文箱の蓋を指先で撫でる。
月明かりすらない新月の夜、雪灯も届かず仄暗く揺れる蝋燭の灯りが私の影を揺らす。
箱の中に、私の魂の中に、君から貰った物は全て閉じ込めた。
幾度問えども返ってくることはなく、それでも日々奏でている琴の音は私の執着。
哀しい音と誰かが言った。
「魏嬰……」
君に再び会えたなら、永遠に隣に立つと誓うから。
外からの子弟が呼ぶ声に瞳を伏せ立ち上がり、扉へ向かった。
魏嬰ーー今度こそ離しはしない。
君を求めて伸ばした手は、ただ暗闇を掴んだ。
文箱の蓋を指先で撫でる。
開け放った窓から賑やかな鳥の囀りが聞こえ、春の陽気がふわりと私の髪を揺らす。
箱の中に、私の魂の中に、君から貰った物は全て閉じ込めたつもりだった。
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