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    のくたの諸々倉庫

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    POIPOI 57

    いつか、その隣で笑えたなら/ディルガイ
    「猫の王国」パロ。すけべパートは分けたいので短いですがその3。真相が明かされるよ

    #ディルガイ
    luckae

    「嘘、だろ……? だってお前、俺よりも少し歳取ってるじゃないか」
    「……君が、即死じゃなかったからだよ」
    「え……?」
    「……僕が知る『一度目』の君は、急凍樹の力により氷漬けになってね。聞いたことはないか? 氷漬けになった動物が、長い年月を生きたまま過ごした話を」
     知っている。知っているがゆるく首を振った。それ以上は聞きたくないとばかりに、震えるガイアにしかし──ディルックはどこまでも、平坦に言葉を続けた。
    「僕は必死に、氷を溶かしたさ。だが君の負った傷は、あまりに深すぎたんだろう。君はそのまま5年ほど眠り続けて……ついぞ目覚めることなく、命を落とした」
    「じゃあなんで、お前は」
    「……生きる、つもりだったさ。それでもいつか、君が助けた……赤毛の猫をある日見かけて、無意識のうちに追いかけた。
     そうしたら、その猫はぐったりした青い猫のそばで必死に鳴いていた。だから僕は、その猫を獣医の元まで送り届けて……さて帰ろう、と思ってからの記憶がない」
    「それで、ここにいた……って?」
    「そうだ。聞けば過労だったらしい。猫を抱えて必死に走ったのが決め手だったからと、僕はここに招かれたけれど」
     そこで一度言葉を切り、ディルックはガイアへと手を伸ばす。
    「君がいないことを、喜ぶと同時に同じくらい絶望した。置いてきてしまったと、もう二度と会えないのだと。だからもう一度だけ、君に会いたくて……騎士を、志した」
    「……記憶の消去を願ったっていうのは」
    「嘘に決まっているだろう、僕に忘れる資格なんてものはない。だからなんとか騎士になり、君の元へ向かおうとしたその日……君がこの世界に招かれたと聞いて、その時僕が、どれだけ……ッ」
     凛とした瞳に、うっすら涙が浮かんでいる。ディルックがどうしてそんな顔で、自分を見つめるのかをガイアは悟れない。
    「だから急遽、願いの変更を申請した。もしも君が騎士を志すならば、専属の騎士としてそばにいたい、と」
    「……なん、で」
    「君を、愛しているからに決まっている!」
     叫んでから、ディルックはまた頭痛に襲われたらしい。呻きながら頭を押さえる彼を、ガイアは半ば呆然と見つめたまま──動くことが、できなかった。
    「今僕がこうなっている理由が分かるか、『ガイア』」
    「俺が……過去を、変えたから……?」
    「そうだ、あくまで君と僕が死んだという事実は変わらないけれど──今しがた僕の脳には、君が行方知れずになった世界を生きた『僕』の記憶までもが、入ってきたわけで」
     どうして、と青ざめた唇が紡ぐのを、いつもの仮面も話術もない状態で見つめることしかできない。
    「どうして君は、二度も僕に喪失を教えたんだ。いつか言っただろう、君が死ぬなら僕も死ぬと。君とは道を違えたけれど、君への想いをいつまでも抱えていた僕だけが……馬鹿みたいじゃないか……!」
    「……最初から、名乗ってくれなかったのは……」
    「どうせ君のことだ、別人のフリでもしなければ僕を拒んでいただろう? まさかここまできれいに騙されてくれるとは思わなかったが……もう、いいんだ」
     月明かりの下、暗い目をしたディルックがガイアの腕を掴む。そうして半ば叩きつけるようにベッドへと押し倒して、「ラグもディルックも、ここで死ぬんだから」と。
     それだけでディルックが何をしようとしているのか、理解してしまって上げかけた声は、ディルックのシャツを口に詰め込まれて消える。
    「君を犯す。それでこのロスタイムを、終わりにしよう」
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