🍫 カフェの店内はコーヒーとおしゃべりを楽しむ人々の心地よい賑やかさと、焼き上がったばかりのペストリーの匂いが暖かく満ちている。
ガストがオーダーを伝える前に、赤いエスプレッソマシンを操るバリスタはミルクのスチームを始めたようだ。ポケットの中のコインは冷蔵庫に入れっぱなしにしたバターナイフくらい冷えている。カフェラテの代金を指先で探すのに手間取るガストに、店員が「いつもお疲れさまです」と声をかけ、ウインクをしてみせた。見つからない50セントを代わりに出したのはガストの後ろにいた客で、カウンターにコインを置いた爪の整った指先を見て、ガストは頬を緩めた。
「サンキューな、マリオン」
ガストは探し当てた小銭で、レジ横のバスケットに積まれた小さなチョコレートを買った。
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