おやすみ(明日も明後日も明明後日も) 狡噛のこめかみには弾丸がかすった傷跡がある。あと数ミリずれていたら、脳を傷つけて紛争地では助からなかった傷跡がある。俺は彼と寝る度にそれに触って、あぁ、狡噛は生きているのだと思わされた。狡噛は生きている。俺を置いて行ったりはしない。何度も確かめたのに、俺はその傷を触る度に、もし弾丸がここじゃなく違う場所を撃っていたらと思わずにはいられないのだ。自分も任務では大概無茶をしたくせに、俺は恋人が馬鹿をやったことを今でもいくらか恨んでいる。
「ギノ、くすぐったい……」
眠そうな声が聞こえる。それは恋人の声で、低くて、腰に響いて、誰のものより美しい声だった。俺が好きな声だった。それは俺を抱きしめるように響き、俺は彼の背中に腕を回す。
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