広い屋敷の中にはそれぞれ仕事を与えられた奴隷が溢れていて、俺もその中の一人だった。
かつて共に暮らしていた両親は絵に描いたような“いい人”で、“わるい人”に騙された結果、本当に呆気なく俺を一人残して死んでしまった。当時まだ幼かった俺は訳もわからないままあっという間に売りに出され、今の貴族の屋敷で家内奴隷として暮らすようになってから、もう10年が経とうとしている。
いつもの時間に起きて、掃除や洗濯など与えられた決まった仕事を黙々とこなす日々。何かミスをすれば怒鳴られ、時には罰を与えられる。結果身体が傷もうと、それを理由に休むことは許されない。
ただ、俺にとっては決して悪い環境ではなかった。朝から晩まで働き詰めの成長期の子供には足り無いながらも、最低限の食事は口にする事が出来る。服も与えられるし、何より屋根の下で暮らすことができるのだから。
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