Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    ぴよ🐣

    @piyokorosan

    ぽいぴく始めました。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 6

    ぴよ🐣

    ☆quiet follow

    🥕💝🥗

    はっぴー・・・?夕食後に軽く体を動かしたくなったはいいが、思いのほか熱が入ってしまった。結果、第二の私室とも言えるその部屋の重力がようやく地球の平均値レベルに戻った頃にはかなりいい時間になっていた。
    もうそんなに経っていたのかと、程良い倦怠感で汗を拭っていたそんな時。


    「よ、ベジータ」


    不意に現れた声と気に思わず眉を顰めたベジータ。
    相変わらず遠慮無しの気ままで勝手な訪れ。それに慣れてしまいつつある自分にも軽く苛立ちを覚えながら、せめてもう少し早い時間に来いと苦言を返すべくそちらを振り返る。
    その直後。開きかけたその口に無理矢理何かを捩じ込まれた。


    「んぐっっ!!?」


    突如口内へ飛び込んできた謎の異物。勢い余って喉奥に吸い込んでしまいそうになり、咄嗟に吐き出そうとするも悟空の指先に塞がれた口は開けず、なんとか舌の上に押し留める。
    不意打ちが成功し目を白黒させているベジータを見て、ニヤッと笑みを浮かべる悟空。


    「うめぇか?」


    その言葉に食べ物なのかと理解が及ぶと同時につるりとした固形物が溶け、舌がトロリと甘ったるくなった。
    あっという間に口中に広がったその味を知らない訳ではなかったが、この意味不明な不意打ちも目の前のニヤケ顔も何もかもが腹立たしくてならなくなったベジータは唇に触れる不躾な指ごと悟空の腕を荒々しく振り払い、くわっと怒りを露わに声を荒らげた。


    「貴様あっっ!!俺に何を食わせやがったっ!?」

    「え?おめぇ知らねぇの?食ったことねぇのか?」

    「そういうことじゃないっ!!いきなりなにしやがるんだって言ってんだこのクソったれめっ!!」


    きょとんと気の抜けた阿呆面を晒す悟空から、暗に無知を指摘されたような気がしてますます激昂するベジータ。
    一方、ただただ素直に言葉通り受け取っただけで特に何の含みも持たせたつもりはない悟空。続けて訂正として返ってきた怒声に己の説明不足を察したか、何やら納得顔で一つうなずき口を開いた。


    「それな、チョコレートっていう食いもんなんだよ」

    「だからそれは知っている!!んなことは分かってんだよこの馬鹿野郎!!」

    「んで、今日は好きな奴にチョコレート食わせる日らしいんだ」

    「はっ!?………………は?」


    さらっと吐かれたのは非常に簡潔で端的な説明だ。
    が、しかし。ベジータの脳はその短い台詞を受け止めきれず束の間思考が停止した。

    そういえばブルマからも何やら菓子らしきものを渡されなかったか。なんちゃらデーがどうとか言っていたが、地球にはよく分からないイベントやら祭りやらが多いし今日はその何らかの一つだったのだろうか。
    思い返して見れば毎年この時期、無駄に厳重に梱包された菓子をもらっていたような気が…。

    などと、ポカンと呆けてぼんやり記憶を反芻しているベジータに、何故急に静かになったのかと首を捻る悟空。
    そして、ふと何か思い付いたように何やらゴソゴソ取り出すと、半開きのまま固まっていたその口に追加のチョコレートをひょいと放り込んだ。

    コロリとした感覚にハッと我に返るベジータ。
    一度ならず二度までもしてやられたと憤りがぶり返し、だがそれが声に出る前に更なる追撃を食らった。
    固く少しひんやりとした後に続いたのは熱く濡れた分厚い弾力。触れる唇を舐め割り開き侵入したそれに口内の奥へ転がりかけていた固まりは捕まり、ベジータの舌の上でドロドロに溶けていく。形を無くしたベタつく甘さを更にぐちゃぐちゃと掻き回してようやく気が済んだのか、悟空はやっと捩じ込んでいた舌を引き抜いた。


    「ん、おめぇのチョコうまかったぞ。サンキューな!」


    悟空がへらりと笑ってそう言ったのが、呆然とするベジータの耳を右から左へ流れて行く。


    「お?そういやこんな時間だったな……あんまり長居すんのも悪りぃし、今日はもう帰るか。じゃあなベジータ!お返し楽しみにしてるからよろしくな!」


    そうして、そんな一方的な台詞を残し悟空は瞬間移動でその場から消え失せた。
    そこから真っ白といった様子の表情が次第に鮮やかな赤に染まっていき、ベジータの様々な感情が振り切れるまでほんの数秒。

    本人はうきうきで帰って行ったが、色々と認識が誤っている悟空に幸せなホワイトデーが訪れる可能性は極めて低いと思われる。何ならその日まで命があるのかすら怪しい。
    とはいえ、これが切っ掛けで命懸けの闘いへ発展したとしても戦闘民族なサイヤ人にとってはある意味幸せとも言えるのか。

    とりあえず、この日を境にチョコレートを与えようとすると反射的に殺気立つようになったベジータに、悟空を除く周囲は首を傾げつつも翌年から違う物を贈るようになったそうな。


    end.
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🍫💘😭🙏🍫💝💗💖❤💓
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works