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    ガストお誕生日おめでとう!!
    (R18ほどではないですが、後半わりといちゃいちゃしているので苦手な方はお気をつけください)

    🍃🌹 タクシーのリアウインドウ越しにレッドサウスストリートの街並みを眺める。もうすぐ日付も変わろうかという時間なのに、バーの看板は煌々と明かりを灯し、路上では若者たちが瓶ビールを片手にたむろするいつもと変わらぬ風景だ。
     アルコールでふわふわとする思考と火照る頬を冷ますように、ガストはリアウインドウに頭を預けた。車内の効きすぎた空調に冷やされたガラスは心地よくて、目を閉じたら眠ってしまいそうだ。ポケットを探ってスマホを取り出し、ロック画面で時刻を確かめる。《23:07》、なんとか約束の時間までに間に合いそうでガストはほっと胸を撫で下ろした。明かりを落とした車内で眩しく光るスマホのロック画面の写真は、先月行ったばかりの海の写真だ。白い砂浜と砕ける波、波打ち際に並べられたサイズの違うビーチサンダルが二足。ガストは小さな方のビーチサンダルの上を指でなぞってロックを解除し、通話アプリを立ち上げた。通話履歴の中で一番多く表示されているその名前をタップして、待つことたったのワンコール。ガストが今一番聴きたいと思っていたその愛おしい声に自然と頬が緩む。
    『おかえり』
    「ただいま、まだタクシーの中だけどな〜あと15分か20分」
    『オマエ相当酔ってるだろ、間の抜けた喋り方するな。それよりタクシーの中から掛けてくるなよ、運転手さんに迷惑だろ』
     咎めるような物言いとは裏腹に、マリオンの声は優しい。こんな時間にスマホを手元に置いてガストからの連絡を待っていてくれたのかと思うと、充足感に満たされて体の内側がじわじわと熱を持つのを感じた。
    「マリオンの声が聴きたかった」
    『な……』
    「心配しなくても知り合いのタクシーに乗せてもらってるから大丈夫だぜ。俺のsweetがマリオンだってことわかってるからさ」
     信号待ちでタクシーが停まると、運転手がこちらを振り返り「ガストさんのsweetちゃん、ご機嫌ななめっすか?」と笑いながら言う。セブンスリーバングスのメンバーのひとりで、「ヒーローになったガストさんを見て自分もなんか変わりたいって思ったんすよね」とタクシー運転手として働き出した男だが、いまでも時々チームの集まりに顔を出す気のいいやつだ。ガストは軽くウインクをして揶揄う声に答え、硬い後部座席のシートに深く身を預けた。
    『オマエまだその名前でボクのこと登録してるのか?仲間たちに着信履歴を見られてひと騒動になったって言ってたくせに』
    「ひと騒動になってなんだかんだで弟分たちには洗いざらい白状したから大丈夫だって。仲間の秘密に関しては口が硬い連中だし、どこかに漏らしたりはしねぇよ。もう隠してもおけねぇし、俺がマリオンのこと愛してるってこと」
    『調子に乗るなよ、酔っ払いが。いくら口が固くたって秘密は知ってる人が少ない方が秘密のままにしておきやすいだろ!』
    「エリチャンで俺の弟分に突然DMしたsweetちゃんに言われてもなぁ」
     マリオンが電話の向こうで一瞬小さく唸って黙り込む。彼は今どんな顔をしているんだろうか。血の上りやすい顔を赤く染めて、言い訳を探す子どもみたいに視線を迷子にしているかもしれない。クールビューティーと表現されることもあるマリオンだが実はとても感情豊かで、一緒にいるとくるくると表情が変わる。ガストの言うこと、すること、そしてガストが注ぐ愛によって色々な顔を見せてくれるマリオンの一挙手一投足全てを愛おしいと思う。
    『ジャクリーンが、オマエを祝うパーティーがしたいって言うから……』
     そう、ジャクリーンの可愛らしいお願いにめっぽう弱いマリオンは、ガストの誕生日パーティーをしたいというジャクリーンの希望を叶えるために、エリチャンでセブンスリーバングスのメンバーに連絡を取ったのだ。「誕生日当日はノースのチームメンバーとボクの家族でお祝いがしたいから、ガストと飲む予定を入れないで欲しい」と。研修チームの連中に祝ってもらえるとは思っていなかったので正直かなり嬉しかったし、マリオンの行動力にも感服した。ただ、いきなりマリオンからDMを受け取った弟分たちの動揺は尋常ではなかった。あまりにも様子がおかしいのでどうしたのか尋ねたのだが、誰に聞いても「詳しいことはまだ言えないんすけど、今年のガストさんを囲む会はカウントダウン前祝いにするんで!」の一点張り。念には念をと早めにガストの誕生日当日の予定を確保したマリオンのおかげで、事の真相はジャクリーンから招待状を受け取るまでの約2ヶ月ほど謎のままだったのだ。
    「明日のパーティー楽しみにしてるぜ。でも弟分たちは『ガストさんの通話履歴のsweetちゃんと、DMをくれたsweet_marionさんが同一人物だなんて思わないじゃないっすか!?』って大騒ぎしてたけどな〜」
    『うぅ……、オマエがそんな名前で登録してるのが悪い!』
    「はいはい、俺が悪いよ。大好きだぜ、マリオン」
    『酔ってるからって適当なこと言うな!頭冷やしながらレッドサウスからタワーまで歩いて帰ってくればよかったんじゃないか?だいたいルーキーのくせに深夜のタクシーに乗るなんてナマイキだ、夜間割増料金で破産しろ……!』
    「お金は意外と貯まってるんだぜ。デート相手が高級フレンチでもせがむような子だったらたくさんお金も出てくんだろうけど、かわいい恋人がパンケーキばっかり食べたがるからさ。本当にかわいいんだよな、俺の恋人。ホイップクリームとフルーツに目をキラキラさせてさ、小さな口を一生懸命開けてパンケーキ食べるんだよ。口が小せえんだから2段重ねくらいにしとけばいいのに、甘いものに目がなくて3段のパンケーキ頼むんだよな〜」
    『〜〜〜〜っ!もうオマエ黙れ……帰ってくるな!』
    「俺は今すぐ帰ってマリオンを抱きしめたい。こんな時間まで飲んでおいてなんだけど、少しでも早くお前の顔見たいって思ってる」
     高くそびえ立つエリオスタワーはもうあと数ブロック先に見えている。調子に乗りすぎてマリオンに帰ってくるなと言われてしまったが、あれは怒っているというより照れているんだってことは分かっていた。
    「あと数分もしないでタワーに着くぜ。高層階行きのエレベーターが全部一階に停まってるように祈っててくれよ」
    『…………セダンタイプ、黄色の車体で上のライトは黒地に白抜きの文字、ダッシュボードに写真が置いてあって、ナンバーはRS1218…………ボクは107階にいる』
     そういえば前に一緒に買い物に行った時、帰りにこのタクシーを呼んだことがあった。あの時は久しぶりのポップコーンパーティーに張り切ったマリオンがいろいろと買いすぎて、タクシーでタワーに戻ろうとガストが提案したのだった。ダッシュボードの写真には気がつかなかったが、マリオンは乗り慣れないタクシーの中を興味深げに見回していた気がする。
     まもなく車はタワーの車寄せに到着し、ガストは料金を支払おうと身を乗り出した。ダッシュボードをちらりと見ると、そこには赤ん坊を抱く幸せそうな笑顔の女性の写真が飾ってある。ガストは通話は切らずにスマホをポケットに入れると、財布から紙幣を多めに出して昔馴染みの運転手に渡した。
    「これ、口止め料も含めてだからよろしく頼むぜ。遅い時間までパパを借りることになっちまって悪かったな……」
     ドアを開けて車外に降りると、湿気をはらんだ夏の夜の空気が冷えた肌に纏わりつく。「仕事なんだから気にしないでくださいっす、またマリオンさんとのご乗車お待ちしてますんで!」という声掛けに手を軽く振って感謝を伝え、再びスマホを耳に当てながら入館証をかざしてタワー関係者のエントランスを通る。
    「お、ラッキーだぜ!ちょうどエレベーターが到着したとこだった!」
     ガストは閉まりかけたドアに足をねじ込んで、107階のボタンを押した。高層階用エレベーターは勢いよく上昇し、恋人が待つフロアにガストを運ぶ。エレベーター内の案内表示が示す時刻は《23:26》、「オマエが誕生日を迎える瞬間は一緒にいたい」という恋人の可愛すぎるおねだりを叶えることができそうだ。
    『……今日はオマエが酒臭くても、キスしてやってもいい』
    「キスだけか?」
    『どうせアルコールを飲みすぎてるんだろ、それに明日もパトロールだからキスしかしない』
    「じゃあキスして、それから首にキスして、胸と腹にキスして、それから後ろから抱きしめて頭から背中までキスする」
    「少しは下心を隠せないのか、このヘンタイ」
     エレベーターが減速して107階に到着する。ガストははやる気持ちを抑えきれず、開きらないエレベーターのドアからフロアに出て足早に歩いた。耳元のスマホと、それから少し離れた談話室からマリオンの声が少しずれた音で聴こえてくる。向こうももう、フロアを歩く足音に気づいたのだろう。通話が終了し、ロック画面にはまた海の写真が表示された。
     入り口に《本日パーティー準備のため貸切中》と書かれた紙が貼られた談話室を覗くと、眼下にニューミリオンを一望できる天井から床まで全面ガラス張りの窓辺に、マリオンがひとり膝を抱えて座っていた。どのくらいの間、そこでガストの帰りを待っていたのだろうか。駆け寄りたい気持ちを抑えながら、ガストは机の間を縫うように窓際まで進んだ。
    「ただいま、マリオン」
    「おかえり、誕生日おめでとう」
    「まだあと30分くらいあるけどな」
     マリオンがす、と立ち上がり、ガストの腰に手を回す。押し当てられたマリオンの体が空調で冷え切っていることに気づき、ガストは小さく薄い背中を掻き抱いた。
    「酒臭い」
    「酒臭くてもキスしてくれるんだろ」
    「ん」
     マリオンがキスをねだってガストの方に顔を向ける。嬉しさと心細さが混ざったようなマリオンの瞳を見て、ガストは噛み付くようにキスをした。その勢いにのけぞったマリオンの後頭部が窓ガラスに当たり少し鈍い音を立てたが、マリオンもそれを気にする様子はなく、ガストの首に腕を回し更に口づけが深くなる。眠らないニューミリオンの煌めく夜景を背にして、白い肌を興奮で赤くしながらキスを求めるマリオンは言葉にならないほど綺麗だった。
    「んぅ、……ガスト、あと何分で、ひづけがかわる?」
    「わかんねぇ」
    「8月27日に、なった瞬間に……っ祝いたい、」
    「祝うって、どうやって祝ってくれるんだ?」
     ガストは熱くなり始めたマリオンの肌に手を這わせながら、首筋に吸い付くようにキスを落とし続けた。
    「おめでとう、って言って、あ、あとは…キスしたり、とか……あっ」
    「じゃあ0時までずっとおめでとうって言いながらキスしてくれよ、マリオン」
    「んっ……あっ、ガスト……おたんじょうび、おめでとう……」
    「ありがとな、マリオン。なぁ、キスだけじゃ足りないんだけど」
    「そう、言うと思ったから、っ……ベッドじゃなくてここに、よんだんだ」
     自分だって気持ちが昂っているくせに、下心を持って肌に触れるガストの手が与える快感に堕ちないように、マリオンが体を捩ってこちらを睨む。
    「俺は別にベッドがなくたって、立ったままでもいいけどな」
    「パーティー会場をよごしたら、許さない……っ」
    「分かったって、楽しみは明日のパーティーの後に取っておくな」
     これ以上戯れを続けたらガストも止まることができなくなりそうだ。名残惜しくはあるが、マリオンの肌を撫でていた自分の手を、滑らかでうっすらとバラ色に染まる頬に添えて軽く触れるだけのキスをする。その時、夜景を形作る光のいくつかが一斉に消えた。
    「お、もしかして0時か?……って!なんだ!?」
     唐突にマリオンがガストの首に回した腕に力をこめて、小さくて柔らかい唇をぎゅっとガストの閉じ切らない口に押し付ける。今度はあわやガストが窓ガラスに頭をぶつけるところだった。マリオンがガストの上唇を食むように口付けるので、ガストは舌を伸ばしてマリオンの唇を弄ぶようにキスをする。必死に縋り付いてくる腕や、慈しむようにガストの唇を舐める舌から、マリオンがガストを好きだと言う気持ちが流れ込んでくるようだ。
    「ガスト、お誕生日おめでとう……あいしてる」
    「俺も、愛してるよ、マリオン」
     ふたりの体温はいつの間にか同じくらいになっていて、空調の効いた室内でも溶けてしまいそうなくらい熱をもっている。
    「あ〜〜〜〜好きだ、マリオンーーーー」
    「ウルサイ、何時だと思ってるんだ」
    「0時ちょっとすぎだろ。かわいい恋人が一番に誕生日を祝ってくれるって言うからこんな時間に談話室でキスしてる」
     マリオンが照れ隠しでガストの脛を蹴ってくる。さすが体力オバケなだけあってかなり痛いが、恥ずかしさからガストの胸に顔を埋めるマリオンの頭頂部をこんな角度から拝めるのは自分だけだと思うと、最高に気分がいいので全てを許せるのだ。
    「明日パーティーが終わって片付けが済んだら、またここに来い……。遅い時間になってしまうけどホテルを予約したんだ、夜はいっしょにいたいと思って……」
     予想外の誕生日プレゼントにガストは天を仰ぐしかなかった。
    「予約しとくか、タクシー。またマリオンと一緒に乗ってくれって言われたし」
     二日連続の夜間の予約だ、ちゃんとチップと口止め料をはずむことにしよう。あとは家で待つ家族のために、ジャクリーンに相談しながらパーティーで出されるお菓子を少し取っておくのもいいかもしれない。
     マリオンがガストの唇を薬指で触りながら、疑うような眼差しを向ける。
    「タクシーがあると思って、酒を飲みすぎないなら」
    「そうするよ、マリオンのことたくさん愛したいからな」
     夜が明けたら今日もパトロールだってことはガストも承知している。それでもなかなか離れ難くて、マリオンを抱きしめたまま、何度も何度もキスをしてしまう。マリオンが優しく諭すように、ガストの頬にキスをして囁いた。
    「続きは今日の21時に、約束だ」
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    Replies from the creator

    晴れ🌞

    DONE青の街にてお茶会を開催ありがとうございます!

    ホワイトデーまではバレンタインだし、無自覚両片思い強化月間です!
    🍃🌹「いや、お前らが気にすることじゃねぇって。マジで」
     空が白み始めたニューミリオンの大通りを、ガストはひとり足早に歩いていた。

     冷え切った朝の空気は鼻の奥を刺すみたいに冴えていて、呼吸するごとに肺がじわりと熱くなる。昨夜の酔いはすっかり覚め、残るのは鈍い頭痛と少しの後悔。吹く風に背中を丸めると、上着のポケットの中でクラフトビールの王冠がかちゃりと音を立てた。
    「ふたりで一度にしゃべったら何言ってるかわかんねぇよ。あー、まぁ後で俺も覚悟決めて見てみるって。飲みに付き合ってもらってサンキューな」
     ロイとチャックからかかってきた通話を終わらせると、ガストはスマートフォンのディスプレイのメッセージアプリに付いた、たくさんの通知にため息を吐いた。届いたメッセージは開く気になれない。反応したら最後、何人かの同期たちにとっておきのおもちゃとして扱われるってわかっているからだ。溢した白い吐息が空気に溶けぬうちにまたひとつ、メッセージを知らせる通知が表示される。こんな早い時間に事をおもしろがって連絡を寄越してきたのは、やはりと言うべきかニューミリオンきっての情報屋を自称するガストの同期だった。茶化すようなメッセージに続いてSNS投稿記事のリンクが送られてくる。
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    晴れ🌞

    DONE捏造しかない研修チーム2年目の春
    無自覚にマリオンを好ましく思っているガストと、一歩踏み出したいかもしれないマリオンと、ほんのり甘いイチゴタルトのおはなしです

    DMH3の展示で掲載していました!見てくださった方、いま見にきてくださった方、ほんとうにありがとうございます!!
    🍃🌹 甘い、甘い、小麦粉と砂糖と卵の匂い。
     ノースセクターの共同スペースが焼きたての空気で満たされている日は、マリオンの機嫌がいい日だ。
     昼までのパトロールの後、弟分たちとのランチと買い物で束の間の休息を楽しんだガストは、陽が落ちる前にタワーに戻った。マリオンから明日も早い時間のパトロールなんだからあまりハメを外さずに早めに帰れと釘を刺されていたし、配属から一年半ほど経って、早出のパトロールの前の晩にアルコールを入れるものではないということくらいガストももう分かっている。
     帰りに寄ったスーパーマーケットで買ったものを冷蔵庫に入れようとキッチンへ行くと、そこには真剣な面持ちで鍋をかき混ぜるマリオンの姿があった。マリオン・ブライスは真面目で几帳面なようで、意外と大雑把なところもある。シンクには半分に割れた卵の殻がいくつも転がっていて、なんとなくガストは微笑ましい気持ちになった。時折マリオンがポケットにものを入れたまま洋服をクリーニングに出してしまって、ジャックに注意されているのを見ることもある。隙のない見た目とは裏腹に、マリオンにはそんな抜けたところもあることを、共に生活する中でガストは知った。
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