなの……ムリだよぉ」
    「してくれるまでココから退かない」
     そんなぁ〜と涙目になるカロルを見るだけでも楽しいが、もっともっと苛めたくなって、ユーリは悪乗りを始める。
     耳に息を吹きかけたり、恥ずかしがる台詞を囁いたり、首筋に噛みついたり。やりたい放題だ。
    「や、止めてよユーリっ! み、見られてるからっ……あ、ちょ……や」
    「する気になったか?」
    「だ、だからココじゃムリだって……ん……っ!」
     真っ赤になったカロルが見上げてきた隙を逃さず、顎を掴んで口を重ね合わせる。
     成り行きを見守って(?)いたドアの見張り兵が僅かに肩を揺らし、静かな廊下に鎧が鳴った。
     ほぼ同時にユーリの頭に鈍い衝撃が落ちる。
    「二人共、スキンシップなら場所を選んでほしいものだけど、これはどっちなのかな……もし無理強いしているのなら立派な暴行だけど。詳しく話を聴かせてもらっても構わないかな? ユーリ」
    「げっ、フレン? そういやお前の部屋すぐそこの……だったっけか」
     殴られた衝撃で思い出した、フレンの部屋は城の二階にある。すぐ側に見えている見張り兵の立っているドアがそうだ。
     先ほどの兵士は上官の隊長に敬礼していたのだ。
    「で、これは一体どういうことなんだい? ユーリ」
    「いや、待て誤解だ。話せば判る……」
    「……フレン、こんなユーリなんか放っといて行こ。あのさ、ボクお城に来るの初めてなんだ、おすすめの場所とかある? 明日出発したらしばらく来れないし、いい所あったら見ておきたいんだ」
    「だったら僕の部屋はどうかな。窓から見える夜景は中々綺麗だし、そのまま休んでいくといい。ベッドも大きいから二人で寝ても狭くないし、心配要らないよ」
     フレンの申し出に、うん! そうする。と二つ返事で飛びつき、スルリとユーリから離れ、フレンに腕を絡ませた。
     じゃ行こうか、とちゃっかりカロルの肩を抱いてフレンの部屋へUターンする。
     口を挟む隙も無い。
     ドアをくぐる瞬間カロルがあかんべえ、と舌を出していたのが何より悔しくて、可愛らしくて。ユーリは深くうなだれるしかなかった。

    2011.2
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