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    門梶♀ファミリー

    広島出てから早十数年、お盆も年末も帰ることなく、たまに立会で広島市内に行く程度の門倉さんが
    とある理由があって、御母堂に孫と嫁を見せに来た話を書いてるんですけど、とりあえず5000文字ぐらいまで書けたので一旦出します。おれ偉い

    ゆみとお父ちゃんとお母ちゃん、ときどきばあば「お母ちゃん、由美。週末、広島行くで。準備しとって。3泊4日」

    まるで買い物にでも行くような気軽さで告げられたのは飛行機で行くような本州の西端1歩手前の県の名前だった。




    ゆみとお父ちゃんとお母ちゃん、ときどきばあば



    「お母ちゃん、飛行機ってどんなんやろなー」
    「んー...楽しい、かな」
    「そっかそっかーふふふ飛行機やー由美初めて乗るんやー」

    夫からお出かけを聞いて以降、夏休み真っ盛りの娘はずっとこれだ。今の質問も、もう何度聞いたか分からない 。


    最近買い直した女児向けアニメ柄のリュックの中にあれとこれとと準備していく。
    自分の分と夫の分はは普段から3,4泊分なら詰めてあるボストンがあるのでそれを持っていけば事足りるのだが娘は用意が全くなかった。

    いつかは旅行行くんだろうなとは思ってはいたものの、急すぎて子供の旅行準備を検索したら用意のないものが多くて驚いたものだ。

    急いで買いに行けば、たくさんの商品が由美の目に止まって、これがいいあれがいいと結局旅行に関係ないものまでカゴに入れられて、ダメだと注意すれば、絶対要るの一点張り。

    「お''があ''ち''ゃ''ん''の''い''じわ''る''ぅ'''う''うう」
    「意地悪じゃないー」
    「いじわるじゃぁあ歯ブラシはこっちがええんじゃあああああ」
    「さっき買ったでしょ、ほら由美次行くよ。飛行機乗れなくなる」
    「いややぁあああ~!!」

    そんなこんな、白い目と温かい目が綯い交ぜになった視線の中、ギャン泣きの娘を引っ張って、なんとか買い物を終わらせて自宅に帰ると見慣れた黒の靴が出ている。
    珍しい時間に夫が帰っていた。
    トレードマークのスーツを脱いでないところを見ると、仕事を抜けてきたのか、いま帰ったのかもしれない。
    娘は父の姿を発見して、そのまま駆け出して行って長い脚に抱き着きにいった。
    忘れ去られていった荷物の一部を持ちながら、部屋のドアを開ければ、お父ちゃんおかえりと由美ただいまと掛け合っていた。

    「雄大さん、おかえりなさい。忘れものですか?」
    「おん、もう大丈夫じゃ。本部に戻るわ…荷物入れよか、玄関いっぱいじゃろ」
    「助かります、お願いします」

    荷物の残りを運んでもらい、靴を履き替え、出かける夫を送り出そうとすると、せっかくのテンションだった由美が残念そうにする。

    「お父ちゃん、もう行っちゃうん?」
    「ん、まだお仕事残っとるんじゃ。ただ夕方には帰ってこれるけえ、お土産買ってくるからの」
    「ほんま~!?じゃあ待っとるよ。はよ帰ってきてな」

    残念そうにしょげていた娘の頭を撫でながら、今日の予定を告げて夫は「行ってくる」と出て行った。
    自分はそうこうしていられないと、終わっていない娘の旅行準備をせっせと再開した。


    数日後、僕たち家族は羽田空港から朝いちの便で広島空港へ向かった。

    荷物受け取りゲートでボストンバッグと小さなスーツケースを待っていると、羽田からの移動中に寝落ちしてしまった娘が身動ぎした。
    寝起きはスッキリしないタイプなのでうぅーと呻き声が聞こえる。

    「おん、由美起きたかもう空港着いたよ」
    「んんんぅ....」
    「まだお眠じゃないですか朝早かったから...」
    「かもなぁ、...まぁかまわんわ。まだ車で移動もあるからの...あぁ、お母ちゃん。あれじゃ。」

    話してるうちに流れてきた荷物を回収し、予約していたレンタカー引き取って、車移動となった。

    道中、高速に乗って、娘のトイレ休憩に奥屋パーキングに止まった。予想通りというか予定通りに、空港から少し移動したところで、娘から起きたよの高い声が響いたからだ。

    「うあああああ、ここどこじゃああああ」
    「おはよ、由美。いまね東広島出るとこだよ」
    「じゃあ奥屋が近いけえ、一旦止まるよ」
    「お願いします」

    止まった奥屋はパーキングと言えど、新しめの設備に整備された大きなところで、起きたら違う場所にいたショックと大好きな夫にいつの間にか下ろされていたのと楽しみにしていた飛行機移動中を目にできなかったことで、めそめそしていた娘もすっかり切り替えが済んだのかトイレを出る頃には涙も引っ込み、外にせり出していたソフトクリーム屋さんやらベーコン串などの出店にはしゃいでいた。
    由美にせがまれるままに、ソフトクリームを1本、挽きたてのコーヒーが飲める自販機から2つほどコーヒーを買い、車に戻ると、夫が電話越しに険しい顔をしていた。

    「わかった、何号室じゃ...おん。じゃあの」
    「ただいま戻りました、...これコーヒーです」
    「おん、おおきに。お母ちゃん」

    持ってきたコーヒーに口をつけて、スマホで操作している。雰囲気の違いに、由美も静かになって、様子を伺っている。
    予感が当たってほしくないなと思いながら声をかけた。

    「...賭郎ですか」
    「ちゃうよ、会うまで言えへんけどな」
    「...お父ちゃん1口食べへん」
    「おん、ソフトクリーム買ってもらったんか。ええよ、由美がはよ食べや。ほらもう垂れとるよ」
    「わっわわ待ってまって」

    賭郎ではないと聞いてほっとしつつも、じゃあ何と疑問は尽きなかったがまずは娘が落ち込む要因は排除できて安心した。

    そのまま僕達家族は南下を続けた。

    加計スマートインターを降りて、下道へ。
    少し長く続いた高速の揺れ感に後ろに乗った娘はすっかり大口を開けて熟睡しており、途中僕も眠いなと思ったものの、隣からいたずらに「梶様」なんて立会人モードの声を聞いてビクリとして目が覚めた。

    「やめてくださいよ、心臓に悪い。賭郎勝負で寝ちゃったかと思ったじゃないですか」
    「ふふ、専属時代も捨てたものではないですね」

    笑い事じゃないとうろたえていたものの、道中、飛行機以外は夫の運転だけが頼りの旅路だ。

    「寝るならワシも寝たいに決まっとるじゃろ、ちゃんと付き合ってや」
    「はぁい、次コンビニ寄りましょう、追加で買ったジュースも無くなっちゃいましたし」
    「ン、そうしよ」

    お互い目が覚めて、次のコンビニで休憩。
    爆睡した娘は起きず、コーヒーを追加で買ってきて夫に渡すと、ここにきてやっとカーナビを操作していた。

    「あ、珍しい」
    「最近立て替えたらしゅうてのう、一応確認じゃ。回り道しとうないからの」
    「...安芸細田病院」
    「おん、ちっとな」

    なにが''ちっと''なのか、ここまで来てもまだ理由はわからないけど、どうやら病院にいる人に会いに行くらしい。
    僕どころか、由美まで連れてきたのだから、余程懇意にしている人なんだろう...。
    どうしよ、僕私服でいいのかな...

    「雄大さん、僕着替えたほういいですか」
    「なんで」
    「いや、あの、...なんとなく...」

    視線を落として俯くと、大きい手が頭を撫でた。

    「普通でええんよ、気にせんと...」

    渋々わかりましたと、助手席に収まって目的地である病院を目指した。
    病院に着く手前でようやく大口開けていた娘が起きたようだったが今度は泣かず、ぼーっと流れゆく景色を見ていた。
    バックミラーで起きたのを見つけた夫が声をかけた。

    「よう寝とったね由美」
    「お父ちゃん、なんもおもんない」
    「もう少しで一旦降りれるけえ、待っとりんさい」

    おもんないと呟いた娘の基準はモールがあるかないかなので、ここはだいぶつまらないかもしれない。
    特筆してなにもない一本道だ。
    けれど両脇にちらほらと民家が集まってるからだいぶこれでも人は多い方だろう...

    「静かでよさそうだけどなぁ...」
    「なにも無さすぎるのも善し悪しじゃよ」

    ようやく見えた病院の名前の書かれた駐車場へ車を滑らせれば、さて行こかと夫はトランクにしまっていた荷物から菓子折りを手にして、病院へと僕らを連れ立った。




    受付で「カドクラエミコの親類の者です、面会をさせていただきたいのですが」とよそ行きの営業スマイルを振りかざして、すんなりと目的人物のいる棟までやってきた。

    聞いていた部屋番号をみて、夫は怪訝な顔をした。

    「...待て、隆臣由美とそこにおれ」

    扉を先んじて開けた夫は秒で事態を把握すると、元来た道を立会人の間合いのとり方でナースステーションに戻っていった。
    娘がお父ちゃんどないしたんと聞いてきたものの僕にもさっぱりだった。

    「おい、エミコどこに行ったんじゃ」
    「えっ...エミコ...あぁ、門倉さんですか今朝方、退院されましたよ」
    「ちっ....遅かったか...」

    ナースステーションに戻っていった夫にやっと追いついて事情を聞こうと口を開けたところで、声がかかった。

    「隆臣、由美行くで」
    「え、どこに」
    「ワシの実家じゃ...あとエミコはワシのおかんじゃ」
    「へ......」

    あまりの驚きに僕は看護師さんから注意を受けるほど叫んでいた。

    門倉恵美子さん、僕の夫、賭郎、弐號立会人 門倉雄大の御母堂にして、僕のお義母(かあ)さま...。

    泡を吹きそうだ....

    「ど、どどどど...どうしよ...ぼく、いいよめさんじゃないよ...どうしよ...どうしよ」
    「お父ちゃん、うしろでお母ちゃん、由美と間違ってうさたん撫でとうよ」
    「ええわ、お母ちゃんはなやるときはやる女じゃけえ、そうじゃなきゃお父ちゃんと結婚しとらんし今も仕事しとらんよ」

    使い物にならなくなった妻を後部座席に押し込み、私は2人分のシートベルトをつけてから運転席に戻った。

    多少予想内ではあったが、ただ予定よりもあっちの行動が早かった。まさか外泊かと思いきや、きっちり退院しよってからに。

    病院から10分少々、寂れたシャッター街の一角、角地に手入れが怠られ、蔦植物に引戸半分を食われた店構え。すりガラスの内側に''お好み焼き えみこ''の文字。

    レンタカーを横につけ、「由美、お母ちゃん見ときんさい」と留守番を頼んで、店構えの脇の小さな通路を抜けて、寂れた裏口に見える玄関についたチャイムを押した。
    1度目では反応がなく、そっちがその気ならと蹴りの体勢をとったところで、ドアの向こうの気配が動いた。
    隙間が空いて、そこから白髪まじりの女が覗く。
    見るのは16歳のとき以来だ。

    「誰じゃ」
    「......お前んとこの息子じゃ」
    「...息子は10年以上前にバイク事故で死んどる、お前誰じゃ、あのバカの真似するんじゃったらトサカぐらいやれや」
    「静かに聞いとりゃつけあがりあがって、売っとるんかワシに」
    「帰れ、うちにはストパーの息子なんざおらんわ」

    バンっと強い音を立てて扉は閉じられた。
    ここに黒服がいたら今の数秒だけで、10倍以上ブチ切れを語れそうだ。
    怒りを納め、踵を返した。

    運転席の扉を開ければ留守番を頼んだ娘の声がする。

    「あ、お父ちゃんおかえりー」
    「由美おおきにな、....お母ちゃんに何しとるん」
    「お母ちゃん、貝になりたい言うんじゃ、お父ちゃんので包んだんよ」

    見慣れたジャケットが饅頭になっていた。
    やはりなにかブツブツ言っている。
    まぁいい今日は仕切り直しだ。
    どうなってもいいように取っておいたホテルに向かうことにした。

    同町内の昔ながらのホテルではあるが、温泉の大浴場もあり、飯が美味いに尽きるところだ。
    黒服の知り合いの知り合いが社長であり、表の仕事である不動産業に縁がある人物だったので今回のことで相談した際、何日でも泊まってくれと大盤振る舞いの返事だった。

    数分走り、山を登ってホテルにたどり着く。
    玄関に滑り込むと待ってましたと社長と奥方であるおかみが出迎えてくれた。

    「門倉様ですね、よういらっしゃいました」
    「お世話になります、由美、挨拶しんさい」
    「よろしくおねがいいたす」
    「はーい、よろしゅうねー」

    武士になったが標準語はまだ勉強中だ。
    判事がワシに教えた時から比べたら、砂糖をまぶしたような甘さで教えている。
    荷物を下ろし引き渡して、いよいよ饅頭に手をつけ...ようとしたところで突然起きた。

    「はっっお義母さん息子さんを僕にください娘もいるんですっっ」
    「挨拶考えとったんかい」






    To be continued...


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