Sadman
ギートは寂しくないだろうかと、褐色の背中が時折寂しそうに、灯台の方を眺めてるのを知っている。
そんな彼に掛ける言葉をずっとジェイは模索していた。
「モーゼスさん」
なんじゃと振り返るモーゼスの片目に真っ直ぐに射抜かれる。
悩んだ結果、慰めの言葉より行動に出る方がよっぽど自分らしいと気づいたジェイはいつものように振る舞い、軽口を叩く。
ジェイがからかい、モーゼスがそれに乗って口を曲げる、見慣れた光景がすぐに出来上がる。
心配しているとは微塵も出さずに、締めに少しだけらしくない行動を取った。
モーゼスの骨ばった手を掴み、頭の高さに合わせて、
「……ぼく、身長ってそう高くありませんよね」
「そがあな事気にしよったんか。大丈夫や、その内伸びるよって」
「そうじゃなくてですね……」
「あ、違うんか?」
「だから、その……ギートと高さもあんまり変わりませんし代わりに……」
撫でても構いませんよ、と握った手に力を込めてから、ジェイは横に視線を逸らした。
やっぱり柄じゃない。照れくさくて顔が見られない。
ジェイも幼い頃からモフモフ族の皆と一緒だった。
だから仲間の誰より、ギートと別れたモーゼスの寂しさが解るような気がする。
「大丈夫じゃ、ジェー坊は必ず大きゅうなるさかい。安心せえ!」
「なっ……誰もそんな事言ってませんよ! ぼくはただ」
「だから、それまでこうしてええんじゃろ?」
白い手を握り返し、骨ばった手がジェイの体を引き寄せた。頭を撫でてもいいとは言ったが抱擁しろとは言ってない。
でも、これで落ち着くならそれでもいい。
「……頭くらいならいつでも貸しますから」
助かるけぇの、の一言と共にジェイの髪を骨ばった大きい手が優しく撫でた。
2014.5