わたしの男/あなたの眼 探し人は思いのほか早く見つかった。やわらかな笑い声が聞こえる方を、趙雲は物言わずじっと見つめる。そういえば、あのような笑い方をするお方であった、と思い出しながら。今ではそんな素振りはまるで見せず、化粧のように塗り固めた笑みを口元に貼り付けるばかりの後主であるが、幼い頃は確かにこの趙雲の前では声を上げて笑ったことだってあったのだ。そう思えば、後主からその笑顔を引き出した相手への感謝も自ずと湧き出てこようはずだが、なぜか趙雲の胸はすっかりと冷え切って、代わりに腹の奥底からは黒々とした何かが迫り上がってくるのであった。
若武者が後主へ向ける関心は、思えば最初から並々ならぬものであったと記憶している。
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