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    nanase_n2

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    先週、諸事情により完成できなかった真ちゃんの嫉妬の話(ワカ真です)元ネタはツイートです。今週末完成させる予定です(支部にUPします)
    ※ワカの元カノが出てくるので注意

    #ワカ真

    真ちゃんの嫉妬の話(ワカ真)※途中若狭は渋谷駅近くのコンビニで缶コーヒーを買った。コンビニの外へ出ると、灰皿の側に立ってプルタブを開ける。店の庇の下は丁度日陰になっていて涼しい。
    すぐ側に停めてある若狭の愛機が、朝日を浴びてキラキラと輝く。今は真一郎がメンテンナンスをしてくれているおかげで以前より調子がいい。ザリのつるりとしたシルバーの車体を若狭は撫でた。
    ついでに空を見上げると、初夏の風が若狭の銀髪を揺らす。太陽の眩しさに若狭は目を細める。
    土曜日の午前中にこうして起きていることが奇跡だ。元々夜型だから、授業の一、二限は未だに間に合ったことはないし、休みの日は起きだすのは大抵夕方だった。
    それでも若狭がこのコンビニにいるのも真一郎から誘われたからだ。ここで待ち合わせる約束だった。
    『みんなで飯でも食いに行こうぜ』
    真一郎からそんなメールが入ったのは昨日の夜のことだ。しかも誘われたのは若狭一人ではない。
    武臣と慶三も一緒だ。近頃はこの四人でつるむことが多くなっている。
    真一郎がそうしたいというのであれば、反対する理由もない。
    いや、理由はあるが、黙っている。
    若狭は真一郎と二人きりで会いたいと思うし、彼に触れたいと思う。
    先月、友人としての一線を越えてから、その気持ちはますます強くなっている。
    一度でも許されたのなら、もっと奥に踏み込んでみたくなる。
    その独占欲を、若狭はグッと堪える。
    今や関東を統一しつつある『黒龍』の総長、それが真一郎の肩書だ。
    真一郎の背中を慕う男は今はもう数えきれないほどだ。
    だから自分一人の真一郎でいて欲しい、というのは過ぎたわがままだ。
    「……はぁ」
    若狭は缶コーヒーを飲み干して吐息をついた。
    携帯を見ると、もう待ち合わせの時間を過ぎているのに真一郎はやってこない。
    一人で喜び勇んでやってきた自分が何だか虚しくなった。
    ザリにもたれてぼんやり通りを眺めると、道路を横切ってやってくるド派手な女二人組と目が合った。
    一人は黒髪のショートで下着が見えそうなミニスカート、もう一人は長い金髪でロングスカートに際どいスリットが入っている。スカートから伸びる脚は健康的なしなやかさがある
    どちらも地面に穴が開きそうなピンヒールに、鼻筋の通った美人だ。
    気が強そうなところも好みだな、若狭は思う。真一郎に出会う前なら間違いなく声をかけている。
    とは言えもう女に手を出すつもりはない。若狭は視線を足元へ戻した。
    すると、彼女たちはヒールの音も高く若狭の方へ向かってきた。
    「若狭ァ!」
    二人は声を揃えて名前を呼んだ。聞き覚えのある声に若狭は顔上げた。
    あっ、と思い出したのは、彼女たちがするりと若狭の腕に絡みついてからだった。
    こいつら、オレの女だ。
    正確には若狭の女『だった』。煌道連合時代、付き合った女たちだ。
    「久しぶり、こんなとこで会うなんて。元気だった?」
    黒髪の方が若狭の耳元で囁く。
    「若狭、全然、地元に戻ってこないじゃん?みんな寂しがってるよ」
    金髪の方が若狭の腕にふくよかな胸を押し付ける。若狭は、そんなものにいちいち反応するほど初心でもない。
    若狭は左右の女の顔を交互に眺める。
    「悪ィな、新しく入ったチームが忙しくてさ」
    それを聞いて一人が尖った爪で若狭の腕をつつく。
    「え~?今のチームは若狭が、トップじゃないって聞いたけど」
    「若狭、昔はあんだけ『オレサマ』だったのにねぇ~!」
    「ほんとそれ!そこが良かったんだけどさぁ」
    女二人で顔を見合わせてケタケタと笑う。若狭が口を挟む隙もない。若狭の女は皆強かなタイプばかりだ
    どちらかというと『若狭の女たち』というより、若狭が『彼女たちの男』という方がしっくりくる。
    若狭の前で嫉妬や独占欲を見せたことがない。
    黒龍に入る時にケジメをつけて全員と別れたが、こじれることもなくあっさりしたものだった。
    それが若狭にとっては気楽だった。執着なんてうっとおしいだけだと思っていた。
    「いいから、離れろって」
    若狭がやんわりと腕をほどくと、女たちはハイハイと肩をすくめる。
    「でもウチら、若狭だったらもう一回付き合ってもいいって思ってんだから」
    ショートカットの女が黒目がちの瞳を向ける。若狭もそれに、心が少しも動かされないと言えば嘘になる。
    「バカ、オマエらならもっといい男見つかるだろーが」
    若狭はそう言って笑いかけた。
    すると、二人は若狭の側からようやく離れた。
    「……それは若狭も一緒でしょー?」
    そして女同志で腕を組む。
    「昔より、イイ顔してるよ」
    「……何だそりゃ」
    若狭は女たちの傍若無人ぶりは相変わらずだ。彼女たちは若狭に顔を向ける。
    ピアスから垂れるチェーンががキラキラと朝日に光る。
    「じゃぁね、若狭!寂しくなったらいつでも帰ってきなよ」
    「ウチら、待ってるから!」
    朗らかに笑いながら、彼女たちは歩いて行ってしまった。
    騒がしい暴風雨みたいな女たちだ。それでも昔は楽しかった。
    後腐れのない、気楽な関係だった。
    「…………」
    女たちの背中を見送っていた若狭は、ふと視線を感じた。
    それに若狭は振り返る。
    「真ちゃん」
    そこには白いTシャツにジーンズの男が立っていた。長身の足元に長い影ができている。
    「ワカ、早かったんだな」
    真一郎はいつものように穏やかな笑みを浮かべて歩いてきた。
    「……えーっと」
    若狭は真一郎にどう声をかけるか迷った。
    黒い瞳は確かに若狭を捉えていたが、真一郎が何を思っているのかはわからない。
    女たちといたところを見られただろうか、いや、見られたに違いない。
    かと言って彼女たちとは今何の関係もないことを改めて真一郎に弁解するのも、違う気がした。
    何も若狭にやましいところはないのだ。
    「……今日、バブじゃねぇんだ?」
    結果、若狭は別の話題を振ることにした。
    すると真一郎は歩いてきたが若狭の隣に並ぶ。庇の下に入ると、白い顔が陰になる。
    ジーンズのポケットから煙草の箱を取り出して一本咥えた。
    「万次郎を駅まで送ったからよ」
    友達のとこに遊びに行くんだと、と真一郎は告げて煙草に火をつける。
    真一郎は年のわりに煙草をうまそうに吸う。そして青空に向かって煙を吐いた。
    今日はリーゼントではない真一郎の黒髪が、風にそよそよとなびく。
    「ふーん、そうなんだ……」
    若狭は上の空で相槌を打つ。
    ちらりと見た真一郎の横顔は、いつもと変わらないように見えた。

    (続く)※続きは支部にて掲載予定
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