虹のふもとには 広げていた本から視線を外して顔を上げると、青柳くんがこちらへ歩いてきている。
時計を見ると、閉室時間が迫っていた。
「すまないね、読み耽ってしまったよ」
「いえ、気にしないでください」
本を手に持って、青柳くんと並んで貸し出しカウンターへ向かう。
貸し出し手続きを終えて、僕は荷物を取りに教室へと戻る。
二学年の教室のある階に同級生たちの姿はなく、部活動をする生徒の声が響く。
スクールバッグと次回の公演で使う予定のドローンが入ったバッグを手に取り、茜色の差す教室を出た。
「司くん、まだ居るかな」
さすがに帰ってしまっただろうと考えながら、隣のクラスを覗き込もうとした時。
「好きです、付き合ってください!」
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