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    3iiRo27

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    ritk版深夜の60分一発勝負
    第六十四回 お題:「自慢」「センサー」
    咲希が家族にも内緒にしていたある特技を、類に打ち明けるお話。
    咲希視点 ?想い

    #類司
    Ruikasa
    #ワンドロ

    だってあなたは、じまんの。アタシは、誰にも信じて貰えないけれど、ちょっと変わった特技がある。

    そして今日。その特技を持っていて、本当によかったと、心から思えた。













    「すみません、類さん!お茶菓子を切らしていたからって、お兄ちゃん大慌てで出て行っちゃって……」

    「いやいや、気にしてないよ。お気遣いなく」



    不安げに差し出したお茶を受け取りながらにっこりと笑う類さん。
    アタシはそれに安堵して、一緒に入れたお茶をテーブルに置いた。



    「でも、ちょうどよかったです!アタシ、類さんとお話してみたかったので!」

    「おや、そうなのかい?」

    「はい!……あの、ちょっと信じられないような内容もあるんですが、大丈夫ですか?」



    不安げに言うアタシに、類さんは首を傾げながらも頷いてくれた。

    それを見たアタシは、お茶を一口飲んでから、口を開いた。







    --------------------------------






    お兄ちゃんはいつだって、アタシのことを一番に考えてくれました。

    お見舞いの度に考えたショーを教えてくれたり。最近流行りのこととかを学校でクラスメイトに聞いて、教えてくれたり。
    自分の身体のことで、当たっちゃう時もあったけど。泣きながら謝るアタシに、お兄ちゃんは笑顔で気にするなって、いつも言ってくれました。


    だから、アタシにとっても、お兄ちゃんはとても大切な人で。


    でも、だから、なんですかね?














    アタシ、ちょっと不思議なセンサーを、持っているんです。

    お父さんにもお母さんにも、お兄ちゃんにも話したことがない、不思議なセンサーが。





    それに気づいたのは、一時退院して、家に帰ってきた時でした。

    家のテーブルに、1つのキーホルダーが置かれていたんです。


    ありきたりなデザインのそれは、上の紐の部分が切れていて。
    劣化で切れてしまったものをリビングで落としてしまったのを、家族の誰かが置いた。
    そう考えるのが自然でした。




    でも、アタシは。
    それを見て、何故か悪寒を感じたんです。

    理由もわからないまま、リビングから離れて。
    その日帰ってきたお兄ちゃんに、あれが誰のなのかを聞きました。



    あれは、お兄ちゃんの彼女からのプレゼント、だったみたいです。

    ……え?ああ、お兄ちゃんは彼女が好きだった訳ではないみたいです。
    お試しで付き合ってほしい、って言われたらしくって。


    アタシは素直に、よくわからないけどそれから嫌な感じがすると、そう伝えたら。
    お兄ちゃんはそうかと言って、それを捨ててくれました。



    それからも、お兄ちゃんがその人からもらうものに、悪寒を感じて。
    もらうことでアタシの身体に不調が出たらと、不安になったお兄ちゃんは、彼女と別れたそうなんですが。

    その後、偶然知っちゃったんです。悪寒の正体を。




    お兄ちゃんは、彼女さんにはアタシの写真は見せなかった。
    でもアタシはお兄ちゃんから、彼女さんの写真を見せてもらっていて。

    だからこそ、偶然聞こえたそれが、お兄ちゃんの彼女さんであることが、すぐにわかって。
    あっちは、アタシが家族だって、気づくことはなかったんです。


    お試し、なんてものは建前で、お兄ちゃんを駒扱いしていたこと。
    色んなものを奢らせようとしていたけど、お兄ちゃんはお見舞いのためにお小遣いをセーブしていたから、
    ATMとしても使えないなんて言われていたこと。
    もっと強請ろうとしたタイミングで別れを切り出されたから、タイミングもいいし捨てようとしていたこと。

    全部、全部聞こえてきて。
    怒りで、どうにかなりそうなのを、一生懸命抑えました。



    そして、お兄ちゃんが、あの人の駒になる前に離れて、本当によかったと思う反面。
    もしかして、悪寒の正体はこれだったのかなと、気づくきっかけになりました。


    「お兄ちゃんに害があるものに対して、反応するセンサー」なのかな、って。






    お兄ちゃんは、あの後に例の彼女の話を聞きつけたそうで、それ以来彼女を作ることはありませんでした。

    たまに友達として、家にくる人の中に、女の子はいたけれど。
    アタシの反応を見て、少しでもアタシは嫌な反応を見せたら、すぐに帰したりしていて。

    中学時代はしょっちゅう「シスコン」だなんて、言われていたらしいです。




    でも実際、アタシが反応を見せた人は、お兄ちゃんがいないとこで悪口を言っていたり、マナーを守れていなかったりするような人ばかりで。

    アタシは、このセンサーのお陰で、お兄ちゃんを守れているんだって、誇らしく思っていました。















    そんなある日。

    このセンサーが今までとは全く違う、始めての反応をしたのは、今年の夏のことでした




    高校に上がってからは、ほとんど反応することはなくって。

    それが久しぶりに反応したのは、今年の夏。
    しかも、それは悪寒ではなかったんです。




    心が温かくなるような、幸せな気持ちになるような。
    こんなことは初めてで、初めはセンサーが反応してると、全然気づかなくって。

    同じ人からのもらい物だというものを見たのが、3つ目に達した時、漸く気づきました。
    これは、センサーが反応しているんだ、って。


    でも、悪寒がきたときと違って、理由は全くわからなくって。
    お兄ちゃんと話していても、それを特定することはできなかった。



    でもきっと、悪寒ではないから、嫌なことではないんだなと。
    それだけは、断言できました。








    --------------------------------






    お茶をまた一口飲んで、前を見据える。

    こんなスピリチュアルな話をしているのに、類さんは茶化すことなく、真面目に聞いてくれている。
    それが、何よりも嬉しかった。





    「……そして。今日やっと、その理由がわかったんです」

    「……そう、なのかい?」

    「はい。……類さん」

















    「幸せな、温かい気持ちになったのは。……全て、類さんからのプレゼントでした」








    「…………え」

    「ショーのお土産も、お揃いで買ったものも、アタシに上げるために買ったお菓子まで。全部、全部温かかった。
    そして、お兄ちゃんとお揃いで付けている、リングが通ったネックレス。それが一番、温かいです」


    「……これ、が……」







    「お兄ちゃん、それのことを教えてくれた時、本当に嬉しそうでした。大切なものなんだって、言っていて。」

    「…………」

    「そして、その顔は。……類さんとお話しているときと、全く同じ顔でした。類さんも。」

    「……僕も、かい?」

    「はい。……とても、幸せそうな、顔をしていて。」




















    「私のセンサーは、教えてくれているんだなって、気づいたんです。」


    「類さんが、お兄ちゃんを幸せにする人なんだ、って」









    「っ、それ……!」

    「ふふ、お兄ちゃんは何も言ってませんよ?アタシが自分で気づいたんです!」



    ふんす!を胸を張るアタシに、類さんは驚いた顔が泣きそうな顔に変わっていった。



    「そ、うか。……ふふ、司くんは、わかりやすかったかい?」

    「はい!お兄ちゃん、すぐ顔に出ますから!」





    ニコニコと笑うアタシとは対照的に、類さんは本当に泣きそうで。

    アタシは、顔を引き締めて、類さんに向かい合った。



















    「類さんは、アタシのセンサーのお墨付きの人ですから。……自慢のお兄ちゃんを、どうぞよろしくお願いします」







    「……ああ。任せておくれ。絶対に、幸せにするよ」






    ポロポロと涙を零す類さんに、そっと下げていた頭を戻して、笑いかける。

    目元を拭きながら、類さんはそっと笑いかけた。






    「……流石、自慢の妹さんだね」





    「……え?」

    「っ当然、だ……!」




    聞こえてきたその声に、慌てて後ろを振り返る。

    そこには、袋を抱えたまま、類さん以上に涙を流している、お兄ちゃんの姿があった。



    「お、お兄ちゃ」

    「咲希も!」


    アタシの言葉を遮るように、お兄ちゃんの声が響く。





    「っ咲希も!オレ達を受け入れて、幸せを願ってくれる咲希は、自慢の妹だ……!」


    「…………あ」




    そこで、ハッと気づいた。

    もしかして、ずっと気にしていたのかな。

    女の人じゃなくて、男の人を好きになって。
    普通じゃない、おかしいって言われるかもしれないのを、ずっと怖がって、いたのかな。







    「お兄ちゃん」

    未だに泣くお兄ちゃんが手に持っている袋を下に置いてから、そっと抱きしめる。











    「当たり前!どんな形でも、お兄ちゃんの幸せが、アタシの幸せなんだから!」





    この言葉で、更に泣き出したお兄ちゃんを、類さんと2人で宥めて。

    2人の馴れ初めに関して質問責めして、2人を盛大に照れさせるのは。


    また、別のお話。






































    おまけ

    「類さんをお義兄ちゃんって呼んだらどっちかわからなくなるね!?」

    「おお……どっちも「おにいちゃん」だな……」

    「なら、お兄ちゃんとお義兄さんって呼ぶのはどうかな?」

    「おー!流石お義兄さん!」




    「幸せすぎて心臓が痛い」
    「わかる」

    「もー!お兄ちゃんもお義兄さんも返ってきてってば!」



    心臓がもたないとのことで、「お義兄さん」は封印されました。

    おわり。
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