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    karanoito

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    karanoito

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    プレセア&カロル ユリカロ前提TOW3

    思いをこめて

     木で人形を彫るのは初めてだ。
     一回削ってはあなたを思い、一回削る度にあなたの顔に近くなる。
     出来上がったら御守りにしよう。
     誰にも見せない、悟られない思いを込めながら、ナイフを握るプレセアの足元に削り滓が増えて行く。
     もくもくと作業に耽る手の中で木片が人の形に近付いていく度、ワクワクしてきた。
     上手に出来るだろうか。
     完成したらあの人に少しでも近付ける気がする。
     近付きたい。
     遠くで見てるだけじゃなく、あの人の事をもっと知りたい。
    「プレセアー? あ、いた」
     突然声を掛けられて、プレセアの肩がびくりと震えた。手を止め、顔を上げるとギルドのメンバーの一人であるカロルが小走りに駆けてくる所だった。 
     気取られないように人形を大事に仕舞い、ナイフをベルトに差した。
    「お帰りなさい。クエストから戻って来たんですね」
    「うん、素材集めて来たんだ。魔物も居るから大変だね、後ろから襲われそうに──」
    「カロル。お喋りは後でな」
     伝言あるだろ、と彼の後ろから長身の青年が頭を軽く叩く。そうだった、とカロルが思い出して伝言を口にした。ジーニアスが呼んでると。
    「探してるみたいだったよ。ホールに来て欲しいんだって言ってた」
    「分かりました。片付けたら行ってみます」
    「バカ広いからなこの船、人探すのも大変だ」
     言ってからユーリは周りを見渡し、プレセアが座り込んでいた甲板から船の端を見た。
    「迷子になっちゃいそうだもんね」
    「あーそうだな、カロル先生来た時思い出すな。部屋に戻れなくて半泣きだったっけか」
    「な、泣いてなんかないってば!! もー、ユーリのバカっ!」
     意地悪く、しかし愉しそうでもある笑みを浮かべるユーリにカロルが頬を膨らませた。
     仲の良い兄弟のようで微笑ましい。
     笑みを含み、削り滓を片付けて立ち上がった。
    「お手数おかけしました。私はこれで」
     お辞儀をしてプレセアが顔を上げた所で、あ、待って。とカロルが腕を掴んだ。
    「ゴミ、付いてるよ。ちょっと待ってね……」
     グローブに付着していた削り滓を手の平に乗せ、はい! 取れた、とはにかんで微笑った。
     その笑い方があの人と重なる。頬が熱くなるのが判った。
    「……ありがとう」
     照れたように頬を赤らめ、プレセアが笑顔を返し二人で微笑い合っていると、刺々しい視線が突き刺さった。
     視線を辿れば、苛立ったように腕を組んで僅かに眉を勧めて、こちらを見ているユーリ。
     ……嫉妬八十パーセント、嫌悪感十七パーセント。よって、嫉妬心で睨んでいたと判断。
     年の離れた兄弟みたいだと思ったが、カロルはともかく彼の方は少し違うようだ。
     その眼差しに含む理由を正確に分析して、
    「心配しなくてもいいと思います」
    「ん?」
    「私は、別に取ったりしませんから」
     “お姉さん”の表情で微笑みかけるプレセアにまともに面食らって、ユーリは目をしばたかせる。それでは、と扉をくぐりホールに向かった。
     ジーニアスと話しているあの人の姿に目を細め、お待たせしましたと二人に駆け寄って行く。

    2011.7
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