「お誕生日おめでとう!」
事務所にクラッカーの大きな音が響いて、本日の主役は目を丸くしてぱちぱちと瞬きをしていた。
「びっ……くりした〜〜!!」
大きなケーキを持った握野さんの姿を確認すると、状況を理解した木村さんは目を輝かせてくしゃっと笑った。
「さあ龍、ローソクを消すんだ」
「一息でいけるか?」
信玄さんと握野さんが囃し立てるように声を掛ける。
その様子が仲の良い三兄弟のように見えて、私はくすりと笑ってしまった。
清澄もどうだ、と握野さんからお声がけをいただき、私は事務所で行われた木村さんの誕生日会にお呼ばれしていた。
プロデューサーさんや山村さん、FRAMEのみなさんに囲まれた木村さんはとても嬉しそうで、見ているこちらが幸せな気持ちになってしまう。
握野さんオススメのケーキ屋さんで選んだというデコレーションケーキはローソクが吹き消されるのを今か今かと待っていた。
「よし、いきます!」
木村さんが大きく息を吸って火を吹き消す。
仄かに煙の匂いがして、20と書かれたローソクの炎はすっとかき消された。
「おめでとう、龍」
「おめでとう!」
二人からプレゼントを手渡され、満面の笑みを浮かべる木村さんを遠くから見つめる。
FRAMEの中では一番年下である木村さんを中心に囲んだ誕生日会は賑やかに進んでいた。
私は皆さんにお茶を淹れようと給湯室に向かっていった。
ケーキを取り分けているところにお茶を渡し終わると突然、握野さんにとん、と背を押された。自然と木村さんの目の前に歩み出る形になる。
「ほら、九郎」
周囲の視線がさっと私に集まる。ここにいる人たちは私と木村さんが最近お付き合いを始めたことを知っているから、握野さんの意図に気づいているのだろう。
「木村さん……」
遠くで見ているだけでよかったので急に人前に立たされ頭が真っ白になってしまう。木村さんの期待の篭った目線を感じて、全身がかあっと熱くなった。
「木村さん、お誕生日おめでとうございます…!」
絞り出すようにそう伝えると、木村さんはまるで花が開くような晴れやかな笑顔になった。
「き、清澄……!!」
まだ手も繋げない私たちは真っ赤になりながら目線を合わせ、照れ笑いをすることしかできなかった。