Drinking Games「親に叱られたことは」
ラーハルトの投げやりな質問。
「あるさ」
と、ヒュンケル。
「ならば、喧嘩したことは?」
「もちろん」
ヒュンケルは咳払いして、喉を焼く蒸留酒を揺らめかせた。
「だが、命に関わる無茶をした時だけだ。父が本気で怒ったのは」
忘れもしない。
父バルトスの剣を、一本盗んだ時だ。
まだ勇者や人間たちの勢力は脆弱で、底冷えするような敗北の予感に晒されていなかった頃。
ただ子供でいられた頃。
幸せだった地底魔城、旧魔王軍の日々。
苦笑いして、ヒュンケルは小さなグラスを啜った。
「親は二人いるだろう」
と、ラーハルトが琥珀色の酒を注ぎ直す。
「アバンは父ではない」
意識したより強い口調になってしまって、ヒュンケルは唇を噛んだ。
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