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    ヤンデレ先生の可能性を考える/鍾タル

    タルがモブとの恋愛を仄めかします。捏造など諸々許せる方のみどうぞ。

    #鍾タル
    zhongchi

    窓の外の俺を認めるなり、深海の瞳が見開かれる。寒いから入れてくれ、とジェスチャーで伝えれば慌てたようにドアが開いて、記憶の中と寸分違わぬ青年が現れた。
    「鍾離先生!? 久しぶりだね……!」
    「……ああ、久しいな。ここ50年ほど、会っていなかったか」
    「はは、当たり前だけどあの頃と同じ姿なの先生だけだよ。いや俺も、もしかして変わってない?」
     そうだな、と頷きながらも招き入れられた家の中は、雪国らしく大きな暖炉があって──その上に置かれていた写真立てには、愛らしい女性の笑顔がある。ただ少し、色褪せが始まっているだろうか。
    「まさかスネージナヤまで来てくれるとは思わなかったよ、嬉しいなあ」
     言いながら差し出されたココアを飲みながら、見つめた彼の目はほんの少し赤い。うっすらと浮かぶ寝不足の証も僅かな鼻声も、理由を知っているからこそ問うことはしなかった。
    「……ねえ、先生。俺ほんと、どうしちゃったんだろうね」
     スネージナヤには不老不死の男がいる、という噂話をたどり、彼を訪ねてここまで来たが。うつむく彼の言葉は重く、俺は静かに目を伏せた。
    「……お前は人外に好かれやすいのかもしれないな」
    「はは、冗談。俺のことまで人外にするほど、誰かに気に入られてた覚えはないよ」
     笑いはすれど、言葉が終わればすんと表情が消える。そうしてぽつりと、俺の知らない女性の名を呟いた。
    「……死んじゃったんだ、俺のことを置いてさ。一緒に歳をとっていけると、ずっと思ってたのにさ」
    「そうか」
    「それにさ、家族もみんな死んじゃった。俺はいつまでも若い姿のまま、ずっと死ぬことも、できないまま」
    「……公子殿……」
     そうして初めて、俺は彼の涙を目にすることになる。はは、とこぼれたかすれ笑いが、じわじわ涙に湿っていって──どうして、と頬を流れていく雫を、俺は無言のままぬぐってやった。
    「先生が変わってなくて安心したよ、これで先生まで死んじゃったら……俺、もうひとりぼっちだ」
    「……そうか」
     言いつつそっと目をそらす。その動きに彼はびくり、と肩を震わせた。
    「……え、先生?」
    「いや、お前が心配するようなことは何も、ない」
    「違うでしょ、絶対後ろめたいことあるよね先生……まさか死んじゃうの、俺のこと、置いて」
    「落ち着け公子殿、俺はまだ何も」
    「嫌だ、もうひとりは嫌だよ先生……! いかないで、いやだ、いやだ……」
     そして溢れたその慟哭は、きっと俺が来るまでずっと、どこにも出せず彼が抱えてきたものだろう。俺の胸にすがりつき泣くその姿を、哀れだと思うと同時に──仄暗い歓喜が、音もなく胸中に灯った。
    「……実はな公子殿、今回俺がスネージナヤに来たのは理由があるんだ」
     だから口角が上がりそうになるのをこらえて、彼を「つくり変えた」側として。責任を取ろう、元とはいえ契約の神なのだから。
    「俺の隣で、生きるつもりはないか」
    「え……?」
    「最近俺も、周りの顔見知りが命を落とし続けていて……寂しく思っていたところだったんだ。そしてお前は、俺に置いていかれるのが怖い。利害は一致するだろう?」
    「一緒にいて、くれるの……」
    「もちろんだ。俺もお前を失いたくはないからな」
     言って微笑む俺の姿は、公子殿の目にどう映っているのだろう。原因が俺にあるとも知らず、いつか流し込まれた神の力で変質した体に涙する彼が──どうしようもなく、愛おしいと思う。
     公子殿が頷く。約束だよと泣くその心は既に限界だろう。それでようやく俺は彼にとって、無二の存在になれるのだ。
     だからと彼を抱きしめた。そろそろと抱きしめ返されて、今度こそ笑みを隠しきれない。
    「永遠に、共に在ろう」
     最後にこの手へ落ちるなら、過程はなんでも構わない。だって俺には──否、俺たちには時間があるのだから。
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    makulakamakula

    DONEクリスマスだってのにバレンタインネタ(書きたかったから)
    勢いで書いたので誤字脱字はご容赦下さい。

    パスワードについては次の問題の解答(数字のみ)となっております。

    ガイアくんがラグヴィンド家から家出して毎分80mで歩いて行った。ディルックおにいちゃんがそれに気づき5分後に毎分100mで追いかけた。
    ディルックおにいちゃんがガイアくんに追いつくのはディルックおにいちゃんが出た何分後か。
    薔薇の秘密 温暖な気候とはいえ二月のモンドは寒い。
     ここ数週間でモンドでは風邪が流行し、そしてそれは、西風騎士団も例外ではなかった――

     体がだるいような気がする。
    ただの疲労とは違う気怠さを自覚しつつ、騎兵隊長ガイアは一人黙々とペンを走らせていた。流行り風邪のせいで執務室から一人、また一人と騎士団員が姿を消し、常に人手の足りない西風騎士団は今なら本気で猫の手を借りたいほどに忙しい。何なら今からキャッツテールに行って仔猫を借してくれとお願いするのも有りかもしれない。誰かさんが常日頃から『騎士団は仕事の効率が悪い』と毒づいていたが、いやこれはほんとにまったく、その通りだとしか言いようのないくらい、効率が悪い。
     ふいに目元が霞んで顔を顰めた。ペンを置いて目頭を揉み解すも、数日ベッドで寝た記憶の無い体にはもはや何の効果もない。眠気覚ましにとノエルが淹れてくれた紅茶もすっかり冷たくなり、これはこれでまぁ眠気覚ましと言えるかもしれない。
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