食べたいものがあるんです、そう誘われて今日は浅草に来ていた。
俺も、清澄がなんの食べ物に興味を示したのか気になって、わくわくしながら同行した。
和菓子とかお茶関係かな、うーんそれじゃあいつも通り過ぎるかな?
様々な魅力的な店を越えてたどり着いたのは、一軒のジェラート屋さんであった。
「清澄の食べたかったものってアイス?」
「ええ、こちらのお店には世界で一番濃いとされる抹茶のジェラートが食べられるんだそうです」
世界で一番!それは清澄なら気になるわけだ。
店頭には緑のグラデーションのように美しくジェラートが並べられていた。
「わたしはこの、No1とNo7にいたします」
No1は一番甘くて、No7は一番抹茶が濃いフレーバーだ。
「お!俺も同じにする!」
店員さんに頼んで2つのフレーバーを選ぶ。
滑らかで繊細なジェラートは、店員さんの手でみごとに器に盛られていった。
「おー!すごい美味しそうだね、清澄」
「はい、食べるのが楽しみです」
明るい緑と、お茶の葉のように暗い緑のジェラートが肩を寄せている。
スプーンでひとすくい、No1のフレーバーを口にしてみる。
一般的な抹茶のアイスって感じだ。本格派っぽい味わいは残しつつ甘くて食べやすい。
次いでNo7も試してみる。こちらは甘みの中にも抹茶特有の苦さも混じって絶妙な味わいとなっている。思ってたより苦くなくて安心した。
「どっちも美味しいね?」
「はい、どちらも抹茶の良さを引き出している素晴らしいお味です」
ジェラートを頬張った清澄はとても幸せそうだ。
本当に好きなんだな、抹茶。
俺は溶ける前にと急いで手を動かす。
甘さと苦さのハーモニーが口の中で交わって溶けてゆく。
気がつけば、手元の器からジェラートはすっかり姿を消していた。
「美味しかったね、清澄」
「はい!とても満足しました」
店員さんにお礼を言って店から出ていく。
清澄はかなり満足したみたいで目元がゆるゆるになっていた。
浅草には美味しいものがたくさんあって、どれも魅力的で目移りしちゃうけど、清澄と今日食べた抹茶のジェラートはまたひとつ忘れられない味となって二人の思い出の中に増えたんだな、そう思うとなんだか擽ったかった。
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