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    3iiRo27

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    ritk版深夜の60分一発勝負
    第百二十五回 お題:「犬」「お揃い」
    セカイに新たに表れた存在をきっかけに、あることを思い付いた類のお話。
    類視点

    #類司
    RuiKasa
    #ワンドロ

    それは、始まりの。それは、不定期に行っていた、セカイの動くぬいぐるみの調査の時だった。




    「はい、次は君だよ。……おや?」


    順番に並んだぬいぐるみくん達の触診をしていた時。

    やってきたぬいぐるみくんの姿に、首を傾げた。




    セカイのぬいぐるみくん達のことは、調査の甲斐もありある程度把握はできていた。

    でも、今やってきた子は初めて見る子。




    ……いや、「初めて」といっていいのか、わからないが。


    その子は、何回も見たことがある、犬のぬいぐるみそっくりで。

    姿形は何度も見たものだったのだが、色は全く違っていた。





    こんな子はいただろうか?と首を傾げると、その子の後ろにいたぬいぐるみくんが声を上げた。


    「ルイクン、ドウシタノー?」

    「え?……ああ、すまないね。この色の子は前からいたかと思ってしまって……」

    僕のその言葉に、そのぬいぐるみくんは僕の隣に並び、「アア!」と声を上げた。



    「コノコ、アタラシクキタコ!」

    「おや、そうなのかい?」

    「ウン!キョウダイ、ナンダッテ!」



    キョウダイ……兄弟。

    確かに、兄弟であれば、似ているのも納得だ。

    僕はぬいぐるみくんにお礼を言うと、直ぐに待たせていたことを謝って、触診作業に戻っていった。





    ------------------------------------





    「……なんてことがあってねえ」

    「ほう、新入りが……」




    それから数日後の、お昼休み。

    いつも通り屋上で演出に関しての話をしていた流れで、新入りの兄弟ぬいぐるみの話をした。



    すると、司くんはほんの少し考えて、それから口を開いた。



    「なあ、類。それって、犬のぬいぐるみだったか?」

    「え?……うん、そうだけど」

    「もしかして、ピンクがかったものか?」

    「うん、そう。……心当たり、あるのかい?」


    僕がそういうと、司くんは懐かしそうに目を細めた。






    「犬のぬいぐるみに関しては、咲希とお揃いで買ったんだ」

    「咲希くんと……?」

    「ああ。流石に色違いにはしたが、犬さんも兄妹だと、咲希も嬉しそうに言っててな」

    「へえ……。でも、セカイには前はいなかったよね?」

    「実は最近、咲希がなくしてたらしいそのぬいぐるみを見せてきたんだ。それでオレも思い出したから、セカイに来たのかもしれん」



    そう、いつもの優しい表情で言う司くんに、僕もなるほどと納得した。

    あの子の存在も、何故急に現れたかも。それなら納得がいくからだ。



    相変わらず、家族への愛が感じられて、僕も微笑ましくなる。
    ……その反面、ほんの少しだけ、心が痛む。



    「なるほど、それなら納得だ。今度、司くんもセカイで会いにいくといい。犬くんと似ていい子だったよ」

    「本当か!それは楽しみだ!」



    ニコニコ笑う司くんに、僕も微笑み返す。
    痛む胸を、見ないフリをして。


    そのままその話は終わり、自然と演出の話に戻った。






    ------------------------------------




    「…………あ、いた」



    あれから、また数日後。

    セカイで、司くんがあの妹犬くんと楽しそうにはしゃいでいるのが見えた。




    遠目でその姿を見て、ひっそりと溜息をつく。





    この前の、胸の痛み。
    自分の中で状況を整理して、気づいた。


    実は、司くんのあの回答に。
    ほんの少しだけ、嫉妬してしまったのだ。




    僕は、人のことを本気で好きになったのは、司くんが初めてで。
    しょっちゅう、経験のない感情に振り回されっぱなしで。

    今回は、「お揃い」という言葉に、引っ掛かってしまった。

    確かに、司くんとは恋人同士だけどお揃いのものは持ってない。
    咲希くんとお揃いのものを持っているのは自然な話だけど……僕も、持ちたい。





    そう考えた結果のもの。……手に持ったそれを見やる。

    そこには、サーカステントの形をした、2つの色違いのキーホルダーがあった。



    (どんな物がいいかとか、司くんが受け取ってくれるかとか、本当に悩みに悩んで結局普通のに落ち着いちゃったけど……

    司くん、喜んでくれるかな……?)







    手に持ったそれを握りしめながら、気合を入れる。

    今司くんはぬいぐるみくんと交流中だから、それが終わったら向かえばいいのだ。

    持ったまま言ってもいいけれど、司くんに言いたいことをぬいぐるみくんに先に越されてしまったら、ちょっと立ち直れない気が、


    「アーーーーー!!ナニソレーーーーー!!」








    突如響いた声に、僕は手に持ったそれを抱きしめながら辺りを伺う。


    ……僕の周りには、ぬいぐるみくんはいない。

    つまりは。





    「お、おい!それはダメだ!プレゼントなんだ!」


    ……やはり、司くんだった。
    というか、僕が予想していた通りの動きをしていて、やっぱり見つからないようにした方がいいんだなと、そう改めて思った。




    「ソッカ、プレゼントカー……。デモ、ダレノ?」

    「類へのものなんだ。だからこれは上げられない。すまんな」


    へえ、そっか。僕の。








    ……………………僕の!?



    ハッとなって、司くんの方を向く。

    司くんは、僕に渡すのだと言って、小さい袋を見せていた。



    「……キーホルダー?」

    「ああ!前に咲希とのお揃いの話をした後に、類ともお揃いにしてみたいと思ってな!」

    「イイネイイネー!」

    「はーっはっはっは!そうだろうそうだろう!少しばかりシンプルになってしまいはしたが、きっと喜んでくれるに、うわっ!?」



    自信満々につけるその声が、急に途切れる。

    それはそうだろう。突然現れた僕が、司くんに抱き着いてきたのだから。



    ぽかんとする司くんとは対照的に、「ルイクンダー」と嬉しそうに言うぬいぐるみくん達。



    僕は、ぬいぐるみくん達の声には答えずに。
    そっと、司くんの手に、持っていたそれを握らせる。



    「……は?え?類、何故……というか、これは……??」



    混乱する司くんの声を聞き、そっと離れて司くんを見つめる。



    「僕からのプレゼント。お揃いの、キーホルダーだよ」

    「え、お揃…………えっ?」

    「うん、お揃い」



    司くんは、握られたそれと、小さい袋を、交互に見る。

    そんな司くんに、僕は笑いかけた。






    「僕もね。あの会話で、司くんとお揃いのもの持ちたいなーって、思ってたんだ」

    「…………っ」

    「ふふ、同じこと考えてたんだね。とても嬉しいな」

    「…………っああ!オレもだ!」





    僕がそういうと、司くんは目に浮かぶ涙を拭って、嬉しそうに抱き着いてきた。


    あの時感じていた胸の痛みは嘘のようになくなって。

    その代わりに、ぽかぽかと温かい気持ちになれた。












    あの後。

    ぬいぐるみくん達にも促されて、見せ合いっこしたキーホルダーは。

    今日も、2個セットのペアで、僕らの鞄に、鎮座している。




    あのキーホルダーが、いつか。

    揃いの、綺麗なペアリングになって。

    会見の場で、最初のお揃いのものに関して話すまで、あと。
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    3iiRo27

    DONEritk版深夜の60分一発勝負
    第二十七回 お題:「キスの日」「振り向くと」
    司視点⇒類視点 両想い
    友情出演:えむ、寧々
    40分オーバーしました
    演出を寧々と話している類の姿を横目で見ながら、脚本に目を落とす。
    そこに書かれた文字も上手く頭に入ってこず、ひっそりとため息をついた。





    最近、類が意地悪だ。


    どうも、振り向いた際に頬に人差し指を指す、というよくあるやつにハマってしまったらしく学校でも、ショー練習の休憩時間にも、事あるごとにやろうとしてくる。

    怒ろうにも、何故かそれをやる類が矢鱈と嬉しそうで、怒るに怒れない。

    ならば引っかからないように警戒する、という手もあるが
    警戒しようにも、自分の悪い記憶力ではすぐ抜け落ちてしまい、何回も何回も引っかかってしまう。

    そもそも類相手に警戒すること自体が難しい話なのだ。
    大切な、恋人。なのだから。





    どうにも手のうちようがなく、からかわれている感じがする今の状態がモヤモヤしてしまい、最近は演技も上手くいかない。
    当の本人はわかっていないのか、「悩みがあるんだったらちゃんと言うんだよ?」と言う始末だ。





    お前が!!!悩みの原因だと!!!いうのに!!!!







    眺めても全く文字が頭に入らない脚本から目を離し、再度類の姿を見遣る。

    ネネロボの話をし 4662