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    3iiRo27

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    ritk版深夜の60分一発勝負
    第二十一回 お題:「君じゃなきゃ/お前じゃなきゃ」「スポットライト」
    類視点 両想い

    #類司
    Ruikasa
    #ワンドロ

    「…他のステージに出てほしい…ですか?」
    「はい」


    それは、ある日の練習終わり。
    えむくんを迎えにきたきぐるみさんから言われたその話に、僕も3人も皆驚いた。





    「ステージを移動して欲しい、という訳ではないのです。
    ○○ステージで一日限定のショーが開かれるのですが、キャストが練習外で怪我をされて降板されてしまいまして。その代役を探していたんだそうです」

    「それで、白羽の矢が刺さったのが僕…だと?」
    「ええ、そういうことです」


    「よ、よかったー…!移動じゃないんだー…!」
    「ああ!俺も正直ドキドキしてしまった…」




    話を聞いて、安堵する3人を見ながら、僕も内心ホッとした。
    僕は、今のステージから移動する気なんて更々ないのだから。

    でも、きぐるみさんの説明には、少し疑問が生じた。



    「…でも、それは何故僕なんです?
    それこそ、主役となり得る司くんや寧々が行ったほうが、経験が積めていいと思うのですが」

    僕のその言葉に、きぐるみさんは言いづらそうに告げた。





    「…先方が探している人材が。男性で細身。且つ…………身長が、180cm以上ある方が好ましいそうで。」


    …静かに視線が、僕に集まり…そして、ゆっくりと司くんの方に移動した。







    「……確かに、僕は180cm、あるね………ふふっ」
    「っ、ふ……それはもう、仕方ないんじゃない?」
    「司くんどんまい!」

    「お、お、お前らー!!!!!!」


    司くんの怒号が、ワンダーステージに響き渡った。





    「93デシベル。犬ノ吠エ声レベルデス」
    「煩い!というか測るな!!!!」





    ====================







    そんな訳で代役に選ばれた訳だけれど、そんなに大層な役どころという訳ではなかった。
    セリフは2、3程度。どちらかというと、踊りがメインとなる役だったようだ。

    本番まであまり時間がなかったこともあり、実際に○○ステージに赴いて練習するのとは別にきぐるみさんを介してお願いして居残りの許可をもらったり、司くん達に動きを見てもらったり。
    時にはショーの練習時間を少しもらって、練習する時もあった。

    その練習の甲斐もあって、本番前には完璧に踊れるようになっていた。




    「類!流石だな!もう踊りは完璧じゃないか!」
    「ふふ、ありがとう。時間を割いてもらったり、見てもらった甲斐があったよ」

    嬉しそうに笑う司くんに、僕も思わず笑顔になる。



    「そうだ!ちょうどその本番の日は俺たちも見に行くからな!」
    「え、練習はいいのかい?」
    「他の公演を見るのも経験になるだろう?それに、しっかり練習した類の晴れ舞台はしっかり見届けねばな!」

    はっはっは、と笑う司くんに、僕は胸が暖かくなった。


    「うん、ありがとう。………本番、頑張るよ」
    「ああ!楽しみにしてるな!」









    そして迎えた、本番当日。
    たった一日、それもセリフも殆どない脇役だけれど、○○ステージの方はとても優しくしてくれた。
    リハーサルで僕の練習の成果を見た共演者の方が、急遽僕にソロパートを用意してくださった。
    とはいっても、元々練習していたパートを僕一人で踊るというだけだけれど。
    それでも、3人の協力もあって仕上がったそれを褒められるのは、とても嬉しかった。


    本番。
    舞台袖にいてもわかる。ワンダーステージとはまた違う、緊張感。
    本番特有の熱気に、僕の心もドキドキが止まらない。
    スタッフさんの合図を尻目に、舞台へと駆け出す。





    覚えたセリフも、踊りも、全てが完璧に仕上がっている。
    そして迎えた、僕のソロパート。
    舞台のスポットライトが全て僕の方を向く。

    静かに。でも、客の全ての視線が、僕に集まるように。
    練習した全てを発揮できるよう、指先まで意識を向けて。

    そして、顔を上げて、客席を見据えた瞬間。




    そこには、僕のソロパートに驚いた、でもとても嬉しそうな、司くんの姿があった。









    (………ああ)


    思わず、意識がそれてしまった。

    スポットライトが、熱く感じる。
    とても嬉しい。とても、楽しい。



    でも。


    (僕は、やっぱり)





    踊り終え、しっかりを頭を下げて、舞台袖へ捌ける。
    ○○ステージの方々の賞賛の声を聞きながら、僕の意識は司くんへ向いていた。












    あの後。
    ショーの大成功に感動したキャストの方々からの賞賛の声を聞いたり案の定勧誘されたのを断っていたりと色々していたら、あっという間に辺りは暗くなっていた。


    流石にここまで遅いと、寧々やえむくんは帰らせないと危ない筈だと、荷物置き場に急ぐ。

    そこにいたのは、寒そうに手をすり合わせる、司くんだった。


    「……類!お疲れ様!」
    「司くん!まさか、待ってたのかい?」
    「ああ!直ぐに感想が言いたくてな!」

    思わず、司くんの手を取る。
    春も近くなってきて暖かくなってきているとはいえ、夜の寒暖差はまだ激しい。
    現に、手袋もしていない司くんの手は、大分冷え切っていた。


    「こんなに冷たくなっているじゃないか…!待っててもいいけれど、せめて室内に…」
    「いや、ここが良かったんだ。とても興奮して、落ち着けなかったから」

    司くんはニコリと笑うと、次々と舞台への感想が飛び出てくる。
    僕はそれをうんうんと聞きながら、司くんの手をずっと握り締めていた。
    せめて、体温を分けられるように、と。



    「…はー!まだまだ言いたいことはあるが、あんまり続けてしまうと収集がつかなくなってしまうな…!」
    「本当にね。感想の続きは、また皆で集まってからやるとしよう」
    「そうだな!…あ、あと。類…」

    自信なさげに呼ばれた僕の名前に、びっくりして思わず司くんの方を向く。
    司くんは先ほどと打って変わって、少し悲しそうな顔をしていた。

    「その…あっちの方が、楽しかっただろうか?」
    「え?」
    「類がとても生き生きとしていたから、その…気になって、しまって…っわ!?」


    いつもの声の大きさとは似ても似つかないような声色に、思わず抱きしめてしまった。





    「全く、司くんは馬鹿だなあ」
    「ば、馬鹿とはなんだ!こっちは真剣に…!」
    「ワンダーランズ×ショウタイムの皆の手助けもあってできたステージだったんだ。それもあって褒められたんだから、生き生きとして当然だろう?」
    「………!!」
    「それに…」





    そっと離れ、司くんの頬に手を添える。
    びっくりしている司くんに顔を近づけ、額を合わせる。

    「あの舞台の上から司くんが見えて。違うなって思ったんだ」
    「…違う?」
    「うん。」











    「やっぱり、スポットライトを浴びるのは。浴びてもらうのは、君じゃなきゃ嫌だなって」

    「………!!!」
    「まあでも、今回に関しては選ばれたのは僕でよかったと思うけどね」
    「…おい、なんか矛盾してないか」
    「ふふ、矛盾してなどいないさ」

    「君にスポットライトを向けるのは、いつだって僕でありたいんだからね」


    そう告げると、途端に真っ赤になる司くんの顔。

    モノ好きだな、という声を聞きながら、僕はまた、彼を抱きしめた。
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