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    3iiRo27

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    ritk版深夜の60分一発勝負
    第十九回 お題:「桜」
    司視点 両想い

    #類司
    RuiKasa
    #ワンドロ

    キラキラと光るそれに目を瞬かせると、いつもの場所…「セカイ」についたのだと気付いた。

    よし、と気合を入れて、思い当たる場所に歩き始めた。






    セカイに、桜が生えた。

    今まで見た中でも一番と言えるくらい大きなそれは、花びらがいくら散ってもなくならず、また桜の花びらが地面に溜まることもなかった。




    カイト曰く。

    桜は、オレにとって、いい意味でも悪い意味でも印象に残ったものなのだそうだ。


    体調の度合いによって見ることがまちまちだったため、散らずに残って欲しい。
    あんなに綺麗だと言ってたのに、地面に落ちてしまった途端踏まれるしかない花びらをなんとかしたい。
    そして、桜の木にいるであろう虫が一切出てこないで欲しい。


    最後の理由に、3人が思わずといった感じで笑っていたが、俺は納得しかなかった。
    昔の花見の最中に、本当に落下してきたことがあるからだ。あれは本当にトラウマになるからな!?



    いい意味でも悪い意味でも印象に残っていたそれが、時期によって思い起こされ、セカイに現れた。
    というのが、カイトの見解だった。




    「オレの想像した最強の桜」であるそれは、オレ含め全員気に入ったようで。
    暇があれば、すぐにそこに行くようになった。

    今日も、練習が休みであったので放課後に会う約束をしていたのに、気づいたらいなくなっていた。
    下駄箱に靴を残したままで。


    待ってる間だけ桜のところに行ってみようと思っていたことが丸わかりだ。
    類はよく、セカイの仕組みについて調べようとしていたから。

    まあ、逆に言えば待ち合わせ的にはわかりやすくていいのかもしれないが。



    そう思いながら屋上に行き、スマホからいつもの曲を流した。








    ショーのテントがある後ろの、少し丘を登った先。
    そこが、桜のある場所だ。


    漸く登りきると、オレが予想していた通り。類はそこにいた。



    いつもの演出のネタが書かれたノートを開いており、時折手を止めて考えては、また手を動かしていく。

    あそこには、一体どんな突拍子のない演出が書かれているのだろうか?
    とんでもない演出もあれば、これができたらどんな光景が見れるのかとわくわくするようなものもあるから、いつだってあのノートを見るのは恐怖半分、興味半分なのだ。

    ああ、早く類の元に着きたい!



    「る、





    びゅう、と。
    強い風が、吹く。

    ぶわり、と花びらが舞い上がり、視界を覆い隠していく。

    その先には、オレの姿を捉えていないままの類がいて。

    思わず、声を上げないまま、足を蹴った。






    「……司、くん?」

    類の、困惑する声が聞こえる。
    当然だろう。突然現れたかと思ったら、いきなり抱きつかれたのだから。


    だが、オレはそんな類の声に答えず、抱きしめていた腕を更に強くした。




    ここは、オレのセカイだから。
    万が一でも、攫われるなんて、ありえないだろう。

    それでも、




    「司くん」
    「…っ」
    そっと腕に手を置かれて。
    そこで初めて、震えていることに気付いた。



    「司くん。…ちょっと、失礼するよ」
    「…っあ」
    「大丈夫、落ち着いて。」

    そっと腕を外されたかと思うと、体勢を変えて類の方から抱きしめてくれた。



    「司くん、大丈夫。僕はここにいるから」
    「…っ」
    「僕は、司くんの前からいなくなったりしないよ。安心して?」

    どうして。
    どうして、こうも欲しい言葉を、類はくれるんだろうか。


    声は、出せない。
    出してしまうと、目に浮かんだそれが、決壊してしまうから。


    返事の代わりに、腕を背中に回す。
    類は、察したかのように、抱きしめる腕を強めてくれた。

    類の存在を感じられる。
    そのことが、泣きたくなるほど、嬉しかった。
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