雨の日に青姦する若トマしとしと、しとしとと、外では細い雨が降っている。銀色の針によく似た雨だ。静かな雨音は聞いていて気持ちがいい。波立っていた心がゆったりと落ち着いていくのを感じる。
先ほどまでトーマと綾人は紺田村に滞在していた。どうしても綾人が紺田村に出向かなければならない用事があり、トーマは彼の供として同行した。
用事が滞りなく終わり紺田村から神里屋敷に帰る途中、にわか雨が降り出した。トーマがこれはいけない、と思ったときには既に手遅れだった。雨脚は一気に激しさを増した。綾人とトーマは道を外れて、ひたすらぬかるむ土の上を駆けた。
切り立った崖下に洞穴があるのを見つけると、綾人は迷いなくその中に飛び込んだ。凶暴な魔物の住処かもしれないのに。自分の強さに自信があるからできる所業だ、さすがは若。と、トーマは彼の背中を追いながら感嘆した。
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