時代劇凛潔♀️(三)一
江戸時代某年。三百人の剣客が江戸に集まり、日ノ本で史上初の全国剣豪大会が行われた。
三百人を退いて優勝したのは、無名の剣客、潔世一。宮本武蔵に次いで、日ノ本一の剣豪の称号を手に入れる。
その直後、潔世一は消息を絶った。その足取りは誰も知らない。
それを機に、四年に一度行われるようになったが、潔世一は一度も姿を現さなかった。
それから、十年の時が過ぎた。
鎌倉藩の領土内にある町に、ある剣客が訪れた。
彼の名は、烏旅人である。
生まれは大阪の商人の一家。長男として生を受けたが、剣客の才能を早くから自覚して、関西一の剣術道場の門を自ら叩いて剣豪の道を志した。十年前の剣豪大会にも出場したのだが、優勝に届かずに敗退した。試合での実力を、名門北辰一刀流に見込まれて、ここ十年は江戸で腕を磨いて、幾度も剣豪大会に挑み続けている。
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