尾月原稿 端から端まで嫌な記憶が敷き詰められた悪夢で、たまらず飛び起きた。ぱたた、と額を滑り落ちた汗が顎を伝ってシーツにシミを作る。最悪だ。未だに心臓の音が全身に響き渡る気怠い身体をもぞもぞと動かし、肺腑に溜まったどす黒い何かを全部吐き出すかのように深くため息を吐いた。
着ているTシャツで顔を拭おうとして、ようやく己が生まれたままの姿であることを自覚する。そうだった、全部丸々剝ぎ取られたのだ。機嫌が悪かったのか、今日は輪をかけて乱暴だった。雑に扱われて騒ぎ立てるような初心ではないが、今までとは明らかに一線を画していた今日の行為の真意が月島には分からなかった。
舌打ちをしながら腕を持ち上げて、そこにくっきりと刻まれた生々しい歯型にギョッとする。あいつ、やりやがった。初めて受けた仕打ちに益々舌打ちは深くなる。これじゃあ当分は腕まくりなど出来ない。暑がりの月島には致命的だった。
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