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    休演日の舞台での会話

    お題「苦しみの男の子」
    15分トレーニング 7

    1483文字(所要時間約3分)

    ##司と類

    くぐもったような声がした。
     類はその声の主、司の方を振り返る。

    「司くん、風邪でもひいたんじゃないのかい?」

     そして珍しいね、と付け加えながら彼にペットボトルの水を手渡してやる。

    「もしかしたら、乾燥しているのかもしれないね。もう冬も近いし」

     司は、類の渡した水をごくごくと飲み干している。
     よっぽど、喉が乾いていたようだ。
     風邪をひいている(かもしれない)のもそうだが、彼がこんなふうに水分補給を怠るのも珍しい。彼はいつでも自分を『スター』だと言うその代わりに、過剰な程に体調を気にかけているのだから。

    「……そうだな」

     五百ミリリットルの水を三分の一程度飲み干して、彼はぼんやりとそう返してきた。
     その目線は、舞台から見た客席の方をただ見ている。
     今日は、ワンダーランズ×ショウタイムの休演日。明日から行われる新しい演目の、最終チェックとも言える通し稽古を終えたタイミングなのだった。

    「司くん?」

     しっかりと決まった練習を終え、軽い倦怠感と達成感に包まれていた。
     全ての片付けと明日からの準備を終わらせて、あとは休息のために帰宅するだけだった。
     寧々とえむは簡単な事務処理のため、パークの事務室へ行っていた。
     残された二人はこうして力仕事を終わらせて、あとは二人を待っている所だったのではあるが。

    「……司くん、何かあったのかい?」
    「いや、そうじゃない。ただ……」

     小首をかしげて彼の方へ再び問いかける。
     明日からは公演が始まり、再び忙しい日々が始まるのだ。もちろん彼の体調も心配ではあるが、彼が不調を感じたのだとしたら、少しばかり演目を変更しなければならない。類は人として、それと同時に演出家として彼の体調が気になった。

    「無理しないでね」
    「……ああ、それはもちろんだ。オレはスターだからな。これくらいなら大丈夫だ」

     振り向いて、今度はニヤリと笑いながらこちらを見つめてくる。

    「世間では、それを無理と言うんじゃないのかい?」
    「いいや、そうじゃない。気にするな。だが少し……、緊張はしているのかもな」
    「緊張?」

     これまた、彼にしては珍しい言葉が落ちてくる。
     天駆けるペガサスと書いて天馬司その人は、いつだって自信満々で、そんな事柄を言う事などなかったようにも思ったのだが。

    「……ああ、そうだ。これは緊張というらしい。昨日咲希と話していて教えてもらったんだ」
    「へぇ」
    「今までは、そんな事もなかったんだがな……。最近は少しするようになったらしい。俺たちのショーは、それでも誰もを満足できるともちろん思っているのだが」
    「だが?」

    「ああ……。お前に、類に満足してほしいと思うと、少し緊張するらしい」

    「……へぇ、面白いこともあるもんだね。でも、司くんはいつだって完璧だよ。それどころか、僕の想像をいつも超えてくる。……だから演出を考えるのが大変なんだよね。司くんは、本当にすごい人だよ」

     心の底から思っている言葉を並べたが、その対象の彼は何かしらを感じたらしい。
     ふふ、と恥ずかしそうに笑ったかと思うと、少し幼い笑みを落としてからすぐに、その場に立ち上がる。

    「確かにそうだなぁ! この天馬司にできない事はない!」

     そのまま、高らかな笑い声が広場にこだまする。
     本当に、よく通る声である。けれど類はその声が嫌いではなく、思わず、その流れに乗ってしまいそうになる時がある。

     ふふ、とこちらも軽い笑みを落としてしまう。
     簡単に押し上げてやればすぐに調子にのりどこまでも進んでいける夢の乗り物のような男である。面白い。初めから感じた彼の感触は、いつになっても消えることはなかったのだった。
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    TRAINING司の作るカリカリベーコン

    お題「嘘の夜風」
    15分トレーニング 20

    1372文字(所要時間約3分)
    妙に気だるい朝だった。目を開き、辺りを見渡すが照準が合わない。もぞもぞと動いてみるが、肩と腰が妙にぎくしゃくと軋んでいる。
     類は、元より低血圧である。だから起きがけの気分は大抵最悪なのではあるが、今日のそれはいつもの最悪ともまた違う、変な運動をした後のような気だるさがあるのだった。

    「類、起きたのか?」

     まだ起ききっていない頭の片隅を、くぐもった通る声が聞こえてくる。司の声。どこから声をかけてきているのか。それに、妙な雑音が彼の言葉に混じって聞こえ、よくよくその場所を判別できなくなった。

    「……起きてるよ、たぶんね」

     重い体を何とか起こしてみる。体に巻き付いているシーツがいつもと違う。自室にあるソファに投げ捨てられているシーツでも、家の中にあるベッドとも違う、少し手触りの良い物だ。それに、類は今、何も身につけていなかった。
     布団を通り抜け、ひやりとした風が入り込んでくる。少し回復してき思考が回り始めてからようやく、昨日、司の家に泊まったのだと思い出すのだった。

     司は、大学に入ってから一人暮らしを始めた。類はそんな彼の現状を甘んじて受け止めて、よくよく彼の家に泊まるよ 1422