Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    のくたの諸々倉庫

    推しカプはいいぞ。

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 57

    ヤンデレ先生の可能性を考える/鍾タル

    タルがモブとの恋愛を仄めかします。捏造など諸々許せる方のみどうぞ。

    #鍾タル
    zhongchi

    窓の外の俺を認めるなり、深海の瞳が見開かれる。寒いから入れてくれ、とジェスチャーで伝えれば慌てたようにドアが開いて、記憶の中と寸分違わぬ青年が現れた。
    「鍾離先生!? 久しぶりだね……!」
    「……ああ、久しいな。ここ50年ほど、会っていなかったか」
    「はは、当たり前だけどあの頃と同じ姿なの先生だけだよ。いや俺も、もしかして変わってない?」
     そうだな、と頷きながらも招き入れられた家の中は、雪国らしく大きな暖炉があって──その上に置かれていた写真立てには、愛らしい女性の笑顔がある。ただ少し、色褪せが始まっているだろうか。
    「まさかスネージナヤまで来てくれるとは思わなかったよ、嬉しいなあ」
     言いながら差し出されたココアを飲みながら、見つめた彼の目はほんの少し赤い。うっすらと浮かぶ寝不足の証も僅かな鼻声も、理由を知っているからこそ問うことはしなかった。
    「……ねえ、先生。俺ほんと、どうしちゃったんだろうね」
     スネージナヤには不老不死の男がいる、という噂話をたどり、彼を訪ねてここまで来たが。うつむく彼の言葉は重く、俺は静かに目を伏せた。
    「……お前は人外に好かれやすいのかもしれないな」
    「はは、冗談。俺のことまで人外にするほど、誰かに気に入られてた覚えはないよ」
     笑いはすれど、言葉が終わればすんと表情が消える。そうしてぽつりと、俺の知らない女性の名を呟いた。
    「……死んじゃったんだ、俺のことを置いてさ。一緒に歳をとっていけると、ずっと思ってたのにさ」
    「そうか」
    「それにさ、家族もみんな死んじゃった。俺はいつまでも若い姿のまま、ずっと死ぬことも、できないまま」
    「……公子殿……」
     そうして初めて、俺は彼の涙を目にすることになる。はは、とこぼれたかすれ笑いが、じわじわ涙に湿っていって──どうして、と頬を流れていく雫を、俺は無言のままぬぐってやった。
    「先生が変わってなくて安心したよ、これで先生まで死んじゃったら……俺、もうひとりぼっちだ」
    「……そうか」
     言いつつそっと目をそらす。その動きに彼はびくり、と肩を震わせた。
    「……え、先生?」
    「いや、お前が心配するようなことは何も、ない」
    「違うでしょ、絶対後ろめたいことあるよね先生……まさか死んじゃうの、俺のこと、置いて」
    「落ち着け公子殿、俺はまだ何も」
    「嫌だ、もうひとりは嫌だよ先生……! いかないで、いやだ、いやだ……」
     そして溢れたその慟哭は、きっと俺が来るまでずっと、どこにも出せず彼が抱えてきたものだろう。俺の胸にすがりつき泣くその姿を、哀れだと思うと同時に──仄暗い歓喜が、音もなく胸中に灯った。
    「……実はな公子殿、今回俺がスネージナヤに来たのは理由があるんだ」
     だから口角が上がりそうになるのをこらえて、彼を「つくり変えた」側として。責任を取ろう、元とはいえ契約の神なのだから。
    「俺の隣で、生きるつもりはないか」
    「え……?」
    「最近俺も、周りの顔見知りが命を落とし続けていて……寂しく思っていたところだったんだ。そしてお前は、俺に置いていかれるのが怖い。利害は一致するだろう?」
    「一緒にいて、くれるの……」
    「もちろんだ。俺もお前を失いたくはないからな」
     言って微笑む俺の姿は、公子殿の目にどう映っているのだろう。原因が俺にあるとも知らず、いつか流し込まれた神の力で変質した体に涙する彼が──どうしようもなく、愛おしいと思う。
     公子殿が頷く。約束だよと泣くその心は既に限界だろう。それでようやく俺は彼にとって、無二の存在になれるのだ。
     だからと彼を抱きしめた。そろそろと抱きしめ返されて、今度こそ笑みを隠しきれない。
    「永遠に、共に在ろう」
     最後にこの手へ落ちるなら、過程はなんでも構わない。だって俺には──否、俺たちには時間があるのだから。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ❤❤❤☺❤❤💖💖💯👍👍👍😍😍😍😍😭😭🎃☺
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works

    のくたの諸々倉庫

    DONE世界5分前仮説/共生鍾タルのネタをお借りしました。「ねえ、先生。今いるこの世界が5分前にできたものだ、っていう仮説、知ってる?」
     言われて少し考え込んだ。問われた言葉の意味が分からない、というより──その問いから後、彼が何を言いたいのかがよく分からない。
    「聞いたことはある。この世界は5分前につくられたものであり、今俺たちが持っている記憶などは全て、創造主による捏造なのだ、という話だろう」
    「そうそう。もしそうだったらすごいなと思ってさ、だって世界は広いんだよ? あちこちで矛盾が出ないように、それでいて複雑に絡み合った『設定』の上……俺たちは今、こうやって息をしてる」
     言いながら、彼の指が伸びた。首の輪をついと撫ぜ、岩元素のマークを通り、その服の下、彼を生かす力の核へと。そうして「ね、不思議でしょ」なんて。
    「先生は6000年の時を生きたカミサマでさ、俺はそんな先生と一緒に生きてる元人間。そんな設定のもと、たった5分前に俺たちがこの地に足をつけたっていうなら……こんなにおかしなことはないなって」
    「どうして、おかしいんだ」
    「俺はね先生、生かしてくれたことに感謝してる。ずっと一緒に生きられるなら、他の何と別れることになってもいい、 1323

    のくたの諸々倉庫

    DONE去りゆくお前の手を掴めない/鍾タル

    死ネタとか諸々。何でも許せる方のみどうぞ〜
    「実のところさ、先生結構優柔不断でしょ」
    「む、どうしてそう思った」
    「えぇ? だって最近……先生ずっと何か迷ってる気がするんだよね。買い物するときも一緒にご飯食べる時もさ」
     ──こういうこと、してる時も。
     言ってするりと伸ばされた手が、俺の頬を撫でてからぱたり、とシーツに落ちる。あるいは好きにしてくれというように、けれどまたあるいはあきれてしまうように。
    「俺を前にしてさ、何を迷うことがあるのさ。言いたいことは言って、したいことはすればいい。俺は簡単には壊れないよ」
    「……そうは、言ってもな」
     ほらまた、とけらけら笑う彼にしかめた眉は、彼が笑ったことによってその腹に力が入ったからだということにしてほしい。
    「……俺はね先生、先生の何もかもを愛してるわけじゃないし……先生より大切なものだっていくつもあるけどさ。こうして一緒にいられるのは、幸せだって思うんだよ」
     だからと濁った目が、けれどまっすぐに俺を見る。
    「ね、せんせ。俺のこと、どう思ってるの」



    「……愛して、いるさ。これ以上、ないほど」
     思えばあの時、俺はどのように言葉を返しただろうか。今更の告白はとうに届くはずも 876